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ヒーロー×ヒーロー②

 悪の組織「Ao」が悪事を働くのをやめることを決定して一週間後、停戦および就労支援の受け入れの協定の締結を友生会本社で始まることになった。これを受けて、営業第一課のヒーロー実戦担当と後方支援のメンバーたちは驚きと動揺を隠しきれず、特に課長でありヒーローを取り仕切るリーダーの今野衛は勝手に終戦に入っているこの事態に怒りを感じていた。

「誰だ、一課に何も報告もなく戦いの幕引きを行ったのは。我々の仕事はどうなる?」と衛は困惑している。

そうしている間にも協定の締結式は午前から昼過ぎにかけて行われ、午後からはAoのメンバーたちの面談が始まり、今週中にも配置が決まりそうだ。同時に第一課の行方も大きく変わることも決まったが、異動までは時間がかかると人事課から通達があった。衛は一課のことを、特に自分の身の心配をしていた。

「確実に仕事が激減する今後どうしたらいいんだ!第二課に・・、第二課にいるあいつのもとで、働くことになるのか・・・。」と嘆いていると、

「ひょっとするとこの一連の騒動は仲野鎮の仕業か?俺との不仲を理由にこんなことをおっぱじめたのか?」と鎮のことを疑い始めた。鎮に近しい仲間に聞きこむ必要もあるが、いづれは本人に直接確かめないことにはわからない。あいつが犯人ならまた一つ懲らしめなければと憎しみの感情が沸き上がった。


 しばらくして元Aoのメンバーの配属も決まり幹部や首領もヒーローショーに出る役に付くことになった。ヒーローと悪役の役者が揃ってからは双方の意見をヒーローショーに活かせられるように練習や訓練を懸命に取り組み、新組成メンバーによるヒーローショーが練習開始から二週間後に披露された。

悪役の幹部のリアルな表情とセリフはヒーローの対照として際立ち、子どもたちからは「あんな悪者やっつけちゃえ!」とヒーローを支援する声が多く発せられ、大人たちは演技に見入っていた。ヒーローショーのストーリーの流れでは幹部は致命傷にならず、引き揚げて戦闘員や中ボスをやっつけて大団円を迎えるためヒーローおよび観客は次こそは倒してやるという感情で一体感が生まれる今までにないショーを作り上げることに成功した。

「幹部殿の演技素晴らしかったです。あれほどの演技は私生活でも悪役として市民から痛い目線を向けられてしまうでしょうから変装をして過ごされるといいですよ。」と鎮が幹部に賞賛とプライベートへのアドバイスをかけた。

「本番で失敗しなくてよかったです。働いて給料をもらうためですから大丈夫ですよ。あっ、でも次のシーズンの時はうちの首領をメインで使って下さいよ。私ばかりが悪役ばかりしていたら身が持たないですから。」と安堵と次回への要望を鎮にお願いした。

「わかりました。課長に伝えておきます。それにしてもこれだけのヒーローショーを作れるならもっと市内外の方々に見てもらいたいですよね。」と鎮は好感触だった舞台を振り返った。幹部も「そうなってほしいね。」と頷いた。


ヒーローショーの成功を受けて快く思っていなったのが衛である。我々が治安維持活動をし続けるにはAoに代わる悪役が必要だと思っていた。異動の知らせがまだ届かないうちにパトロールを強化して活動の意義と継続を社内外に知らしめることが必要だと考えた。メンバーにも異動の知らせが来るまで協力してくれるようにお願いした。後方支援のメンバーのグループだけは少し乗り気ではなかった。

パトロールも長くは続かず、人事異動の知らせが来た真っ先に後方支援のメンバーは第二課やほかの部署に決まった。

メンバーも少なくなり衛は一人で行動することが多くなり、目的はパトロールではなく市民の中から悪役になってくれそうな人を勧誘し悪事を働いてもらいそれを衛がやっつけて功績をわざと作ることを営業活動にしていた。

しばらくたったある時に活動が過激になり、衛の活動中に悪役になった市民が殺人事件を起こしたことにより、衛の活動に対して不信な点を疑われるようになり、事件の黒幕として衛が疑われることになってから活動休止を余儀なくされた。そして容疑者として警察の捜査が衛の身にも及ぶことになり、しばらくしてから衛の逮捕と営業第一課の消滅と機能と残っていた人員が第二課に移ることになった。


 長い時間を経て衛が刑務所から出所して鎮が身元引受人として外で待っていた。凋落した悲しきヒーローである衛は鎮の姿を見て悔しい気持ちが湧いて出てきた。その表情を見た鎮は嘲笑いながら、

「アンタのもとで働いていた時の悔しさを今感じてもらえているようで、私は満足してますよ。」と鎮が衛に対して言い放つ。衛はカッとなり

「貴様のせいで、Aoが解散したうえにうちの職場で働くようになったんだろ?余計なことしやがって、あれがなければ今でもヒーローとして活躍できたのに、何が目的で俺を苦しめるんだ?!」と鎮の胸倉を掴みながら迫る。

「ただ、お前が気に入らなっかっただけだ。私の考えた作戦でお前を貶めることができると思ったら、まんまと落ちぶれてやがるから気持ちがいいよ。」と鎮は悪ぶれることもなく言った。それに対して我慢しきれず、衛は鎮の顔面を殴り喧嘩が始まってしまった。


次回で結びにしたいと思います。駄文ですが書ききりたいと思います。

つづく



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