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〝4630〟を思うたったひとりのあなた

タイトルにあるのは、毎日嫌というほどニュースで流れてくる数字だ。ほとんどの方がピンとくるだろう。

4月8日、山口県阿武町で問題は起こった。

その給付金はコロナ禍において低所得世帯を支援するためのもので、4月6日、職員がパソコンで支給対象463世帯分のデータを作った際、誤って名簿の一番上にあった1世帯に463世帯分を振り込む内容を記した依頼書を作り、町が口座を持つ銀行に別の職員が提出してしまった。振り込まれた方は市からの組戻しを拒否して全額使い込んだ、というのが全容である。

振り込まれた方が何回に分けて引き出したとか、どんな使い方をしたとか、わたしは正直なところそこはもはやどうでもよくて、今回このミスをしてしまったという新卒の職員のことをずっと考えている。

入職して間もない職員に、なぜ大きなお金を動かす仕事を任せるのか。
関わらせるのなら、せめて充分にスキルのある先輩や上司がついて教えたり、ダブルチェックをするべきだったのでは。
提出した職員は気づかなかったのか。
銀行だっておかしいと思わなかったのか。

今年4月に新卒で入職したばかりの職員。8日なんて、まだ仕事どころか職場にだって慣れていないだろう。そんななか大きな仕事を振られ、それなのにまともに見守ってもらえず、今回の問題が起こってしまった。

わたしも新卒でお客さまのお金やライフプランに関わる仕事をしていたころ、ミスをしてはこっぴどく怒られて泣き、自転車をぶっ飛ばしてお客さまのお宅に謝罪に向かったことが何度も何度もある。ずさんな管理体制というものにも、少なからず覚えがある。

ミスが分かったあのときの、からだから血の気が引いていく感覚と、異常に高ぶる鼓動は、いまでも思い出すたびにぞっとするものだ。うんうんとうなずいてくださる方は、きっと少なくないだろう。

今回その職員が、もちろんその方ひとりに責任があるとはまったく思っていないのだけど、とにかくやってしまったことというのは、市の信頼にも関わる。経済状況にも関わる。自分の手がそんな恐ろしいことをしてしまったという事実は、なかなか受け入れがたく、でもきっと鳴り止まない市役所の電話や疲弊した職員の姿を目の当たりにするたびに、思い知ることになるのだろう。

眠れているのだろうか。
ご飯を食べられているのだろうか。
仕事をするのが、職場に行くのが怖くなっていないだろうか。
家族はフォローしてくれているだろうか。

顔も名前も知らないその人のことを、ずっとずっと、勝手に考えている。

すこしでも元気でいてほしい、すこやかであってほしいと思っている。

もしも、こんなの全然気にしない!だって新人だし!やっちまったもんは仕方ない!なスタンスだったらそれはそれでモヤッとするが、わたしはなんだかその人がおふとんのなかに潜り込んで泣いている気がするのだ。

入職数日でとんでもないことをやってのけた、伝説の新人として語り継がれ、皆も本人も笑い飛ばせるくらいに、いつかなってほしいと心から願う。

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