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ムーラン・ルージュについて(映画も舞台も)

今回は大好きな大好きなムーランルージュについて。
映画もミュージカルも語ります。(多分長くなります)

映画

初めてこの映画を見た時のことはあまりの衝撃で未だに覚えています。
映画が進むにつれ、あの艶かしくて、妖しくて、夢の中に引き摺り込まれるような感覚に強い衝撃と共に、感じたことのない高揚感と不思議なことに安心感に包まれました。
毒々しいというくらい奇抜な色使い、舞台チックで大袈裟な映像演出、時代設定に反して、台詞回しや楽曲のマッシュアップの現代的センス。
情報量が多くて、何もかもがぐちゃぐちゃで処理するのに必死なんだけど、どこか違和感が残り続ける、、、。その違和感がさらにスパイスになっていきます。

このしっちゃかめっちゃかな世界に対して、異質なほど純粋で美しいクリスチャンとサティーンの恋。
雑多で退廃的なモンマルトルの希望の光のように見える二人の恋は強く惹きつけられ、自分が普段向き合う現実はすっかり忘れて、彼らの恋に心の底から一喜一憂できる2時間。
この感覚はどことなく、ミュージカルを見る時の感覚に近いのかもしれない、、。

見終わった瞬間から大好きな映画になっていました。




そして数年後、ミュージカル化のニュースが。
当時少し英語が理解できるようになり始めて、ブロードウェイ情報を調べ始めた頃で、世界中のミュージカルファンと同じタイミングで同じ記事を読んで喜ぶということができて、英語を学ぶことで世界が広くなったと初めて実感して、感動したのを覚えています。

ですが、受験やパンデミックでチャンスを逃して、
念願の初観劇は昨年夏のロンドン公演でした。

ロンドン公演

ロンドン公演の時は念願だったのでVIPパッケージも付け、劇場専用ラウンジから軽食とシャンパンで雰囲気を上げてからの入場で、劇場の客席フロアに入った時はまるで夢の世界だったムーラン・ルージュというクラブに本当に入店したみたいでした。

真っ赤なライティング、妖しい音楽、美しくて妖艶なパフォーマーたち、気持ちよく酔いの入ってドレスアップした観客。観客の興奮と期待感が劇場全体に詰まっている空間。
ミュージカルを見ている感覚というよりは、異国でのナイトライフ、クラブ体験という感じ。
だからか、ムーラン・ルージュの世界観に没入していく過程はクリスチャンに思考を寄せていました。

開幕したら、劇場全体を満たしていた観客の期待感と興奮を何倍も超えていくパフォーマンスに興奮を冷めさせないストーリー展開。
これぞ、スペクタキュラー。

終わったあとは興奮と高揚感で現実世界にしばらく戻れない。
この感覚は、初めて映画を見た時のそれと同じでした。


ニューヨーク公演

その後、アーロン・トヴェイトの期間限定カムバックを受け、今年の冬にブロードウェイ公演も観劇。

アーロンのクリスチャンを見るという念願の目的があったので、アーロンのクリスチャンを中心に物語を追い続け、アーロンのパフォーマンスに感動するという観劇でした。
劇場での没入度はロンドンと比べると完全に観光地化されているニューヨークにはあまり感じられずと言った感じでした。

今振り返るとこの観劇は個人的にブロードウェイ的な観劇だったなぁと思います。
もちろん初見じゃなかったというのは大きいですが、スターを目当てにパフォーマンスを楽しみ、このパフォーマンスを見たという満足と興奮と優越に浸る、、、。
なんだかアメリカっぽくないですか?
純粋にミュージカル作品として観劇できなかった気がして、ちょっと後悔しています。

東京公演

そして念願の東京公演。
ロンドン観劇時に妄想していた理想キャストの平原綾香さんのサティーンや伊礼彼方さんの公爵役の発表にとにかく嬉しかったのを覚えています。
他のミュージカルでも大好きな二人が大好きなムーランの世界でどうなるのか、楽しみでたまらなかったです。
その他のキャストもどうなるか全く想像がつかない方やただただ楽しみな方もたくさんいて、my初日まで楽しみに楽しみにしてました。
(書いててわかる。重い。)

初日の感想はこのnoteにも興奮そのまま書き殴ったものがあるので、気になる方はそちらを読んでみてください。

そして今日まで3回観劇してきました。
まだまだ、何度か観劇予定ですが、落ち着いてきたのでここで感想を。

ロンドンやニューヨークと比べると、圧倒的に大きな帝国劇場のサイズ感とエプロンステージのないオーストラリア版演出がすごく印象的でした。
特に今まで見てきた劇場にはなかった余白がライトで囲われた枠を際立たせ、客席の現実世界と枠に囲われた物語の世界の境界線のように感じました。
まるで箱の中の世界をのぞいているような感覚でした。

そして日本版で一番好きだったのはアンサンブルのパフォーマンス。もう好みですが、多分一番色っぽいのは日本版だと思います。
しなやかで上品かつダイナミック。
(海外版はダイナミックではあるのですが、しなやかとはあまり感じなかった)
何回も観ているのもありますが、日本のムーランは衣装やセットではなく、パフォーマンスで世界に誘われてる気がしました。


ミュージカル版の作品について

この作品は舞台セットや衣装の豪華絢爛ぶりに注目されがちですが、何よりの特徴は編曲だと思っています。
この世にあるラブソングをできる限り並べて、完璧にマッチするものを選び抜いて、これ以上ないセンスで作られた編曲です。
最近海外で見る表現でEargasmとあるのですが、直訳すると耳の快感。
この言葉こそ、ポップスの音楽を圧倒的な歌唱力でひたすら魅了され続けるこの作品にぴったりだと思います。
そんな神がかった編曲を堪能できるのであれば、それだけで話題になったチケット代も決して高くないと考えています。
また、元の楽曲を知っていたら、各楽曲を再認識する機会にもなります。
ただリズムやメロディのキャッチーさで認識されている楽曲も登場人物たちの心情にのせたら、書かれた歌詞がストレートに響きます。
さらにムーランルージュでは、クリスチャンからサティーンへの「ただ、愛している。」という気持ちを伝えるのに、何通りもの表現があって、伝え方があるということを強く感じることができます。
そう考えると最高にロマンチックなミュージカル。悲恋だけど。

また、注目すべきはパフォーマンスレベルの高さですよね。
THEアメリカ産のド派手で圧倒的なパフォーマンス。
ポップス楽曲ならではのテンポ感を見事にショーアップし、豪華絢爛なセットや衣装に負けないくらい大迫力のパフォーマンス。とにかくダイナミック。
さらに、映画に負けず劣らずの照明技術でムーラン・ルージュの世界観に一気に引き込まれます。
一幕も二幕も最初は圧倒的なビックナンバーで観客を一気に妖しいムーランの世界に誘い、最後はこれぞ総合芸術といった各クリエイターの技術と才能が集結したナンバーで余韻に浸らせ、離さない。
本当にすごい作品です。

ちなみに個人的な心の叫びも。
私、ずっと前から嫉妬する男性のナンバーが本当に大好きで!
(母にはひねくれてると言われますが気にしません)
愛情だけじゃなくて嫉妬や独占欲といった人間の本能的かつ、複雑な感情をミュージカルナンバーで迫力たっぷりに歌い上げられるとその迫力と感情の爆発に心が震えます。(自分で書いていてキモい)
特にムーラン・ルージュでは二幕でクリスチャンのサティーンの愛からくる嫉妬心の描き方が本当に丁寧で大好きなんです。映画版より遥かに丁寧。
Chandelierで初めての嫉妬や戸惑いといった感情にうろたえて、El tango de Roxanneで嘆き苦しみ嫉妬に溺れ、Crazy Rollingで裏切られた絶望と怒りと決意。
こんなに一人の人間の感情の動きを、何曲もかけて丁寧に描く作品そんなにないですよね?(きっと製作陣も嫉妬ナンバー好きなんだと思う。)

最後に少しだけマイナスポイントも。
この作品自体は大好きなのですが、あまり頭を使って考えたり議論することができない作品かなぁと思いました。
同じ帝劇で上演される人気作品のミス・サイゴンやレ・ミゼラブル、エリザベートと比べると、あまりの豪華さや現実離れしたこの作品では「夢の世界」「物語の世界」として納得して処理してしまう気がするのです。
ミュージカル作品の観劇として自分の中に落とし込めるのに、「なぜこの作品が生み出されたのか」「この作品のメッセージは」「この作品を見てどう捉えたか」などを考えるのですが。
ムーランに関しては、この過程があまり面白く感じることができませんでした。
もちろん、まだ発見があるかもしれないと思うので、当時のパリの背景やムーラン・ルージュの歴史、状況をもう少しリサーチしてみようかなと考えています。

ただ、これはこれでいいのかなと思ったり。
必ずしもメッセージ性を感じなきゃいけないわけではない。
束の間の夢の世界に浸ることを楽しむのもエンターテインメントとして、最高に楽しんでいるんだし。

なんだかんだ長くなってしまいましたが。
やっぱり総合芸術として、ムーラン・ルージュは本当にハイレベルな作品だなぁとつくづく感じます。
これから観劇予定の方も既に観劇済みの方も少しでも楽しんでもらえたのなら嬉しいです。
ここで作品愛を語ることができて、楽しかったし、めちゃくちゃスッキリしました。読んでくださった皆様、ありがとうございました。

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