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HOMESTAYは人生を歩む全ての人のためのライフハック


初Amazonオリジナル映画
HOMESTAY

魂だけの存在、主人公シロが
「小林真」という亡くなった
高校生の体にホームステイし、
真の死の原因を探るとこから
始まる物語。

予告動画等かなりプロモーションも
力を入れて取り組まれていたように思うが、
予告や最初の始まりは
イジメで自殺したと推察され、
イジメられている子に対して
メッセージ性の強いものなのかな
と思っていた。

しかし、全てを見終えた今
その予想とは別でどんな立場の人も
全員観てほしい、そう思った。

この映画は主人公を取り巻く嫌なものへの
アンチテーゼや同情をかう物語ではない。

観ている視聴者の人生と物の見方を
少しだけ生きやすくする
気づきを与えてくれる
そんな物語だ。

真っ黒に見えている世界も
それはあまりに複雑に色が重なって
一方的に黒だと思ってるのでは?と疑い
残酷でしんどい現実も向き合い
見つめ直す勇気をくれる
そんな物語だ。

以下、ネタバレを含むので
観たくない方はそっと画面を閉じてほしい。















冒頭、真が処置室に運ばれるシーン
管理人と名乗る人物が時を止め、
真の体にシロの魂を入れたことを説明し、
真の死の原因を探る課題を与える。

シロは過去も何も覚えておらず
まっさらな状態で
死の原因を探るため
真として生活を始める。

この時、シロが真の顔を
まるで物を扱うように触るのだけど
この演技・演出が、今回の設定に
グッと現実味を帯びさせる。

真の生活を始めると
優しい母
ぶっきらぼうであたりの強い兄
何かと気にかけてくれる幼なじみ晶
イジメっ子達
美人で仲がいい先輩の美月
と出会う。

そして幼なじみの晶に頼まれた
マスゲームの絵のこと
進路として芸大を希望していたこと
を知り、真の作品を探すシロ。

美術室に向かい、管理人の誘導もあり
真は絵が上手いこと
その能力を引き継いでいることを知る。

周りの人間すべてがいい人ではないけれど
心配してくれる幼なじみ
何より美人で憧れの美月先輩
そして絵が上手いという特技
そんな真の人生は悪くないじゃないかと
美月先輩とのやり取りに熱中していくシロ。

そして、美月先輩とのデートで
美月先輩は真のことを
「かっこいい」
「自分だけの世界を持ってる」
「強い人だと思った」
と評する。

また美月がプレゼントを選んだ相手は
クラスメートで彼女が「親友」と語る人物で
恋人では無いことにほっとする真。

そんな浮かれ調子の真に
父が帰ってくるので食事をしようと
話す母親。
なんでみんなで食事する必要があるのか
と苛立ちをみせる兄。

そして、しばらくして帰宅していた父が
真の部屋で立ち尽くすのをみて、
声をかけるシロ。

「俺は今でも間違ったことをしたとは思っていない。」
意味深な言葉を残す父。
「何をしているのか?もし記憶が戻ったら?」
と強い口調で父に投げかける兄。

色んな言葉や行動を繋げ
兄の部屋の探索を始めるシロ。

真の遺書が書かれたスケッチブック
真だけが削られた写真をみつけると
兄が入ってきて
スケッチブックを燃やされ捨てられる。

兄の必死で記憶を戻さないように
隠す姿を見たシロは短絡的に
兄に追い詰められて死んだと
考えるが、管理人から不正解と
言われる。

その後、真の遺書を読んだシロは
父が真の唯一好きだった絵や
その進路を否定したこと
救いとしていた美月は真のことを
「そんな人知らない」とクラスメートに
話していたことを知り絶望する。

そこに訪ねてきた晶に
誰にも気づいてもらえず自殺したこと
その中に晶はおらず認識されていなかった
と八つ当たりでひどい言葉を投げかける。

あくる日、真のマスゲームの絵を
「気持ち悪い」と否定する美月の
"親友" の理子。
その言葉に合わせる美月。

そのやり取りを見て怒るシロ。

二人の口論をみた理子は
美月に追いかけることを勧めるが
真と付き合っていることを疑われた
美月は「理子が好きだ」と告白する。

ここでこれまでの美月の言動や
いろんなものに合点が行き
ハッとさせられる。
 
セクシャルマイノリティである彼女が
好きなものに取り組み、表現する真を
「かっこいい」
「自分だけの世界を持ってる」
「強い人だと思った」
と思っていたのも嘘では無いのだ。

好きな人に嫌われたくなくて
合わせて思ってもいない嘘を言った
彼女にも嘘は無いのだ。

真目線でみた美月は
ひどい奴かもしれないが
美月目線でみた真は
勝手に勘違いして
自分のことを知りもしないで
友人達とのやり取りを裏でみて
勝手に傷ついた奴なのだ。

壁にあったはずの自分がモデルの絵も
真が自殺をしたと知らない彼女には
突然消えた原因も、どこに行ったかも
推察し得ないのだ。

しかし、美月がそのような気持ちを
抱えていることも知らないシロも
真を見放し、絵を気持ち悪いと
思っていたのに、優しくし続けた
ひどい奴としか認識できないのだ。

そんな最悪な気分で母親が
別の男とその娘と親しげにするのを
目にする。

真と同様に誰にも見られていない
気づかれていないことを実感するシロ。

真に気づかなかった全ての人が
真を殺したと答えを出すが
管理人から不正解とされてしまう。

場面は変わり、
不倫相手との関係を終わらせ帰宅する母親に
真が帰らず焦る兄が玄関で鉢合わせる。

この場面、
冷たいだけに見えていた兄が
どんな思いでいたかが垣間見える。

雨の中必死に探す母親は
真を見つけるも
不倫のことを責められ
父親に「逃げてるだけ、向き合って」
と責めた母はシロに同じように
責められる。

そして、歩き出したシロは
車に跳ねられかける。

しかし、シロは母親に庇われ助かり、
母親は重体。

重体の母親の手を握りながら
父親は向き合わずに逃げたことの
後悔を口にする。

兄は真に今まで心にためてきた思いを
「必要以上に世話のやける弟が突然居なくなって平気だと思うか?」
「目の前で死んでいくのをみて平気だと思うか?」
「誰の目にも映ってない?」
「お前の目には何が映ってたんだ?」
と言葉にしてぶつける。

兄は写真やスケッチブックを
シロに見つけられた時
「こんなの母さんや親父に見せられるか?」
と発言するのだけど、
この発言から察するに
たぶん彼は一人で弟の自殺を
抱えていたんだろうと思う。

誰も自分を見てくれていない
そうやって自殺した弟のことを
自分勝手だと思いながらも
その原因をつくった父親に
怒りを感じつつ
家族全員が大事だから
弟が自殺した原因の記された証拠は
一人で隠し通そうとした。

真が帰宅せずに焦るシーンも含めて
弟思い、家族思いの兄が
そこにはずっといたのだ。

それでも、言葉にされなかったこれまでは
真にとって、自分に気づいていない
冷たい兄としか認識できなかったのだ。

次の日、学校で美月が理子に
キスする動画が出回り、
一度受け入れてくれた理子から
拒絶された美月は傷つき屋上に向かう。

そんな美月を追いかけ屋上に向かうシロ。
自分が理子と同じことを真にしていたことを
自分がされた側になり気づく美月。

美月は理子のことがバレてほっとしている
一方で今すぐにでも逃げ出したいと
矛盾する思いを抱え、本当の自分が
わからないと語る。

そんな美月にシロは
「それでいい」
「赤だったり青だったり、紫だったり、みんなそれぞれ持っている色は1色じゃない」
「いろんな色が重なりあうから美月先輩なんだと思います。」
「全部が本当の美月先輩」
と話す。

ここの台詞がすごく刺さった。

周りからの期待や見られ方と
本当の自分の思いとの違い
自分を偽ることへの罪悪感や苦しみ
自分が抱える矛盾に悩むことは
多くの人に共通するのではないだろうか?

そういう感情に対する答えとして
ありのままの自分を大事に
というのが回答として多い気がするが
それも全部本当の自分
と答えてくれたのは目から鱗だった。

そもそも悩む必要なんて無いのだ。
矛盾した感情を抱えるのも
本来思っていることを表現できないのも
本当の自分だから。
それが人間なのだから。

このシーンで
自分だけの世界で物を見ていたシロは
美月先輩の抱えていた思いに気づき
独りになるのが怖かった真と同じ
同志である彼女を救い、和解する。


そして帰宅すると机の上には
父からの筆のプレゼント。

真が自殺した原因であった
美月先輩との和解や
絵の道を否定した父親が
向き合ってくれたこと
言葉をくれなかった兄が
投げかけてくれた言葉、
母親が命懸けで自分を
守ってくれたことで
シロは真に体を返そうと
管理人を探し回る。

見つけた管理人からは
シロ自身が犯した過ちを
思い出すよう課題を与えられる。

一旦脱線するが、ここで
JAMを渡辺大知さん演じる
管理人が歌ってるんだけど
めちゃくちゃいい。
選曲が天才すぎる。
歌詞がピッタリ。

話を戻し、犯した過ちを調べるシロ。
答えが見つからず、苛立ちを募らせるが
アルバムを見ながら真のそばに
いつも晶がいてくれたことに気づく。

もう自分にも真にも残された時間が無い中、
マスゲームの絵をもう一度描き
晶の元に向かうシロ。

シロが「ごめん」と口にすると
晶は真の辛さに気づけなかったから
おあいこだと「ごめん」と返す。

誰にも気づいてもらえないと
自殺した真のことを
晶がずっと気にかけていてくれたことに
ハッとさせられるシロ。

晶とも和解し、途切れる意識の中
過去の思い出がフラッシュバックし
期限の切れる直前でシロは
自分が真であること
そして真の死の原因が
誰にも気づかれていないと思い込み
自分で自分を殺したことだと
答えを出す。

正解したシロはこれからも真の人生を
生きることになる。

そのことに不安と返すシロに管理人は
「100日間のホームステイを乗り切ったから大丈夫」
と話す。
「それは他人事だから」
とシロが言うと
「所詮人生は長めのホームステイ」
と答える。

自分の人生が管理人が言うように
自分の体を借りたホームステイだと
思ったら、急に深刻なことや悩みも
大した物じゃないように思える気がする。

最初にシロがそうだったように
楽しいとか好きだと思うことに
心を傾けてもいいのかもしれない。

ホームステイの限られた時間と思えば
途方も無く永遠に続くものではないから
その時、その時を大事にしなければと
考えられるかもしれない。

この「HOMESTAY」という映画が
自分の人生を生きやすくする方法を
教えてくれた。

だって、この物語の中でも
最初と最後では前向きに
明るくなったように見えてくるが
本質的に変わったことなんて
ひとつも無いのだ。

学校に行けばイジメっ子達はいるし
美月先輩も利己的になって
また真を傷つけるかもしれない。

それに美月先輩はマドンナから一転
変わり者のレッテルを貼られているだろう。

それでも見方を変え
大事な人に向き合い
大事にしたいものに向き合ったら
自分の気持ちや見える世界は
少し変わるかもしれない。

それが上手くできなくても
それも本当の自分だから
それでいい。

所詮人生は長めのホームステイだから。

しぶとく生きよう。


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