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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅩⅨ

「3機のヤコはそれぞれ、無角、二本角、一本角でありました。わたくしは2週間の練習で随分扱いに慣れてきた無角のヤコに乗り込みました。荷物を座席の後ろに置きますと、スキュウレも肩からするりと降りました。居場所を探すように歩き回った後、操縦席の隣に貼りつくように固まりました」

「シダー氏は二本角、コウメ姫は一本角の機体にそれぞれ乗り込みました。3機とも、後ろに大きく模様が描かれておりました。わたくしが森の中でもはぐれないための目印でありました。『私が先頭に立ちます。ガリバー男爵はすぐ後ろに。シダー村長は最後尾をお願いします』。ヤコの上でコウメ姫が言い、私たちも同意しました。それぞれがデクのハンドルを握ると、ヤコたちは口を閉じました」

「わたくしの乗るヤコも口を閉じると、目の前に格納庫内の景色が映し出されました。姫の乗る機体が出口に向けてゆっくり歩き出すのが見え、わたくしもその次に並びました。後ろにシダー氏のデクがついて、3機が出口前に整列しました」

「閉ざされていた扉の前に立つ姫騎士が手を大きく振ると、獣が吼えるような音が響き、扉が上に持ち上がっていきました。朝の光が枝葉の間からこぼれ落ち、射し込んで床に影を作ります。姫はヤコの右前肢を持ち上げ、見送る仲間たちと私たちに合図を出すと、格納庫を飛び出しました」(続)

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