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『ピギー』の表現は元気が出る

『がんばれ!!タブチくん!!』(1979)だったか、

「太ってると、何をやってもダラダラしてるようにみえちゃってねー、やだねー」

とタブチくんが愚痴をいう場面がある。実在の野球選手、田淵幸一氏はさほど太ってなかったとおもうが、『がんばれ!!タブチくん!!』のタブチ君はアホほど太っている。『がんばれ!!タブチくん!!』は太ったタブチくんのデブ面白さを楽しむ作品なので誇張は致し方がない。しかし、今となっては肥満はもちろん、ガリ、チビ、短小、巨根、貧乳、巨乳、などは扱い難いネタである。

と言いつつも、未だにこういうネタにうっかり面白みを感じてしまうのは、オレが昭和のオッサンだからだろうか?オレは元デブなので、タブチくんの愚痴はとてもわかる。デブをイジられるいやな気持ちもわかる。小学校の担任からは

「もっと縄跳びをしろ」

「何故、膝を合わせられないのか?」(太ももが太すぎなのだ)

などと、罵声をよく浴びせられた。

今となってはデブ影もないわけだが、妊娠線のような皮膚割れがあちこちに名残を残している。オレ、何で太ってたんだろうな……。

話変わって『ピギー』(9月22日公開)関連の仕事を受ける。ピギーは肥満のいじめられっ娘が主人公。彼女が殺人鬼にいじめっ娘たちが誘拐される現場を目撃したことから、物語が展開していく。

この『ピギー』で行われるイジメがなかなか厳しい。川で泳いでいる時にゴミ取り網で首を引っかけられ、服を盗まれる。実家の肉屋(よりもよって何故肉屋なんだ)で働いている様を撮られ「ブタがブタを売っている」とインスタにアップされる。
厳しいいじめのせいか、彼女自身、自分の体型にコンプレックスがあるのだが、なかなか改善はできない。元デブとしてはわかり味が過ぎる。

さて、最初に肥満、ガリ、チビ、短小、巨根、貧乳、巨乳は扱い難いといったが、『ピギー』における遠慮のなさは素晴らしい。まったく多様性など意識していない。デブ、殺人鬼、いじめられっ子どれもステレオタイプである。典型的ゆえに物語が成立しているのだ。みんな性格が悪く、好き嫌いをし、自分勝手な理由で生きている。ああ、なんと素晴らしいんだろう。

こういうきれい事で生きていない人々を描いた映画を観ると元気になる。

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