[第12話] 百合ナース! 〜かわいいあの子〜 [サロン連載]
まったく高見沢先生の能天気ぶりには呆れちゃうけど、おかげで落ち込んだ気持ちが上向きになったのは事実。
なんだかんだ言ってかまってくれるのが、あの人流のやさしさなのかもしれない。
夜勤明けの朝の空気に、吐く息が白い。
不規則なシフトにも慣れてきた。
もう一年以上、恋人がいないことにも。
「ふふっ」
うつむいてマフラーに顔を埋める。
18年間ずっと恋人がいなくて当たり前だったのに、一度恋人ができたら、今度は恋人がいるのが当たり前みたいに思ってた。
3年間 “恋人アリ” に慣らされて、突然ひとりになって、ただ淋しくて淋しくて、気を抜くと崩れ落ちそうになる心をもてあまして、いろんなことをしてみたんだ。
ときには、ちょっとイケナイことも。
でも、結局のところ、私をまたきちんと立たせてくれたのは、目の前のお仕事に打ち込むことだったような気がする。
いつか鬼塚主任みたいになりたいな。
そこにいるだけで患者さんに安心してもらえて、頼りにしてもらえるような。
「みなみちゃん、退院かあ。明後日……違う、もう明日だ」
淋しいな。
そう思ってしまって、私は苦笑しながら首を振った。
ちがう、ちがう。元気になってくれて、うれしい。そうでしょ?
まだたった17歳なのに、なにかに深く傷ついて、ぐったりしてた女の子。
入院中にフラれちゃったけど、彼女の顔色は最初の頃にくらべたらずっといい。
大丈夫。きっと乗り越えてくれる。
怪我の治った翼で、もっともっと高く飛べるよ。
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