nana_hirokawa

浩川ななです。 表現と書く人に、私はなる。

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マガジン

  • 冷たくなった彼(仮)

    短編小説

  • nana.の思言

    正しい事か間違っている事かは別として。 ただ、私が思うこと。

  • 約1ページの物語

最近の記事

冷たくなった彼 fin

友達が大学に来ない。連絡もつかない。 一人暮らしだし、もしかしたら風邪で臥せっているのかもしれない。 心配だ。今日、家を訪ねてみようか。 急に行って迷惑じゃないだろうか。 彼は大学に入ってから初めて出来た友達だ。 親しい、とは思う。 急に訪ねても迷惑では無い間柄だ、とも。 けれど、人懐っこくて人気者の彼だから、わざわざ俺が家を訪ねなくとも、誰かが様子を見に行っているだろうとも思う…。けど…。 …まぁ、少しだけ顔を出してみて、心配なさそうならすぐに帰ればいいか。 家に

    • 私は本気になる。

      2024年3月現在。 私はやりたい事から逃げ続けていたことを反省する。 もっともっと自分の人生を、豊かで楽しくて温かい物にしたい。 自堕落で、適当で、事なかれ主義である事を辞めたい。 だから私は、本気になる。 トライ・アンド・エラーを繰り返して、最後には素晴らしいゴールを手に入れてやる。 本気の2ヶ月チャレンジ、始めます。

      • 気が付かないフリ p.3

         友達から電話が来た。  どうやら彼氏と喧嘩をしたらしい。普段ならすぐに謝りに来る彼氏がもう何日も冷たいままだと。  これから相手の家に行って、話をしてくるらしい。 一緒に住んでいたとは知らなかった、と言うと彼女は照れながら「半同棲だけどね」と笑った。  相手は歳下でまだ学生らしい。 もともと夢見がちな友人ゆえに、変に暴走していないか心配だ。  喧嘩の理由だって『部屋で料理をして待っていたら怒られた』と言っていたし、そんな事で怒るなんて、何かやましいことでもあるのだろう

        • 隣人 p.2

           最近、隣人が怖い。  歳は一回りは上だろうか。直接聞いたことは無いけれど、恐らくそのくらい。  引っ越しの挨拶をした時は気さくな印象で、しかも美人だったから正直浮かれていた。  親切な人で、部屋の鍵を失くして冷や汗をかいていた時は、一緒に探してくれたし、好物の話をすれば作って持って来てくれた。学生の一人暮らしは大変だろうと、なにかと気にかけてくれた。  初めての一人暮らしで不安も多く、ついつい甘えてしまっていた。    それが間違いだった。  そのうち、女友達を部屋に

        冷たくなった彼 fin

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        • 冷たくなった彼(仮)
          4本
        • nana.の思言
          3本
        • 約1ページの物語
          9本

        記事

          冷たくなった彼 p.1

           彼氏が冷たい。おそらく昨日喧嘩したからだ。  いつもはすぐに謝りに来てくれるのに、今回は朝になっても冷たいままだ。凄く怒ってるみたい。話しかけても無視されてしまう。どうしよう。今までこんな事なかったから、どうしていいか分からない。  機嫌を取ろうと彼の好物を作ってみても、一口も食べないし、アイスやタバコを買ってきてみたけどそれも無視。何をしても無視されてしまうから、私も疲れてきて、家を出ることにした。 __あれから5日。家を出てから、LINEも電話も、一度も返ってこなか

          冷たくなった彼 p.1

          深夜宅配、後

          ◇  荒木は腕組みしながら封筒を睨み付ける。 一体何を送ってきたのだろうか。蛍光灯に透かしてみるが、見えるはずもない。 中を確認しよう。いや、しかし…。 手をかけては辞め、を繰り返した。  わざわざこの時間を指定し直接手に取らせたのは、別れる決定的な物を送ってきたからではないだろうか。そう思うと中々開ける覚悟が決まらない。  一緒に暮らしている頃は何かと仕事を優先しては、よく怒られたものだった。    そういえば、出ていった日もそうだ。 結婚記念日にはプロポーズをしたレ

          深夜宅配、後

          深夜宅配、前

           インターホンが鳴った。  既に日付を越えてから二時間は過ぎている。こんな時間に誰が来たのかと怪訝な顔で画面を覗きこんだ。  そこにはにっこりと笑みを浮かべる見知らぬ男が立っていた。  …部屋を間違えたのか。踵を返しソファーにどかりと腰をおろす。  もう一度チャイムが鳴った。画面の中の男は、相変わらず笑みを絶やさずに立っている。  間違いに気づいていないのだろうか。どちらにせよ、このままチャイムが続くのは、煩くてたまらない。うんざりしながら通話ボタンを押した。 「部屋を

          深夜宅配、前

          余命宣告を受けた

          【12.06 12:30】 余命宣告を受けた。それも医者からではない。 帽子を目深にかぶり、ロングコートを羽織った黒尽くめの男は「死神」だと名乗った。 僕は路地裏で煙草をふかしていた。禁煙の看板を掲げた世の中では肩身の狭い思いをする。檻みたいな場所で他人の息づかいを一緒に吸うのはこりごりで、こうして路地裏に避難するのが日課だ。 ぼんやり空を見上げていると、突然肩を叩かれた。振り返ると男が立っている。驚いた拍子に煙草が手から滑り落ちてしまった。 (滅多に人が通らない

          余命宣告を受けた

          夢をエサに若者を喰う大人を見た話【後編】

          このお話は前回の続きです。 前回↓ https://note.com/nana_hirokawa/n/n9d0941d1c50e 違和感が大爆発した私は家に帰ってから検索をかけてみることにしました。 そもそもこの映画プロデューサーさんは、何の映画に携わったんだろうか?プロデューサーの名前で検索をすると、トップに出てきたのはFacebookでした。 Facebookの詳細を確認しても、出身校やどんな場所で勉強したかは出てきますが、作品名などは一切出てきません。 そして、

          夢をエサに若者を喰う大人を見た話【後編】

          レンズ越しの月

          夜風に誘われるようにして外へ出た。 周辺の民家は寝静まっており、世界が自分だけになったかのような錯覚に浸る。 (気持ちがいい、夢の中みたいだ) そんな心地よさも、時折通るタクシーに現実へと引き戻される。 荒くガスを吐き散らしていく後ろ姿から、空へと視線を移す。 0.1ミリのレンズが溺れた夜は、ひどく色褪せてみえる。 ため息をついて、また歩きだした。 (いいね、夜。朝日が昇れば消えられるんでしょう。私もこの夜に溶けてしまいたいよ。) 未練がましく液晶画面を覗くが

          レンズ越しの月

          夢をエサに若者を喰う大人を見た話。【前編】

          初めましての方も、私のことを知っている方もこんにちは。 浩川 ななです。 役者や脚本、被写体等々活動しております。 先日の被写体活動中、とあるカメラマンさんにこう誘われました。 「映画プロデューサーさんの話、役者さんなら面白いと思うから聴きに行かない?」 え、なにそれ。 と駆け出し役者のひろかわは興味津々で、その方に着いていきました。 到着したのは渋谷のとあるレンタルスペース。 私達の他に30~40人程が集まり、その「映画プロデューサー」さんのお話を聞きました。

          夢をエサに若者を喰う大人を見た話。【前編】

          美しい脚

          私は脚をよく誉められる。 世に言う"美脚"の条件を全てクリアしているからだ。雪のように白い肌に、無駄のない筋肉。細すぎず太すぎない。惚れ惚れするような脚だ。 今日も私は惜し気もなく素足をさらす。 美しい脚は常に浴びるような視線を受ける。 しかし、私は動けない。 自由に歩くことは出来ないし、よい気分だからとスキップをすることもできない。 一度でいいから自分の好きな服を着て、外に出たい。 こんなところで注目を浴びるのはもう飽き飽きだ。 近くで幼い男の子が走り回るのをぼんやり