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『ひぐらしのなく頃に業』の感想文

初めに。

※本記事には『ひぐらしのなく頃に』『ひぐらしのなく頃に解』『ひぐらしのなく頃に業』のネタバレが含まれています。

ネタバレを気にする方は戻ることを推奨します。
ひぐらし未プレイもしくは未視聴で興味が引かれた方はぜひプレイ・視聴してみてください。

もしその後本記事のことを思い出して読んでいただけたら嬉しいです。

また、筆者個人の感想・意見が含まれていますが、ほかの意見を否定するものではありません。
知識不足な点もあるかもしれません。

僕が思ったことを書きたかった、それだけの記事。

ひぐらしのなく頃に業』とは。

前項を読んで本記事を読む選択をした方に今更説明する必要はない気もするが、『ひぐらしのなく頃に業』(以下、ひぐらし業)は『ひぐらしのなく頃に』『ひぐらしのなく頃に解』(以下、無印・解)の続編である。

詳しくはwikiを読んでいただくとして、ひぐらし業無印・解のテレビシリーズ放送から13年経った2020年に放送開始された完全新作という立ち位置になる。

本記事では、ひぐらし業の中でも主に『猫騙し編』以降の雑感を書き散らしていくが、一点だけここで書いておきたい。

OPのエウア、超良いよね。

ひぐらし業で紡がれる物語。

前作(と表現していいのかわからないが)である無印・解で最終的に梨花は100年間繰り返された昭和58年の雛見沢から抜け出すことができた。
非の打ちどころのないtrueエンド(※個人の意見です)を迎え、自身が知らない未来を生きていけるようになった梨花の物語で次は何を描くのか、ひぐらしの新作が発表された際に一番疑問に思った点だ。

もっとも、放送前までは最近流行りのリメイクにもとれる宣伝の仕方だったので、ついにひぐらしもその波に乗ったか~などと放送直前まで思っていた。

その予想は良い意味で裏切られることになり、『ひぐらしのなく頃に業』という完全新作の形で物語の続きが描かれる
1人のファンとして、続編と判明したときの演出はたまらないものがあった。

ひぐらし業以外にも礼や煌など、ファンディスク的な立ち位置としていくつか本編のその後の話は存在するが、ひぐらし業はtrueエンドである祭囃し編の先に梨花がぶつかるであろう一つの壁がテーマとなっていると感じた。
(余談ですが僕は礼の賽殺し編がとても好きなので観ていない方は是非)

それは、「自らの幸せと他者の幸せとは必ずしも両立するとは限らない」ということである。

無印・解の結末のその先にあるもの。

無印・解では、雛見沢症候群の存在証明を望む鷹野三四と、その証明たる自らの死の運命を回避する世界を望む梨花という対立構造となっていた。

そして、祭囃し編で惨劇の未来を回避することができたため、梨花自身が知らない、昭和58年より先の未来を生きているのがひぐらし業の世界である。
願いの強さで言えば運命を変えるほどの鷹野であったが、その鷹野も梨花たちが受け入れたことで繰り返しは終結する。

梨花が自覚していたかはわからないが、祖父の研究、そして鷹野自身が認められることで結果的には鷹野の願いは歪みから解放され、正しい形で叶えられている
そのため、無印・解では他者の願いを押しのけてまで惨劇を回避する未来を勝ち取っているわけではない。

梨花、そして部活メンバーは無印・解のその後の世界を迎えることになる。
梨花としては、これまでは挑戦(受験)することもできなかった雛見沢の外での生活が叶えられるかもしれない。
その願いは無印・解を見てきた視聴者側としても理解できるものである。

惨劇を回避する運命にたどり着いた精神力であれば難関校の受験勉強であっても乗り越えられるだろう。
しかし、もしかしたら無印・解で奇跡を叶えた梨花の、「(私の)希望は必ず叶え(られ)る」という傲慢も少しは含まれていたかもしれない。

梨花の願いとその代償。

梨花は親友である沙都子もともに受験することを望んだ。
そして沙都子は受験することを選んだ。
その結果、幸か不幸か梨花も沙都子も合格してしまった。
学園生活を過ごす中で二人はすれ違っていく

願いが叶えられた梨花は当然学園生活を謳歌する。それを維持するための努力は惜しまない。
「自らの知らない出来事」が続く限り、梨花にとっては勉強も楽しいものとなる。

一方、沙都子は学園生活についていけなくなる
合格は沙都子が思っていた「勉強の終わり」ではなく「勉強の始まり」であったためだ。
さらには一緒に学園生活を送りたいと言っていた梨花も(沙都子視点では)次第に沙都子から離れていく。
そんな梨花を取り戻そうと雛見沢分校時代のようにトラップを仕掛けるが、結果的に沙都子はより悪い状況に追い込まれていく

梨花の物語の続きとして完璧なひぐらし業。

こうして、梨花が勝ち取った未来は、沙都子が望まない未来という構図が出来上がる。
鬱屈とした沙都子は、魅音たち部活メンバーとともに雛見沢へ里帰りした際、オヤシロ様の像に触れてエウアと出会い、これまで梨花が辿ってきたすべてを見たうえで世界のルールを理解する。

「梨花とともにルチーアに合格する」世界の沙都子は肉体的に死ぬ運命では決してない
だが、沙都子にとってはこのままの生活を続けることは精神的な死を意味する。
惨劇を回避する奇跡を求めた無印・解の梨花と同じ強い意志で、沙都子はカケラを渡り、梨花と対峙することを選ぶ
無印・解の結末とは異なり、(現時点で僕が考える中では)梨花と沙都子の願いは両立できるものではなく、どちらかが折れない限り二人の想いは平行線となる

疑心暗鬼にとらわれず、他者を信じることで惨劇を回避した無印・解の先の未来であるひぐらし業
梨花はもちろん、視聴者もいわば盲目的に信用していた部活メンバーの中に今回の惨劇の黒幕が存在していた今作は梨花の物語の続きとして完璧であると感じる。
沙都子の(初めの)動機も、簡単に言ってしまえば「卒業後の梨花との離別の阻止」という、ある種ありふれているがゆえに意外性があり、それでいて当人たちには深刻なものだ
物語における、黒幕・動機・結末は意外であればあるほど質が高いものとなると思う。
ひぐらし業はそれらを、納得と意外性の絶妙なラインで実現している
これがひぐらし業無印・解の続きとして完璧であると思う理由である。

ひぐらし業は最終話までに黒幕・動機が明かされた。最後に残るのは結末である。
結末に至るまでにはSSR鉄平のようなさらなる物語の展開もあるだろう。
何よりまだ明らかになっていないことはまだまだある。
おそらくキーアイテムになるであろう神剣はどのように物語に関与してくるのか。
そして次のタイトルの「卒」というのは、やはり「業」と合わせて「卒業」という意味なのか。
7月の放送が今から楽しみだ。

留まることを選択した梨花はどんな結末を迎えるのか。

ひぐらし業16話で心が折れ、沙都子とともに雛見沢に留まることを選択した梨花。
16話初見の際、その結論は新しい環境へ身を置くこと・新しい世界へ向かうことの否定となるのではないか?と感じてしまった。

もし16話が最終話でひぐらし業(ひいては『ひぐらしのなく頃に』自体)が終わってしまっていたら、正直もやもやとしたものを抱えてしまっていたかもしれない。
とはいえこれまで感想記事を書いたことのない人間が記事を書く程度には何かしら感じることはあったのだが。

梨花が最終的にどちらを選ぶのか、もしくは新たな世界を見つけるのか。
カケラを渡る沙都子にその世界たちはどのような影響を与えるのか。
そして梨花・沙都子以外の部活メンバーはどのように関与していくのか。
物語は『ひぐらしのなく頃に卒』に続いていく。

昨今、過去の作品のリメイク・リブートが多く発表されている。
その中には作品を真に完結させるものもある。
ひぐらしも『卒』ですべて終わってしまうのか。
終わるとしたらその終わり方は?
終わらないとしたらさらなる展開があるのか?

昭和58年の物語がどのような結末を迎えるかは令和3年の7月、ひぐらしのなく頃に明かされることになる。

業の世界で先に卒業してしまった圭一・レナ・魅音と同じく、作中の梨花と沙都子に干渉できない仲間の1人として、部活メンバーたちの選択を最後まで見守っていきたいと思う。

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