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#7 グループホームの母のつぶやき…私には家があるはず

朝晩肌寒くなり、母のいるGH(グループホーム)では床暖房や、朝方はエアコンを入れたりしているらしい。

今日急いで、冬物の布団と衣料、リハパンなどを届けてきた。
スタッフさんの話では、母はとても元気で、GHの周りをお散歩して楽しんでいるけれど、季節の変わり目ということもあり、時々不穏な状態になるとのこと。

思い出したように、
「私には家があって家族がいるので帰らなければ」
といって、夜に部屋から出てくることもあるらしい。

頻繁になってスタッフさんの対応が難しくなると(夜はスタッフさんはひとり)、薬を処方される。
この薬は足にくる。
歩けなくなってふらふらになり、頭に霞がかかったように無口になり、表情が乏しくなる。

入居当時薬を処方され、副作用で膝に力が入らずよちよち歩きになり、無口になるのに3か月かからなかった。

週に2~3回面会し、お散歩やドライブお出かけ等で一緒に歩いていたため、日に日に弱ってくる母を見て、施設長さんに相談した。
施設長さんは薬の影響だと思ったのか、すぐに動いてくれ、担当医と話し、認知症の薬は飲むのをやめ、精神安定剤の類は様子を見ながら少しずつ減らすことにした。

変化はすぐにおきた。

数か月すると、母はしっかり歩くようになり、頭も霧が晴れたようにいろんな質問をするようになった。

もうあの悲劇を繰り返したくない。

認知症の薬のことや、医者が認知症の薬を、症状にお構いなく増やし続けざるをえなかった行政の仕組み、初めて老人施設ができた黎明期のこと、基本的に薬を飲まない方針の老人施設のこと等、たくさん調べた。

GHから毎月届く処方箋には必ず目を通す。
私が服薬に敏感なことは知っているので、新しく増やすときにはGHから連絡がある。

今回は入居当時とは違って、そこまで不穏な状態にはならないと思うけれど、娘の気持ちは…。

もういいよ。

娘や家のことを忘れてしまったとしても、母が苦しまないのなら、楽しく暮らせるのならいいよ。

自分には家があるはず。
ここはどこなのか。
自分の家じゃない。
家族もいたはず。
帰らなくちゃ。

辛いよね。自分が何者でなぜここにいるのかわからない。

もやもやした不安とともに暮らすくらいなら、何もかも忘れていいよ。

でもね、もし私自身が同じ状態なら、たとえ苦しくてもその疑問は持ち続けたいかも。

いや、待って。

少し前のことも忘れてしまう状態なら、いっそのこと、悩みも不安も心配事もすべてさっぱり忘れてしまいたいかな。


答えは出ない。


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