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少しづつ好きな街に

この4年間程で、8回の引っ越しを繰り返して、今は自分の住処を持っているわけだが、どうしてこの金沢という場所が好きなのかを考えてみた。

この土地の良さというのは、圧倒的な「ちょうど良さ」である。

ちょうど良さとはつまり「粋」ということであり、それは私が最も憧れる概念の一つである。

九鬼周造「粋の構造」より

このちょうど良さの中には、地理、人、食がある。今回はこの三つに焦点を当てて考えてみることにする。

 まずは、地理的な特性についてである。金沢は、山と海が非常に近くにあり、海を見たくなれば港へ行けば良いし、山は街から眺めることができる。自宅の窓から眺めることができる白雪がかかった山は、毎日見ていても飽きない。

 街の中心にも歩いてアクセスすることができるし、街のそこかしこに仏閣や歴史建造物が立ち並んでいて、日本に住んでいる価値を実感する事ができる。

 次に、人の良さである。忙しい街で暮らしていると、人は人を大量に流れ込んでくるものの一つとして接しやすい傾向があると自分では感じている。これは私も例外ではなく、忙しい状況にあると意識せぬうちに、人への対応が機械的になったり、流動的になってしまう部分がある。

 この点に置いて、金沢の店では売り手やその他の人との軽やかなやりとりが発生する。何気ない会話ではあるものの、その人がそこにいることを認識しているという態度での接客と、気の利いた一言は、非常に心地よく、再度来店したいと思う店ばかりである。

 さらに一つ一つのお店が比較的少人数で運営されているため、その店の雰囲気や歴史、オーナーが作りたい世界観などが美しく表現されている店が多く、お気に入りの店がすでにいくつかある。

 そして、食がある。新鮮な食材がすぐに手に入るのはやはり地方の魅力である。スーパーは他の地域と一緒で外国産の魚も取り扱っているが、その一部には地元の魚もあり、比較的安く購入する事ができる。野菜は、お気に入りの八百屋さんがあるので、そこにいくと旬のものが手に入るし、バナナは2房150円で購入する事ができる。

とにかく街を歩くのが楽しくて、毎日ありがたく生活している。今まで住んできた街もそれぞれ良さがあったのだが、じっくりまわることはできていなかったのかも知れない。今はこの街が好きで、たぶんもっと好きになっていく。

数年はこの街にいる予感がする。この街で会うことができたら嬉しいな。


  




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