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地元に住む私が地元の老舗旅館に泊まってみて

泊まることを決めたきっかけ

地元鈴鹿で開催された臨済宗の禅寺「龍光寺(りょうこうじ)」のお祭り、「かんべの寝釈迦まつり」という春の近づきを知らせてくれる、大涅槃図をお坊さんの解説付きで拝見できる鈴鹿の神戸で大きな祭りのひとつである。
この祭りに合わせて、古くから存在している「あぶい旅館」に泊まる企画がこの旅館のすぐ近くにあり、私にとってなじみのある喫茶店、ケセラセラで発せられた。
自分だけではよう泊まらんのでこの企画に乗ってみたのである。

宿泊する当日の昼

喫茶店常連メンバーと昼前から市内を回り、昼過ぎにあぶい旅館でお抹茶と上生菓子(和菓子)を堪能するのに初めて足を踏み入れた。
お茶席を仕切っておられる着物を着た係の方に受付をして玄関に入って右に上がり控室で係の女性の方と訪れたきっかけや祭りに関して話を交わし、受付を終えた他のお客さんが集まったところで会場の隣室に案内された。
お茶席の部屋にはテーブルと椅子、正面には水差、棗、さじ、茶釜が準備されたお茶を入れてくださるテーブルがある。


正面の右手にはひな祭りの余韻を感じてもらう趣向でひな人形と蛤をモチーフにした掛け軸と一輪挿しが置かれ雰囲気はとても良く気分が上がった。

しろあんいりしぐれ生地の上生菓子


まず、亀屋清泉庵製のつくしの焼き印が入った白あん入りのしぐれ型の饅頭を味わう。上品な白あんと饅頭の風味を素晴らしい空間でゆっくり堪能することができた。
お茶の先生が点てた抹茶のお手前を見ながら、ゆっくりとお茶が来るのを待つ。
お茶が届き、器を回して飲む。
そして回して戻し器を愛でる。
お雛様にちなんだ器である。

宿泊の夜になって

夜の神戸で何軒も酒を飲みに回り、実家のお風呂で入浴を済ませて宿に入る。
事前に相部屋であることと、名古屋でお店を営んでいる方とその常連さんの3人で泊まることを知っておりましたので、先客と合流しても驚きはしない。
しかし、常連さんとは初対面であった。
でも、持参されていたワインとつまみで宿泊仲間になれた。
部屋は鍵のかからない襖のみで、3人が川の字に布団を並べて寝るスタイルである。
修学旅行の和室で仲間と寝たときを思い出す。
寝釈迦まつりを共に回った女性陣は3組の6人で寝たそうな。
もちろん鍵のかからない襖で仕切られているだけである。
エアコンを効かせていれば寒さは気にならない。毛布に羽毛布団を重ねておれば問題ありません。
しかしながら、枕と布団が変わっているのでなかなか自分の体は寝てくれない。
おじさま方のイビキとエアコンの稼働音と戦いながらの就寝である。
幸い北枕だったので、思ったよりも寝れたかも知れませぬ。

翌朝の朝食と館内探索

朝の6時頃にはお腹が減って目が覚める。
7時からの朝食までゴロゴロし、顔を洗い朝食を待つ。
朝の朝食会場には今までに知り合った人、昨日知り合った人全員揃った。
なかなか経験しない光景である。
同じ食事内容を食べながらワンコインの値段で提供して頂いた朝食を食べながら、初顔合わせの方は紹介し合ったり、私は会話を交わして休日の朝をゆっくり過ごしている。

食卓
500円の追加で朝食が付けられる

続いて館内の探索である。

旅館の玄関

玄関は壁時計の存在で入った瞬間に雰囲気があり、普段は見慣れない光景を目の当たりにする。

玄関から二階を見る
2階から玄関を見下ろす
客間へ続く廊下


階段は玄関から見上げても二階から見下ろしても絵になる。
光の入り方で見えかたが変わっているのだろう。
廊下を歩けば「ミシッ」「ギッ」という故き木造の建物ならではの音が聞こえる。

2階が客間となっている階段を上がると右手に客間が、あり左手を見ると廊下が続いており、障子の部屋が見える。
これだけの要素を持つ旅館や建物は全国を探せばあるだろうけれども、地元にこのような建物があることに価値を見いだせたのは実際に泊まらないと絶対にわからなかった。
2018年にリニューアルされているようで、外装の一部は黒を貴重としています。

あぶい旅館外観


お風呂は家庭用のバスルームであるが、ハイスペックバスルームを作っているタカラスタンダードを採用して、湯船のお湯と浴室の保温性を持った設備を導入していることは高く評価すべきである。

タカラスタンダード
浴室


昔は近くに銭湯があり、宿泊客は銭湯でお風呂を済ましていたが、今は営まれていない。
シャワー室の増設に向けて動き出しているようなので、問題ないであろう。


あったか布団
女性陣の部屋
掛け軸と置物


部屋は掛け軸や置物があり、昔ながらの和室の空間。
家にある広い和室のような感じで落ち着いてくつろげます。


タイル造りの手洗い場


手洗い場の昔ながらのタイルの造りはまさにレトロな面持ち。
水栓部分は更新されているが、昨今の陶器やFRP 製の造りにリニューアルするのではなくタイルを生かして使い続けるのが趣があっていいですな。

これだけの要素を持つ旅館や建物は全国を探せばあるだろうけれども、地元にこのような建物があることに価値を見いだせたのは実際に泊まらないと絶対にわからなかった。

今回の経験を踏まえて

今回、一泊するなかで出会えた方とお話しを伺ってみると、
「ビジネスホテルより安く雰囲気のよい旅館を選んできました。」
「営業しているのかいつも気になっていて泊まってみたら良かったわ。」
などの声を聞きました。
昔行った祖父母の家の雰囲気を思い出したり、自分の生活のなかで馴染みのない空間を体験できる、貴重な建物なのだと気づかされました。

今、あらゆるものがありふれて新しいものに淘汰され消費され、飽きられて廃れる、こんな流れが当たり前の時代になってます。
ゲーム、芸能人、グルメ、話題に上がったもの全てがいいだけ消費され価値が下がったら放り投げるようなモノとコトをティシュペーパーかのように扱う人が多いような気がします。
しかし、これは今を生きる時代のスピードが早すぎるのかも知れない。
あらゆるモノやコトが成熟して刺激がなく1日の流れが早くなっているから目にしているモノコトの流行りがすぐに過ぎ去ってしまうのだろう。
だからこそこれから生まれてくる流行りモノより現代人や若者が知らない昔からあるものに触れることは新たな刺激になりうるのです。
未来を絶望して、朽ちる前に昔から積み上げて行われてきたことに向き合うことで過去があるから今があると認識する機会は必要であると考える。
それらを踏まえて未来をどう過ごそうかを考えたらええやん。
話が逸れましたが、昔からの建物を見て、体験して感じ取れることが何かあるかもしれない。

この旅館を残すためにどうしたらいいのか?
この旅館はそれぞれの時代をどう生き抜いたのか?
この旅館を利用した人は利用してどう感じたのか?

少し前から出てきているレトロブーム。
モノコトがありふれていていろんな事を選択できるのは現代人の特権である。
「温故知新」
現代を生きていくなかで、行き詰まっていると思うなら昔ながらのものに触れてみて下さい。

最後に、鈴鹿の神戸にあるあぶい旅館に訪れてみませんか?


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