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Kさん、Mさんとの訪問ミュージックケア~主体的に参加することを目指して~

今回は、今年小学校1年生になったKさん、Mさんとの訪問ミュージックケアでのお話です。双子のKさん、Mさんは「脊髄性筋萎縮症(SMAⅠ型)」という病気で、自分で体を動かすことが難しい状態です。そんな二人ですが音楽は大好き。Kさん、Mさんとどのようにミュージックケアを楽しむか、どんな目標をもって月一回のセッションを行うのか。私が考えたこと、実践したことをまとめてみました。

今回のお話*****************************

■ どんな風に楽しもう?

■ ミュージックケアを通して目指す姿

■ できた!を共有する

■ 続けることで見えてくるもの

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■ どんな風に楽しもう?

1月から始めたKさん、Mさんとの訪問ミュージックケア。訪問ミュージックケアを始める以前に、何度かオンラインミュージックケアに参加してくれていた二人。とはいえ対面でのセッションは初めて。二人とどんなセッションができるのか、楽しみな気持ち半分、不安半分で訪問しました。

私は特別支援学校で働いていますが、肢体不自由のお子さんに対しては素人。重症心身障がい児である彼女たちの身体はもろく、触れ方次第で簡単に脱臼、骨折してしまうこともあります。「お星さまとアリサ」「仔猫と知恵くらべのアリサ」では、手に触れるとき、手を握って上にあげたり、下げたりするとき、体をタッピングするとき、どのくらいの力で、どのように触れたらいいのか。どの部分をどのくらい動かしていいのか。技術的な指導を受けながらのセッション。全く余裕のない私でしたが、Kさん、Mさんは「オブラディオブラダ」など元気な曲を気に入って楽しんでくれ、もっとやりたい!と声を出してくれました。帰り際にはyoasobiの「ツバメ」が好き、と二人のお母さんが教えてくれ、次回「ツバメ」をやろうと約束して帰りました。今では「ツバメ」はみんなが好き!と言ってくれる曲。実は、KさんとMさんのリクエストから生まれた曲です。

■ ミュージックケアを通して目指す姿

3回セッションを終えたところで、2人とのセッションにおいての「目標」について考えました。今私ができていることは、二人の手を握って音楽に合わせて揺らすこと、一緒に楽器を握って鳴らすこと。このままの活動でも二人は「楽しい」と言ってくれるかもしれません。でも、私はこの活動を通して、二人にどんな力を付けてほしいんだろう・・・

考えるうちに、私がポイントだと感じたのは、「二人の生活の多くの場面が受け身であること」そして、「彼女たちの身体は動かし続けることで成長を加速することができる」ということ。私は、ミュージックケアを通して①音楽を聴く、楽器を鳴らす等の経験を増やす②受け身ではなく、主体的に楽しめる活動を見つける③体を動かし続けることで成長を加速させる。この①②③を通して、二人のQOLの向上のお手伝いをしたいと考えました。私の考えをKさん、Mさんのリハビリを担当している方に伝えました。リハビリ担当の方からは、将来的にボタン操作で音楽を楽しめるようになってほしい、とのお話をいただきそれを踏まえて以下の目標を立てました。

① ミュージックケアを通して、二人が主体的に体を動かす機会を作る。
② 音楽を聴いて、体の一部をタイミングよく動かせるようになる。
③ 好きな曲や感覚を増やす。
②③:将来的にボタン操作等で音楽を楽しめるようになってほしいため、リズム感を得る活動を取り入れたい。

■ できた!を共有する

目標を明確にしたことで、私なりに一曲一曲に目的をもって取り組めるようになりました。そして、二人の動きも少しずつですがしっかり見れるようになってきました。そこで分かってきたのは、二人が指の関節を自分で曲げて動かすことができるということ。「できる動き」も分かってきた5回目のセッション、二人は手作りの補助具を使うことで、フレームドラムを「自分で鳴らす」ことができました。

「パンパン」をよく聴いてタイミングよくフレームドラムを鳴らせたとき、「そうそう!」「できたねー!」と二人のお母さんも含め、大人たちは大歓声!顔の筋肉が動かないため、表情の変化はありませんが、きっとKさん、Mさんも何かを感じたと思います。その証拠に、パンパン以外の曲でも、一生懸命指を動かし、「カックン」の動きをたくさんしてくれました。できた!を共有できた感動的な日でした。

■ 続けることで見えてくるもの

5回目のセッションの日、「やっぱり回数を重ねることが大事ですね」と二人のお母さんがおっしゃいました。ほんとにそうだな、と思いました。訪問して五ヵ月。その少し前からオンラインミュージックケアにも参加してくれていたKさんとMさん。まだ1年未満の関わりですが、回を重ねることでお互いに慣れ、お互いの動きをよく見られるようになり、好きな曲、できる動きも分かってきました。そして、「主体的に動ける方法」を見つけることができ、主体的にミュージックケアを楽しめる喜びを、みんなで共有することができました。まだ始まったばかりの二人とのセッションですが、続けることで見えてくるものがあり、その先に喜びがある、そんな実感を得ました。これからも二人とのセッションを続けたい、一緒に成長の喜びを感じたい、そう思っています。


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