二人が恋しい

「ほんとにごめん」

それだけをぽつりと、聞こえるか聞こえないかくらいの音量で落として、黙って胸の中に顔を埋めて、時折しゃくり上げる声が聞こえる。
あぁ、またあの時期なのかな、と思いながら、目を細めて胸の中にある頭を優しくさする。

ごめん、の意味は明白だ。
普段はぶっきらぼうで言葉数が少なく、付き合いがいいとはお世辞にも言えないのに、自分が弱ってる時だけ頼りにしてごめん、そういうことなんだろう。
本人に直接聞いたわけではないけど、勝手にそう解釈している。

「うん、わかってるから。大丈夫。一人じゃないからね」

本人は迷惑を掛けてると思っているようだけど、実際に迷惑だなんて思ったことは一度もない。

人は他人を、怖がりながらも欲するものだから。
そんな世界で誰にも求められないなんて、悲しすぎるから。
頼りにされる自分は、ここにいてもいいんだなって思えるから。
他人の不安を包むことで、自分は自分でいられる気がするから。

頼ってくれて、ありがとう。

だから今は、何も考えずに、胸の中で好きにして。
明日になったら、ちゃんと忘れるから。

背中に回された手がギュッと握りしめられたので、最大の敬意と愛しさを込めて、同じようにギュッと包む。