写真漂流 - 写真家・田沼武能氏逝く
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写真家で初めて文化勲章を受賞した田沼武能氏が,この1日に亡くなられたというニュースを聞いた.
93歳.自宅で倒れているのを家族が見つけたそうだ.
私は写真を本格的に撮るようになった頃から,この方の名前は知っていたが,なにぶん年齢が離れていたこともあって,詳しい業績までは熟知していなかった.それでも撮影された写真を目にする機会は少なくはなかった.
世界中の子供の写真をライフワークにされていたことは,ぼんやりとした記憶の中にはある.けれど木村伊兵衛に師事したこと,ライフの契約写真家だったこと,そして2019年に写真家として初の文化勲章を受賞したことなどは,死亡記事を見るまでまったくもって知らなかった.まことに恥ずかしい次第である.
言い訳のように聞こえるかもしれないが,氏と私とでは世代が違うのである.生きてきた時代が親子ほど異なる.だからいわば教科書の中の人というような存在であった.
単に昭和といっても田沼氏は戦後の動乱期から活躍されている.土門拳,木村伊兵衛,名取洋之助,植田正治ら,錚々たる顔ぶれがこの頃の日本写真会を牽引していた.田沼氏は良くも悪くも,こういった写真家たちの志を受け継いできたのではないか.
そして今,写真は特別なものではなくなった.かつて専門家だけのものであった写真は一般の人々のところにまで降りてきている.機材の発達と普及により,誰もがハイレベルの写真を撮ることができるようになったのである.そしてそれは今日,驚くほどに表現の幅を広げることにつながっている.
思うに,先人たちが耕した畑で,今は多くの若い写真家が収穫に汗水垂らしていると考えればよいのだろうか.
ところで田沼氏が亡くなられた6月1日は「写真の日」であったこと.こういうところにも因縁めいた深いつながりを感じてしまうのである.
デビュー70周年で個展次々 田沼武能さん|東京新聞 TOKYO Web
心よりご冥福をお祈りします.
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