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第30回電撃小説大賞受賞作『無貌の君へ、白紙の僕より』発売記念─にのまえあきらさん作品紹介

2024年4月25日、メディアワークス文庫より第30回電撃小説大賞受賞作『無貌の君へ、白紙の僕より』が発売されます。僕の【推し】である著者にのまえあきらさんのデビュー作なのですが、まずは作品紹介から。

試し読みはここからできます。感想ですが出だしから良くて、特に第一章の冒頭から、主人公の優希とヒロインの美澄を繋ぐ木谷先生というキャラが既にたっているあたりがいい。僕は、こういう腐った大人の皮を被ったキャラ(特に肩書きがお堅い人ほど)がとても好きですね。とはいえ、最も気になるのは優希と美澄の関係性。絵をきっかけに再会した二人のこれからがどうなるのか楽しみで仕方ない。

さて、少し話を変えまして、彼が作家を目指したきっかけについて。以前から公言されていたのですが、最近Xに投稿されバズっていたのでご紹介。エイティシックスは先ほど紹介のデビュー作とは思いっきりジャンル違いますけど、心を震わせる作品、という点は共通項。そう、彼の作品は心に訴えるのです。

そんな彼の作品に僕が出会ったのは4年前。カクヨムコン開催時に応募作品を片っ端からスコップしていた際のこと。たまたまTwitter(現X)で彼を知り、応募作を読んで感動して以降、ずっと彼のファンであります。

発売という記念すべき日を前にして、せっかくの機会なのでカクヨムで公開されている彼の過去作を幾つか紹介させてください。

まずは出会ったきっかけとなった作品『千歳』から。

当時衝撃を受けて、気合い入れてカクヨムのレビュー書いたことを思い出します。次の作品紹介もあるので僕のレビューはさくっと読み飛ばしてもらっていいのですが、熱量をお伝えしたかったので、載せておきますね。

『人類は音を聞くことができない』

物語の最初から、ちょっとした違和感があった。まるで、何かを試されているような。

五感のうちの一つである聴覚を奪われた人類。冒頭の言葉を借りれば、『147秒以上音を聞き続けると脳が自壊する』のだそうだ。音はある。だが、聴き続けられない。まるで牢獄のような世界だ。

自分にとって、音は本と同じくらい欠かせない。想像してほしい。音がなければ、髭男の曲で一回りも歳の違う女の子と会話なんて出来ない。嵐の256曲デジタル配信開始で賑わうジャニーズ好きの女子と触れ合う事もできない。そんな話はさておき、生活の中で音に触れない時はない。心を落ち着ける為に、あるいは集中するために音楽を聴くことは日常茶飯事だ。

さて。音と交われない世界で、主人公はひとりの女の子と出会い、物語は展開する。

ちょっとした違和感、と書いたが、物語の進行と共に少しずつ積み上げられる。そして、おそらく読んで頂いた多くの読者が感じるであろうその違和感は、物語の最後の章で、実に美しく解消される。

違和感は、この物語の旋律のひとつだった。全ては、千歳という作品の楽譜に書かれた、仕組まれた物だった。

『悠久という名を冠していても、実際には永遠じゃない』

聴覚を奪われた世界にも、終わりは訪れる。終わりに向かう女の子と主人公。その先にある運命に立ち向かう二人の言葉に、是非注目してほしい。二人の奏でる恋の言葉は、きっとあなたの心に響くはず。

こんな暑苦しいレビューを書くほど熱を帯びた状態で過去作『メル、愛してる』も一気に読んだのですが、これもまた愛を感じる作品で素晴らしかった。確か彼はこれを書いた頃はまだ学生だったと記憶してるのですが、僕はこれらの作品を読んで、既に書くものの芯に自分らしさを持ってる人だと感心したのでした。

その後に発表した作品でレビューを書いた次の二作もまた、彼の色が良く出ていてオススメです。短編なので、さくっと読めます。

こんな感じで数々の作品を書き続け、今年、遂にデビューに至った彼の努力には心から敬意を表したいし、何より感謝しているのです。作家になる夢を諦めずにここまで来てくれたおかげで、今回紹介した作品を書いた頃から更にレベルアップした新しい作品が読めるのですから。しかも、書店で手にすることができる。何と幸せなことか。

冒頭で紹介したデビュー作の出だし(試し読み)は、期待を大きく上回るものでした。彼のことですから、必ずその先も楽しませてくれるはず。もし、このノートを読んだあなたが彼に興味を持って頂けたのであれば、ぜひ『無貌の君へ、白紙の僕より』を読んで、共に楽しさを分かち合いたいものです。

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