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パフェレポ アゾート『メイラード アイチ 発酵王国愛知 八丁味噌は岡崎の誇り』2024年4月※特別提供

※今回のパフェは、偶然おこぼれに預かったものなので通常提供されているものではありません※

 あまじょっぱいは正義!!(トマトパスタもいるよ)
味噌やみりん、白じょうゆ等の発酵調味料が主役。強い旨味、甘味、塩味を最大限に生かしたパフェ。作り手のこだわりがつまってます。

本当はグラスの中のアイスとタケノコが上に乗るらしい。むりだよ……

 パフェと、それとは別にたけのことアイスが来る。本当はトップに乗っているはずだったらしいのですが、乗せられなくなったそう。パーツを乗せられないなんてことあるかよ、というツッコミはさておいて、どうにかたけのこだけを手を支えながら渡邊さんに撮影していただきました(自立は無理でした)。
 今回のパフェ、こちらのお店では珍しくいつものワインテイスティング用の小ぶりのグラスではなく大きめなグラスに入っている。いつもは細身であるため、縦にしか展開されなかったパーツの配置が、今回は途中でみりんアイスと白じょうゆブールドネージュが隣同士に配置されているのが新しい。グラスの中で、空間がある……! と初見でびっくりしました。

 タケノコローストは、柔らかくてほのかに甘味を感じてとっても美味しい。なんでも、愛知県西尾市にある、パフェを作っている渡邊さんのご実家の山で穫れた一番美味しいものだそう。納得……!
 一緒に別添えされている八丁味噌のアイス、これがね!! ほんとに美味しい!! もーーびっくりした!!! ちゃんと美味しいと思える範疇にしょっぱさがとどまってるし、ちゃんと甘味も感じるの!! すばらしい!! (美味しさに感動してたらお店の他の店員さんがすごい笑ってた)
 何故こんなに感動したのかというと、昨年もおこぼれを預かった「発酵王国愛知」パフェでも同じく八丁味噌のアイスがパーツとしてあったのですが、それがまあほんとにしょっぱくて……。

「発酵王国愛知」パフェ(昨年3月のパフェ大学さんイベントで提供された物のおこぼれに預かりました)
仕事終わり、パフェによしよしされるつもりで食べたのにパフェに平手打ちされました

 形を成す限界の味噌の量に挑戦したのがソレだったようなのですが、挑戦的過ぎて、パフェのパーツとしての美味しさが幾分どっかいってしまっていたアイスなのでした(それがおもしろすぎてわたしは色んな所で語り草にしてた)。今回はそれを改良し、美味しいと思える範疇に味噌の量を減らして作られており、しょっぱすぎず"あまじょっぱいおいしいアイス"の範疇に留まっていました。昨年を知っている分味わえるこの感動……! あのパフェを美味しく作ったらこうなった、という正当な進化をここでまずひしひしと感じる。こちらのお店のパフェ、昨年と同じテーマのパフェでも今年はどうアップデートされているか、というも楽しみの一つなので、まさかここでも味わえるとは……! なんたるサプライズ。
 その次、モンブランのように渦巻くそれは、愛知県産三河おいんく豚の冷製トマトソースカッペリーニ。こちらのお店はパスタも本当に美味しいのですが、ついにパスタがパフェのいちパーツになるとは……! パスタもパフェも主力として提供するこちらのお店ならではのパーツ。いやでもこれは流石に予想して無かった、と思っていたら渡邊さん曰く前々からやってみたかったことではあったらしい。しかしパスタがパフェのパーツだと、準備が大変になってしまうそうなので、こういったイベントでもないと提供が出来ないんだとか。お味は勿論非常に美味しいトマトパスタ。豚肉は愛知県産を使っていて、ここでもこだわりが垣間見える。さらに、先ほどの八丁味噌アイスに浸けて食べてみることをおすすめされたのでそうやって食べてみると、これまた美味しい! トマトソースの酸味が、甘味のある濃厚な味噌ダレと絡んで和テイストになり、気分は本当につけ麺。トップというパフェの入り口に位置しているのもあって、本当に前菜を味わっているかのよう。八丁味噌アイスが味変にもなっていて、前後の流れの兼ね合いも素敵。アイスが溶けた後のことまで計算してあるパフェ好きです。
 パスタの下、座布団のようなそれは、うっすら八丁味噌のミルフィーユ。八丁味噌のソースが塗られていて、これがぽたぽた焼みたいなあまじょっぱい味がする! サクサクなミルフィーユ生地との相性も抜群。この"うっすら"というのが丁度良い案配なんでしょうね……! なんでも程々にするということは大事です。
 ここからはパフェグラスの中へ。しばらくは穏やかあまじょっぱゾーンが続きます。まず白じょうゆブールドネージュ。アゾートでは常連のパーツ、サクサクほろっとな食感の非常に美味しいクッキーに、今回は愛知県碧南市の七福醸造さんの白じょうゆが合わせてある。この白じょうゆが程良いしょっぱさをプラスし、結果的に優しいあまじょっぱさになっている。
 その横に位置しているのがみりん粕のアイス。これは二月のパフェにも入っていたやつですね。こちらも愛知県の杉浦味醂のみりん粕を使用し、あまじょっぱい優しい味になっている。このミルク感とあまじょっぱさがすごく良くマッチしていてくせになりそう……!
 そしてその下には本みりんのチーズスフレ。こちらの本みりんも勿論愛知県産で、杉浦味醂の三年熟成の物を使用しているそう。みりんのどっしりしたコクがチーズスフレとマッチしていて美味しい。ここまでの発酵調味料によるやさしい味のパーツでトップの八丁味噌の強い風味が一旦リセットされる。
 と思ったら、お次は八丁味噌とタケノコのクランブル。まず、食感要員としてタケノコがいるという驚き。このポリポリ食感が新しいですね。さらにクランブルの八丁味噌が結構ガツンと来るんですがこれがとっても美味しい!! この前にあったみりん粕アイスやみりんチーズスフレ、この後のナスのムースという甘みがあって比較的淡白な味のパーツと一緒になると、このクランブルがしょっぱさをプラスしてくれるので、結果的に素敵なあまじょっぱさを演出してくれる。優しい甘さが続いた後のこれは、食感もそうだが味のアクセントにもなっており、淡白めな味の反動で味噌味が鮮明に感じられて驚きだった。たぶんこれ、何にかけても美味しいはず、ご飯のお供にもなりそう。
 お次はなすのムース。これは単体で美味しく食べる、というよりは前後のパーツとの調和が映えるパーツで、なすのまったりしたコクが、味噌味パーツとすごくよく合う。何故ここでなすが来るのか伺った所、なすは『なす田楽』にもある通り、なすのコクと味噌の風味の相性の良さから今回使用しているとのこと。確かに、言われてみるとなすの味噌炒めとかでなすと甘い味噌との相性は実証済みではある。納得……! 個人的に、こちらのお店は発酵と野菜のイメージがあるんですが、今回のパフェでその印象がさらに強まりました。
 その下はほうじ茶の白玉。白玉は初登場のパーツで、入れてみたかったパーツだったんだとか。例によってほうじ茶も愛知県西尾市産のかりがねほうじ茶を使用していて、白玉にしてもちゃんとほうじ茶の存在感が優しいながらも残っており、味噌味の中のアクセントになっている。もちもち食感も楽しい。
 その下は八丁味噌アイスが再登場、さらに下、〆はカモミールのジュレ。何故カモミールのジュレなのか伺った所、カモミールの風味が味噌との相性が非常に良かったそう。手前の八丁味噌アイスが溶けてソースのようになっていてカモミールのジュレが浸っており、正直、八丁味噌の風味が強いのでカモミールの風味はよく分からなかったが、八丁味噌との相性は非常に良かった。後、他のパーツの影響で少し甘さの足された八丁味噌の味がとても良いあまじょっぱさになっていて本当に美味しい。わたしは元のアイスより少し甘さが足された方が好きでした。食べ終わった後、ずっと口に残しておきたいと思える程に好きな味でした。やはりあまじょっぱしか勝たん……!

 今回のパフェはあらゆる意味でアゾートでしか作ることの出来ないパフェだということを強く印象付けられた。
 どのあたりが具体的にアゾートならではだと感じたかというと、
・渡邊さんの故郷である愛知県産の素材にこだわっていること
・パスタをパフェに乗せるという、イタリアンを店名に標榜するに相応しい組合せをしていること
・和の調味料を使用しているが、アプローチの仕方としては洋であること
・発酵調味料を主役としてパフェを構成していること
 などが挙げられる。
 
 このパフェを渡邊さんが作った目的として、愛知が誇る文化である発酵調味料に脚光を当てたい、愛知県は発酵調味料の生産がさかんであることを知って欲しいという思いがあるとのこと。愛知県は古くから酒蔵が多く、江戸時代はその酒蔵の酒樽を使った発酵調味料の生産がさかんであったそうで、現在でも国内有数の産地であるそう。
 今回のパフェの名前にも入っている『メイラード反応』は旨味に強く結び付いており、一般的にはキャラメルや焼いた肉、焼き菓子など、加熱が必要だと思われがちだが、味噌・みりん・しょうゆ等の調味料ではそのままでもメイラード反応が行われている世界的には貴重な食べ物であるそう。日本では当たり前にある調味料に、世界的には珍しいことが行われている、ということを認識してほしい、そんな願いを込めて"メイラード"という命名だったそうだ。日本の調味料って、そんなすごいことが当たり前のように行われていたんですね、知らなかった……!

昨年の「発酵王国愛知」の構成
きなこムースだけが安寧だった
今年の構成

 昨年頂いたとんでもなくしょっぱかった八丁味噌のアイスとカタラーナ。しかし今となっては、味噌をパフェのパーツに使うお店も増えてきたので、あの時渡邊さんが味噌を主軸にパフェを構成された意味がわかったような気がする。味噌は、基本五味の中で塩味と旨味を感じられる調味料であり、これら二つをカバーできるとパフェ全体の味のバランスが各段に良くなるということに、あのしょっぱいパフェを食べてから一年を経てわかった。だから、あの時まさに味噌味と言わんばかりのパフェを食べて、パフェという文脈の中で"味噌味をとはなんたるか"をインプットできたあの経験は、おもしろパフェを追う身としてとても貴重な体験だったと思う。

 昨年のあの衝撃的なパフェからテーマを崩さず正当にアップデートされ、有無をいわさぬ美味しさへと変貌を遂げたことに驚きと大きな感動があった。
(渡邊さん曰く『下がったら上がるだけ、恋愛と同じ』だそうです)
 そして何といってもあまじょっぱさが最初から最後までずっと続くことが幸せ……! 今回は八丁味噌味以外は比較的優しい甘さのパーツが多く、緩急があって八丁味噌等の発酵調味料の風味をくどくない程度で最大限にその良さを引き出すその組合せの妙も流石でした。愛知県産へにこだわり、発酵調味料への思いも感じられ、まさに渡邉さんの思いが詰まった、パフェ、発酵調味料、そして故郷への情熱をひしひし感じられました。個人的に、こういう作り手の思いが伝わるパフェは大好きなので、単純にすごく美味しかったというのもありますが暫定では今年一番のパフェです!

 前日のパフェ大学イベントで提供されたパフェを偶然ご好意で頂くことができてたいへん感謝しております。すてきなパフェをありがとうございました!

ペアリングは赤味噌ラガー
ほんとに後味に赤味噌のコクを感じる! すごい!

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