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野草研究 5 メマツヨイグサ

メマツヨイグサとの出会い

4月に藤沢のゆいの畑での「美味しい野草の観察会」の下見に行った際、北鎌倉ではあまり見かけない植物のロゼットがありました。
放射状に伸びる葉の形がとっても綺麗なこの草。
詳しい方にお聞きしたところ、多分メマツヨイグサではないかとの回答をいただきました。

見たことのない葉っぱがこれ以外にも畑には色々あって、北鎌倉と藤沢、距離的にはそう離れていないのに、山と平地の畑では生えている植物がかなり違うのだなぁと思ったものです。

マツヨイグサは食べることができると聞いたことはありますが、身近に生えていないので、体験したことがありません。
調べようと思いつつも、近くに無いからすぐに忘れてしまい、そのままになってました。

そんな折、7月下旬にzoomで野草お話し会の依頼があり、講師をさせてもらったのですが、参加者のお一人から、マツヨイグサは食べられますか?!との質問をいただきました。
そうそう、調べようと思ってたんだっけと思い出し、ずっと気になりつつも調べ始めたのは秋も終盤になってから。

では春の観察会に向け、メマツヨイグサについて書き留めておくことにします。

メマツヨイグサとはどんな植物なのか

メマツヨイグサ
学名 Oenothera biennis      英名 common evening primrose                             北アメリカ原産 越年草

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ゆいの畑の大寺さんの話っぷりによると、夏になるとこのメマツヨイグサらしき植物は「蔓延って困りもの」的な印象でした。
困りものを食べてしまおうという趣旨で何度か野草の会を開いている私にとっては、なかなか良さげな植物ではあります。

マツヨイグサの仲間は色々あり、ネット上にある情報もまちまちで混乱してしまいます。
その中でわかりやすかったのが三浦半島の野草の情報に詳しい「花の家」さんのサイト。
http://www.azami.sakura.ne.jp/hana/index.html

こちらに掲載されている見分け方の図解がとてもシンプルにまとまっているので、お借りすることにしました。
http://www.azami.sakura.ne.jp/yasou/zoku/matuyoigusa.htm

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ゆいの畑にあったはメマツヨイグサとのことでしたので、1番下の雌待宵草がそれですね。
植物の専門家にロゼット状の葉の写真を見せて、これは何ですか?!と聞くと、しばしば返ってくる答えが、「うーん、〇〇に似てるけど、花が咲かないとわからないなぁ。」というもの。
なので、メマツヨイグサかどうかは夏に畑に行って花の大きさや萎れた時の花の色を確認することが必要です。

千葉県野田市に生育する植物を紹介するサイト。
こちらによると現在多く見られるのは、メマツヨイグサとコマツヨイグサで、かつて多く見られたオオマツヨイグサは今は稀になってしまったとのことでした。

前出の「花の家」を管理しているなずなさんとメールでやりとりをした際に、マツヨイグサを毎年時期になると楽しみにしているけれど、同じ場所を訪れてなくなっていてがっかりすることがある、と書かれていました。

メマツヨイグサは繁殖力が強くもともとそこにあった植物の生息場所を奪ってしまう可能性があると野田市の記述にはあり、気になって調べてみると、なんと要注意外来生物でした。
他サイトでもメマツヨイグサの繁殖力に押されて、オオマツヨイグサの個体数が減ったと書かれていたのを見かけました。

三浦半島で無くなってしまった「マツヨイグサの仲間」というのは果たしてどの種類だったのか気になるところです。
これはあくまで推測ですが、なずなさんが言っていたのは今は稀になってしまったというオオマツヨイグサのことなのかもしれないなと思っています。

マツヨイグサの仲間はどの種類も食べられるのか?!

さて、マツヨイグサに様々な種類があるということはわかりました。
ではそのどれもが食べられるのでしょうか?!

下のリンク先を見ると
「マツヨイグサには、マツヨイグサ、オオマツヨイグサ、メマツヨイグサ、アレチマツヨイグサなどの種類がありますが、どれも同じように食べられます。」
という記述があります。

また、川原勝征さんによる「食べる野草と薬草」という本の中にも、マツヨイグサの仲間はどれも食べられるとの記載を見つけました。

メマツヨイグサの葉は美味しいのか?!

野草本を比較してみると、ある本には美味しいと書かれているのに、また違う本にはあまり美味しくないと書かれてあるケースがよくあります。

メマツヨイグサはどうかというと、ネットの情報では「味は・・・草!っていう感じ」と表現されているもの(これはそう美味しいものではないと私は解釈します)から、「クセもなく、オクラのような粘りがあり、結構美味しかった」という記述がありました。

野草本での記述はどうかというと、

(フランスでは)野菜として(北アメリカから)輸入されたとしながらも、
「味も舌触りも特においしいというわけではありません。生のままで食べると、のどを刺激することがよくあります。」 
ナチュラリストのための食べる植物栄養学 フランソワ・クープラン著より
「本種(メマツヨイグサ)とコマツヨイグサの若葉を浸し物、酢の物、和え物、天ぷらにして食べた。結構おいしく食べられた。」
食べる野草と薬草 川原勝征著より

やはり評価が二分しています。
結局のところ、自分の舌で味わって経験するのが一番!ということですね。

花や蕾、根っこも食べられる

マツヨイグサで調べていると、若葉よりどちらかというと花や蕾の方の利用価値の方が印象的でした。
黄色い花を酢を落とした湯でさっと茹でて、甘酢和えや寒天寄せで美しい色を楽しむことができるようです。
そして、根っこは王道のきんぴらに。

種はサプリメントの月見草オイルの原料

メマツヨイグサの細かな黒い種は、γ-リノレンが豊富で、月見草オイルとして市販されています。
一般的には、アトピー性皮膚炎への有効性、また女性ホルモンを整える働きがあることから月経前症候群や更年期症状の緩和に用いられたり、食後の血糖値上昇を抑制する、善玉コレステロールの低下を防ぐなど生活習慣病を予防する効果があると言われています。

そういえば、30代の頃、友人の住むオーストラリアに滞在した際、近所のスーパーで、女性の不調にはこれがいいよと薦めてもらったのがイブニングプリムローズのサプリメントだったことを思い出しました。

オイルを料理に使えますが、加熱に弱いとのことでサラダなどへの利用が望ましいようです。

まとめ

メマツヨイグサは全草を食用として利用できる他に、種から採れるオイルに様々な薬効を期待できる薬草としてのプロフィールがあることがわかりました。
野草食という観点から見ると、繁殖力が多いことから、食べて数を抑制することはできそうですが、まずは日常的に簡単に美味しく食べれるのかということがポイントになりそうです。

養命酒が発行しているメールマガジン「元気通信」によると、メマツヨイグサは

全草や種子、根を鎮痙薬や抗血液凝固薬として、また咳や風邪の時に内服します

と書かれています。
内服とありますから、乾燥させたものを煎じるという意味だと思いますが、料理として食した時も、胃腸の痙攣を抑えたり、血液をサラサラにする作用は緩やかながらあるのではないでしょうか。
あるサイトでは「根っこを日干しで乾燥させると、風邪の時の喉の痛みや解熱剤に用いることができる」とありましたので、元気通信との記述とも重なります。
( この後、養命酒製造株式会社に問い合わせたところ、メマツヨイグサの全てに上述の鎮痙作用、抗血液凝固作用、咳、風邪に効く作用があるそうで、根っこだけが風邪の症状に効くというわけではないとのことがわかりました)

春になったらゆいの畑に行って、メマツヨイグサを採取・味見をして、美味しいかどうかの見極めをしたいと思います。

マツヨイグサの種類

マツヨイグサ   学名 Oenothera stricta
                                 英名 Chilean evening primrose
         チリ原産多年草

メマツヨイグサ  学名     Oenothera biennis L    
                               英名    Evening primrose   Common evening primrose
                                 中国名  月見草
         北アメリカ原産2年草

オオマツヨイグサ 学名     Oenothera glazioviana Micheli 
                                 英名      Large-flowered evening primrose
                                 中国名  黄花月見草
                                 北アメリカ原産でヨーロッパで生まれた園芸種

コマツヨイグサ  学名 Oenothera laciniata
                                 英名    Cutleaf eveneng primrose
                               北アメリカ東南部原産2年草

アレチマツヨイグサ 学名  Oenothera parviflora L.
                                     英名  Evening primrose
                                     中国名 小花月見草
                                      北アメリカ原産多年草

ツキミソウ    学名  Oenothera tetraptera
         英名
                                 メキシコ原産

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