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幕閣本「また葵まで」の元ネタとかいろいろ

2022年9月に出した江戸初期徳川幕閣本「また葵まで」の元ネタとか出典元とかの話です。
もともと本文に添えるはずだったのが、作業をしている並木が大泥酔をかまして入れられなかったと言うとんでもない理由で表に出ませんでした。同人誌だからと言ってやっていいことと悪いことがある。

☆また葵まで

讃美歌405番「神ともにいまして」より。
葵は「あふひ(逢う日)」に掛かるそうで、そこからです。
もともと幕閣本のコンセプトが家光の死を題材にすることだけが決まっていて、「また逢う日まで」ということで殉死した堀田や生き残った松平信綱たち寛永の遺老たちとの関係を表現したはずでした。
うまいこと葵というワードがいれられて嬉しいです。
ちなみに並木がこのタイトルを思い浮かんだきっかけは加藤健一事務所の「THE SHOW MUST GO ON」の同讃美歌シーンから

こんなにタイミングよく声のいい男たちが讃美歌うたうことある???????
加藤健一さんは推し舞台俳優さんなので、ご都合つく方はぜひ舞台を見に来てください。最高に笑えます。

☆鶉の報せ

阿部忠秋に拾われる少年「閑七(かんしち)」ですが、名前の元ネタは並木の謎の親族から。
どうも謎が多いので、ほかの創作にもたまに同様の名前が出てきます。つまりはゲスト枠です。
松平信綱と阿部忠秋の関係は、個人的にはよきライバルでありよき理解者であると思うので、これくらいがちょうどいい。
だけどよく信綱が関係性を狭めようとめちゃくちゃ距離を詰めてくるので阿部忠秋はいつもびっくりする。
なお弊創作では阿部忠秋はそれなりに男性経験があります。あと風呂場で全裸酒宴した。それはまた別の話で。信綱は経験ないです。
作中の忠秋の娘二人の名前は記録に残っていなかったので創作です。男の子は初名だけわかっていて、大和と名乗っていたそうです。

☆蝶に花を

フォロワーから「松平信綱がFGOに出ている」と知った並木がびっくりしていろいろ見た結果。
信綱は蝶、忠秋が花です。攻めが花って最高じゃないですか?という圧。忠秋は野草系の小さな花のイメージがありました。
忠秋という花に留まる信綱という蝶々。

☆その名を呼んで

実は同衾まで史実です。なんてこった。
酒井家の記録に、寛永の飢饉の事後処理で上洛した忠勝を淀城主だった尚政が迎え、小堀遠州らと茶会をし、その帰りに尚政が送り狼をしたと言う逸話があります(言い方)
ちなみに作中「永井家の小姓が」と記述していますが、のちに酒井家史料を確認したところ酒井家の小姓が正式です。やっちまった。
タイトル元ネタは「君の名で僕を呼んで」のオマージュ。

☆ゆく道を守り

タイトル「神ともにいまして」より。これが最初に浮かんだ話でした。
堀田正盛の話は徳川実紀と徳川家光公傳(新装版)から引いています。家光公傳の「薨去・殉死」の項目はこころが元気じゃないと読めない。特に阿部重次の項目。堀田正盛の項目もなかなか厳しいものがあります。
結局出自が明るくない堀田正盛にとって、家光はただひとつの光であり続けたというはなし。
信綱にとってもそうなのですが、信綱は家光から「お前は生きて家綱を守れ」と言われているという話にしていました。
信綱がそれを吹聴するタイプではないのでそのままになった結果、悪評が飛びますが彼にとってはもうそういうノイズも聞こえてないと言い。ただ、忠秋の「無理だけはしないで」という言葉だけが届けばいいかなと思いました。その辺は完全に創作です。
ちなみに堀田から信綱への辞世の句は家光公傳に記載があります。本当につらい。彌五兵衛のくだりも同様です。つらい。

☆曇天の猫

藤堂家家中のフォロワーに動いている藤堂采女くんを実装して見せたかった(素直)
豪徳寺の話は諸説あるのですが、並木出身の小学校では本作のような感じで習います(地元)
直孝は采女くんが気になってて距離を詰めたく思っているのですが、采女くんは「なんかこっちチラチラ見てくるな~」ってちょっと次の一手に出るかどうか考えてます。ネコチャン同士の微妙な関係みたいな感じ。
豪徳寺界隈は座って茶をしばけるところがなかなかありませんが、今度参道の脇に「豪徳寺茶屋」という飲食店ができるらしいです。よかったね。ちなみに無料配布した「ときには桔梗も踏む」(https://namiki-rudeboy.lix.jp/works/paper2022/)はこの話の後、豪徳寺に勝手に桔梗を植えた天海の話です。昔は牡丹の名所でしたが、最近は桔梗も植えています。

☆争いの街と花泥棒

タイトル元はイエローモンキーの「争いの街」
元ネタは「This War of Mine」で兵士にレイプされそうになった女性を助けるクエストから。同ゲーム、お勧めです。ユーゴ戦争の際の戦争被災者から丁寧に取材をして作られたゲームなので相当辛いですが、やっておくべきゲームだと思います。アプデが入り使用キャラに子どもが入ったと聞いて並木はもう絶望に塗れた。もう無理…できない。
忠利と忠澄は同い年、身分差はありますがかなり仲が良かったようです。
忠澄の忠興からの評価も高く、ちょくちょく話題に上がります。
忠澄は桶町火事の処理中に命を落としますが、偶然にもそれは忠利の死の数か月前でした。この二人のそのあたりの話は別件でも書いてますので個人サイトから是非。

☆誰でもない水面

どうしても宗矩土井を書きたかった。
いくつか書いたものを合わせたものです。タイトル元はないです。なんとなく決まってた。「家康の息子」でも「幕府の重鎮」でもない土井利勝の誰でもない時間を宗矩だけが占有できたらいいなと思いました。
でも宗矩も大概めちゃくちゃな人なので、土井は大変そうです。
いろいろと過去にくらいものがある土井ですが、宗矩は受け入れるし「それがなに?お前の今が俺は好きなんだけど?」というノリ。
それがかえって救いになることもあるなと思いました。傍から見るとクソだけど。

☆愛は洒落じゃない

タイトル元は岡村靖幸の「愛はおしゃれじゃない」から。大好きな歌。「モテたいぜ君にだけに」というワードがどうしても三厳にぴったりだった。そしてそれが全部正次にぶつかる。かわいそうだね。
周囲には年上地味系の正次が可愛い三厳にちょっかい掛けてるように見えますが、実際はこんな感じで正次が振り回されています。
三厳は根底には父である宗矩に憧れがあるのですが、宗矩がそれを拒んだがゆえにだいぶ歪みがあります。その救いに正次がいればいいなと思って書きました。
なおこの二人の接点は公式にはないです。ただ単に、先述の土井利勝と柳生宗矩がくっついてるなら、三浦正次(土井の甥)と三厳も面識があるのでは???というノリでこうなった。歴史創作のネタの一つなので気にしないでください。

☆汝が身を離れざれ

タイトル「神ともにいまして」より。まさにこの本の話につながる話のはずでした。大場吉兵衛は先述の並木の地元の代官から。並木の地元の代官は大場六兵衛なので、そこからすこしずらしました。
弊創作忠長は人ならざる力を持っているので、その話を書きたかった。
家光が望もうと望まないと、忠長はその力を使って家光に愛を伝えてしまう。そういう話です。
ちなみに忠長は蒲公英の種が耳に入ると聴力を失うという子ども特有の噂話を真っ当に信じています。だから蒲公英の種が嫌いなんです。
家光の「兄弟だというのにな」は、デビルメイクライ3のラストシーン「双子だっていうのにな」から来ています。デビル3は家族殺しがテーマのゲームなので、うちの家光忠長にはちょうどいいかもしれない。家光が思う世界に忠長はいなかった。それだけの話。

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