曲を情景や感情の記録媒体にする。

私は普段、いくつかの思い入れのある曲、アルバムに対し、聴く時期をあえて限定している。

聴く時期を限定している理由として、普段、「イヤホンやスピーカーで曲を聴く」という行為は基本的に聴覚のみに絞られた体験である。しかし、特定の時期と曲を結びつけることで、音を聞くだけでない、これまでにその曲に埋め込まれた記憶や感情等も体験の一部として付け加えられ、鑑賞体験が拡張されているような感覚になる。

よく「夏の曲といえば」、「卒業ソングといえば」等の話題がメディアで取り上げられることがあるが、結局はこれと同じ話である。ただし、多くの人にとっては無意識のうちにこの行為(曲と記憶の結び付け)が行われているものだと思っている(それこそ卒業シーズンにテレビで卒業ソングについて取り上げられるから受動的にその曲を聴くことになるといった具合)。

この体験においては、ある種曲が記録媒体として、現状の技術では保存できない感情や空気感、匂いまでもを保存できていると言えるのではないか。だからこそ私は曲を聴くことが好きだし、曲を聴くことでしか取り出すことのできない情報を日々、自ら書き込んでいる。


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