火

火を灯そう

 先日、アメリカから来た学生と話をした。彼は絶対不平不満を言わない。しかし、いろいろな事に対して常に意見はきちんと持っている。「不平不満を言う前に自分が動く」という精神を彼の言葉から感じる事が出来る。私の息子といってもおかしくないくらいの年齢のこの若い青年から、私は多くを学んだ。

 日本の英語教育を推し進める中で、文部科学省が掲げたのは『コミュニケーション素地を育てる』ことだった。日本人に足りないのは語学力だけではなく、コミュニケーション力でもある、という考え。それは私も同感。
そもそも単一民族で小さな島国に暮らしている私達は、自然と「言わなくても伝わる」感覚を身につけて育っている。今までさほど必要のなかった「自分の考えを言葉で表現する」「文化の違う相手にも伝わる様に伝える」ことは、かなりのハードルであることは間違いない。

 私は海外で生活したこともあるので、自分が肌で感じてきた難しさや困難を克服した方法、などを持ち帰り英語学習者の皆さんと共に学ぼうと決めた。そして、それを伝える事の面白さと難しさを感じている。
子どもたちや英語学習者の方々は違う方法を試そう、という好奇心にあふれているので、一緒にチャレンジする面白さ。正しく学べば正しく身につける事が出来る、というプロセスを学ぶ人たちの中に観るのはとても興味深く嬉しいこと。
難しさ…で言うと、周りを見渡した時スマートフォンなどの普及で、あらかじめ自分の目の前の人とのコミュニケーションを断ってしまう人達。それは目指すところと逆行している様に思えてならない。
そして、文部科学省が大きな目標を掲げているにも関わらず、教育に使うお金が十分でないことは、かなり大きな問題。確保出来ないならば目標を変える、方法を変える、ということも考えられるはずだが、「お金はないけど、このレベルまで上げよう」と政治家が言えば、現場は従うしかない。その結果、1人の人へのしわ寄せが増える事は容易に想像できる。しかし、私は教育はチームで行うべきだと考えている。

 ただ、こうして私が世の中や政治に対して不平不満を言ったところで、それは何にもならない。利益を産む訳もなく、そのネガティヴな言葉は、ただ私を後ろ向きな気持ちにさせる。そんな話をしていたら、留学生の彼が良い言葉を教えてくれた。
"It is better to light a candle than to curse the darkness."
「暗闇を嘆くより、火を灯そう。」

 問題を問題と捉えつつも、「私が今出来ることはなんだろう。」と考える。
 私の場合は、自分の目の前の子どもたちや先生方と楽しく英語やコミュニケーションを学んで、いっぱい笑おう。暗闇を嘆くより、火を灯そう。その火が増えたらきっと世の中はもっともっと明るくなる、そう想像してみると、自分のしていることをとてつもなく尊いことだと思えるのだ。

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