見出し画像

「読み返した時に懐かしいって思える文章が書ければ、それでいいんだよ」T先輩

春になって新しい環境へ一歩踏み出す時、そこでどんな人や言葉に出会えるのかは、不安もあるけれど楽しみでもあります。

私がオーディション以外で初めてきちんと試験を受けて入社した編集プロダクションは、小さい会社でしたが、1980年代に「おいしい生活」などのコピーで話題になっていた西武百貨店のSP媒体を担当していて、下請けながら勢いのある職場でした。

今のようにすべてデジタルで処理できる時代ではないし、徹夜作業になることも多く、校了すると皆で池袋や新宿に繰り出して深夜だろうが打ち上げの飲み会。よく働き、よく飲んでいました。

ある日の打ち上げ終わり。へべれけになって爆睡する同僚の横で、いつも物静かなT先輩が「コピーライターはうまい文章なんか書かなくていいんだよ」と語り出しました。「文豪じゃないんだから。僕らはね、後から読み返した時に『あぁ、懐かしいなぁ』って思える文章が書ければ、それでいいんだよ」と。

明け方の居酒屋の片隅で出会ったその言葉、「後から懐かしいと思える文章」は今も私のひとつの指標になっています。駆け出しの頃に分かりやすい指標と出会えた私は、運がよかったのかもしれません。

#新しい環境 、#出会い、#西武百貨店、#SEIBU SPECIAL、#おいしい生活、#コピーライター、#校了、#打ち上げ、#飲み会、#1980年代、#駆け出し

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?