見出し画像

ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅤ

「王が散会を告げると、兵士たちが漂着物を集め、部屋の奥にある扉から運び出していきました。銃と弾薬袋を兵士に渡すと、私たちも広間を出ました。わたくしは話し疲れていたようで、ぼんやりと歩いているうちに、あてがわれた部屋に戻ってきておりました」

「夕食は初日ほど豪華ではありませんでしたが品数も多く、美味しいものばかりでありました。食事の後、執事が明日以降の予定を伝えてくれました。わたくしはデクの開発会議に参加することになり、シダー氏も同行することになったのでした。タデ氏に関しては王から改めて謝辞が送られました。『道々の村からの支援を手配するのでそれにのって北辺の村に帰っていいが、しばらく王都に留まっても構わない』ということでしたので、タデ氏は数日滞在した後、村に帰ることにしたのでした」

「翌朝、簡素な朝食を摂ると役人が迎えに来ました。道を覚えて、明日からは私たち2人で行くようにとの事でした。タデ氏に見送られて部屋を出て、昇降機に乗り込むと下層に降り始めました。最下層に着いて昇降機から出ますと、開けた空間にデクが並んでおりました。壁際に扉が並んでおり、役人は"カウバウ二十六"と書かれた扉の前に立ち、ボタンを押して呼び鈴を鳴らしてから扉を開けました」

「20人ほど入るかという部屋にテーブルが並べられ、壁には白い板がかけられておりました。王が奥の席に座り、周囲に十数人ほどが座っておりました。彼らは揃いの白い上着を着ておりました。また末席に、昨日壇上で目をひいた若い女性が座っておりました。私たちが部屋に入ると、皆の視線が集まってくるのを感じました。謁見の時に比べてはるかに簡素な白い上着を羽織った王が立ち上がると、わたくしに向けられていた視線が、王に向かっていくのがわかりました」(続)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?