憲法を守る気もないのに憲法を変えようとする滑稽さ。

この国は憲法を守ろうとする気がまったくない。

「憲法を守ろう」とかいうと、すぐ「憲法9条」のことを想像すると思うがそうではない。
9条以外にも、守られない憲法はいっぱいある。特に司法関係に多い。

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

いわゆる「黙秘権」である。それを担保するため②と③がある。ところがどちらも守られていない。いわゆる人質司法である。黙秘権を行使しても長期間拘留され、自白を強要される。それを違法と断じるどころか証拠として採用してしまう裁判所。
③も守られていない。日本の冤罪の場合、多くがほとんど自白のみによって有罪とされている。

憲法をこうもあからさまに守らないのは、もはや犯罪だ。国家犯罪だ。国家が犯罪を犯すようでは、すべての正義は崩壊する。

まだある。

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

「迅速な」という期間は、いったいどのくらいか。常識的に考えれば、せいぜい半年くらいだろう。しかし、実際には起訴後3~4年公判が開かれないこともある。その間、拘留が続いたり、保釈されても制限がつくので、これも一種の人質司法だ。

司法関係以外にもたくさんある。割と有名なのは、

第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

これは野党が問題視している。期限の定めがないことをいいことにほとんど無視されている。それを違憲とできない裁判所。
この第五十三条は憲法で認められた野党の唯一の権力といっていい。それが封じられているのだから、野党なんてないも一緒だ。単なる抵抗勢力になってしまう。

我々の身近なところでも憲法は守られていない。

第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

「両性の合意のみ」とあるのに、婚姻届けには「保証人」を2名要求される。

また、はっきりと条文には示されていないが、厳しすぎる校則も、明らかに憲法違反だろう。
また、「一票の格差」も2倍を超えれば明らかに憲法違反だろう。

これら数々の憲法違反が許されている最大の責任は「裁判所」にある。日本の裁判所ははっきり言って、立法や行政と一体であり単なる追認機関だ。

ただ、それを支えてるのは「国民性」だ。どうも日本人は、憲法や法律をきっちり決めてそれを厳格に守るのが苦手だ。

ヨーロッパの契約社会とか、多種多様な人種なため、法を厳格に守らないと、社会が崩壊してしまうアメリカとは異なる。

日本の場合、憲法とか、法律とか、とやかく言わなくても、なんとなく自主的全体主義が蔓延して、それなりに統制がとれてしまう。
それに安住しているのが日本人である。

しかし、それで苦しんでいる人がいっぱいいる。

戦後、一度も憲法が改正されない理由は簡単だ。

その必要がないからである。

そもそも守る気がないのだから、適当に法理論をあてがって都合のいい解釈にしてしまう。

もはや、憲法9条もほとんど意味がない。今や、海外派兵や先制攻撃も、集団自衛権も、武器の輸出もできようとしている。

これだけ、自由に解釈できるのだから、変える必要がない。本当に必要なら、とっくに変えてるだろう。

逆説的だが、改憲派が今まで、憲法を変えられなかったのは憲法を守ってこなかったからだ。
もし、裁判所がどこかの時点で、「自衛隊は違憲」という判決を出していたら、さすがに、これはまずいという事で、改憲されていただろう。

改憲を言う前に、一度ちゃんと守ってみてはどうだろうか。

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