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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険LⅩⅧ

「わたくしは2週間ほど演習林に通い、タデ先生からヤコの動かしかたを習いました。シダー氏とコウメ姫は私たちについて来ると、ひたすら二人でデクの模擬戦に明け暮れておりました。勝敗はほぼ毎回、互いに一進一退でした。どちらか一方が連勝することもありましたが、三回続くことはなく、すぐにもう一方が勝ち点を取り返すのでありました」

「1週間ほどかけて、わたくしはデクを動かして木に登り、離れた枝に跳び移ることができるようになりました。演習林の大穴は底に蔦が幾何学模様を描きながら張り巡らされ、蜘蛛の巣のようになっておりましたので、わたくしも転落を恐れずに運転の練習ができたのでありました」

「練習が2週目に入る日、演習林の扉をくぐりますと、コウメ姫が眉間にしわを寄せて待っておりました。あいさつすると、普段の涼やかな表情に戻り、『皆さん、おはようございます』と返してくれました。シダー氏が『何かあったんですか?』と尋ねますと、姫が小さくため息をつきました」

「『新型デクの開発部からソラカミ通信が来たんです。1週間以内に演習林の講習を切り上げて、続きは水上デクの試験も兼ねて、あちらの研究所でおこなうように、と』。そして、わたくしは自力でデクを運転し、研究所まで向かうように、とのことでありました。『この1週間、タデ先生に講習をお任せして模擬戦に夢中になっていました。申し訳ないです。今から必要なことをどんどん教えていきますので、1週間以内に何とかしましょう』。わたくしは何が待ち構えているかわからぬまま、鬼気迫る姫君と真っ青になった先生や村長に囲まれ、うなずく他にありませんでした」(続)

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