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【小説】誰が勇者を殺したか(著:駄犬、イラスト:toi8) 2023年最高のファンタジー作品

僕はファンタジー作品が好きだ。と言っても、ファンタジーの中でも細かいジャンルで分ければ好き嫌いはあるのですが、好きなものの傾向として、謎解き要素を組み込んだ作品が挙げられます。

例えば「化物語」「薬屋のひとりごと」、漫画だと「進撃の巨人」「サマータイムレンダ」など。共通しているのはミステリー作品に分類されるかどうかではなく、物語の仕掛けとして様々な伏線を用意している部分。物語の何処かしらに散りばめられたそれらの要素の組み合わせが作品を読み解く鍵となるような、そんな仕掛けのある作品が好きなのです。

ということで本題。僕の中ではそれらの作品と同類のライトノベル「誰が勇者を殺したか」が今回の主役。

発売から四カ月が過ぎた現在(2024年2月)までに重版を度々重ね、Amazonでの評価は約1,100のレビューで星4.8。圧倒的な高評価を誇る人気作品。

よって、既にご存じの方も多いかもしれませんが、まずはあらすじを紹介。以下、公式サイトより引用。

魔王が倒されてから四年。平穏を手にした王国は亡き勇者を称えるべく、数々の偉業を文献に編纂する事業を立ち上げる。かつて仲間だった騎士・レオン、僧侶・マリア、賢者ソロンから勇者の過去と冒険話を聞き進めていく中で、全員が勇者の死の真相について言葉を濁す。「何故、勇者は死んだのか?」勇者を殺したのは魔王か、それとも仲間なのか。王国、冒険者たちの業と情が入り混じる群像劇から目が離せないファンタジーミステリ。

角川スニーカー文庫 公式サイト

この紹介文には明確にファンタジーミステリと書いてあります。これだけで僕の心はがっちりと掴まれたわけですが(基本的にちょろい)、装丁のtoi8さんのイラストが僕の心に追い打ちをかけます。物語を読む前も、読んだ後も、読者に訴える力がある素敵なイラスト。当然ながら数々の挿絵は物語との親和性が高く、登場人物の輪郭を際立たせる重要な役割を十二分に果たしています。本文と共にぜひ楽しんでほしいです。
そして、更に絶賛したいのが帯。言葉を厳選し、その他の情報を排除した黒帯のセンスの良さに脱帽。

以上をまとめて説明すると、書籍として表紙がイケメンなのです。そして、ただのイケメンではありません。本質的な格好良さが顔から漏れ伝わるタイプのイケメンなのです!一般的なラノベとは一線を画す異質な表紙に惚れて、書店で思わず手に取った方も多いのではないでしょうか(私もそんなひとり)。僕のように面喰いなタイプは真っ先に食らいつくこと間違いなしです(出版社の思う壺)。

肝心の書籍の内容も、あらすじに続く筋の通ったストーリー展開に謎解き要素を含ませたことで没入感を高め、ライトノベルらしくあらゆる年代に受け入れられるよう適度に柔らかな表現でまとめられており、更に個性際立つ主要人物の言葉の数々が物語の理解の浸透度を高めています。

主要人物といえば、勇者のパーティーメンバーである剣聖レオン、聖女マリア、そして大賢者ソロンですが、本作では三人がそれぞれの章で勇者に関する証言を語っており、その証言の中でも特に気に入り、最も推したいと思った人物は聖女マリア。全編を通しての彼女の想いや発言が、この物語に大きな深みとアクセントを加えています。特に、聖女とは何か、回復魔法とは何かを考えれば考えるほど、彼女への想いは募るのです。こんな僕の意見に賛同してくれる方はきっと、SかMどちらかといえばMな人なはず・・・・・・いや違う、きっと、どMだ。(何の話だ)

そしてもうひとりの主要人物、勇者に関する文献の編纂で重要な役割を担うアレクシア姫について。彼女については、ここで語ることを控えたいと思います。ぜひ、本作で彼女の言動と行動を楽しんでください。

最期に。本作で一番好きな章は?と聞かれれば、ラストの「とあるスイーツの店にて」。本作を読み終えた後の感想として、物語を締めくくる理想の章だったと断言します。

過去、勇者が登場する様々な作品があったが、自分が出会った中でも屈指の傑作。ファンタジー作品に興味ある全ての方にオススメしたい作品です!

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