見出し画像

私を構成する5つのマンガその1


マンガが家に一冊もない家庭に育った。


いや、正確には、我が家の教育方針をあまり理解できていなかった祖父がなぜか買ってきた、ちびまる子ちゃんの第4巻だけが一冊存在していた。



なぜ4巻なのだ。といっても始まらない。祖父はそういう人間だった。

ちびまる子ちゃんだから実質1話完結で、続き物じゃなかったところが救いだったかもしれない。が、教育方針に見事に適応してしまった私にとって、特に興味の沸くものではなかった。




私のマンガとの出会いは、中学生の時になる。


友達の家に遊びに行ったとき、お部屋の本棚にはマンガがずらっと並んでいて、こういう家庭もあるのかとちょっと驚いた。

その子の家にはテレビゲームがあって、シルバニアハウスがあって、人生ゲームがあって、犬も飼っていて、ローラーブレードがあって、おやつにアイスがもらえて、パソコンでYouTubeが見れた。


私にはすべてが新鮮で魅力的で、自分の家でできないすべての「わるいこと」はその子から教わった

本当に悪いことはしていないし、お庭でBBQしたりビニールプールで遊んだり花火をしたりクワガタを捕まえたり、そういうことも一緒にしていたから、特に親からの心証が悪いということもなかった。



いろんな誘惑があるものだから、一緒に遊べるゲームが優先的になり、目の前にいる友達を放り出すことになるマンガに手を伸ばしたのはかなり後のほうになってからだった。

でも、一度見てしまったら、生まれながらの活字中毒のような私が、止まれるわけがなかった。


案の定、家主である友達を完全に意識の外に放り出し、マンガに夢中になってしまった私に、友達はあきれたような顔で、わかったわかった、それ貸してあげるから家で読みなよ、と言った。


それがひとつめ、「ぴちぴちピッチ」との出会いである。



アニメにもなった有名作品なのでご存知のかたも多いかと思うが、そんなことを言っていたら5つともアニメ化されているので説明することがなくなってしまう(ので説明させてください)。


「ぴちぴちピッチ」は、花森ぴんく先生の、ザ・少女漫画と言える作風で、人魚姫の物語をベースにした、主人公たちが特殊な能力をもって仲間を集めて悪と戦うという意味でプリキュア系統のお話である。


王道少女漫画(※)らしく、最初はちょっとイジワルなイケメンに気付いたら恋をしていて、でも主人公は水に濡れると人魚になってしまう体質で、それが人間にバレたら泡になってしまうという弱点を抱えながら、恋を育んだり敵と戦ったり闇落ちしそうな仲間の説得を試みたりする。


※王道少女漫画だと思っていたのだが、最近その友達と会った時に、あれを最初に読んでしまったのは妥当じゃなかった、性癖が歪んでいないか?という趣旨のことを言われた。マジか。


仲間は全員人魚体質であり、ひとりずつ7つの海を司っている。マーメイドメロディーの名の通り、戦う方法は歌である。ゆえに、魔法少女のステッキ的な役割を果たすのはマイクである。そして、イケメンは人魚姫を見たことがあるが、人間状態の主人公は非常に音痴なので、同一人物とは気づいていない。

このイケメンもただ海でナンパしてくるやつではなく、主人公たちの戦いとわりと深い関係があることが途中で明らかになる。そして物理的に戦う。



この作品の好きなところは、とにかくベッタベタに甘い少女漫画展開が繰り広げられるところ。そして、わかりやすいほどの勧善懲悪。話し合えば分かり合える素直な世界。斜に構えず、没頭してしまうといくらでも泣けた。



そして、人魚姫をベースにしている、というところも、実をいうとかなり衝撃を受けた。マンガって完全オリジナルじゃなくていいんだと。若干語弊があるが、要は元ネタがあってもオマージュとして完成されるとこんなにおもしろく新しく成立するんだと。


若干マンガへのハードルが下がった気がして、似たようなものなら作れるのではないか?と構想を練ってみたりもした。中学生の発想なので大目に見てほしい。


当然マンガを初めて読んだ身なので、マンガ的な画力はゼロである。模写をしてみようとして惨敗し、自由帳に透かしてなぞり書きするところからだった。

なぞり書き(物理トレス)でも、そう簡単に整った絵が描けるわけではなかった。想像してみてほしい、自由帳もマンガも冊子状で、借りた本を強く開くわけにもいかず、ゆえにページのなるべく端っこの絵を、自由帳の端っこに写し取るのである。何度も滑り落ちるしマンガが閉じる。


そうこうしながら苦労してなぞり書きを続け、まぁまぁ形になった絵が写し取れた時はけっこう嬉しかった。誰にも見せず、かなりうまいんじゃないか?とひとり調子に乗っていた。SNSに上げたりしなければ、トレスじゃんなんて言われないのだ。狭い世界で満足する経験も大切なんじゃないかと時たま思う。



なぞり書きに慣れてくると、模写でもなんとかキャラに見える絵を描けるようになってきた。目が慣れてくるので、頭から髪が浮いてしまったなとか、顔のパーツが輪郭と別の空間にいるなとかがわかるようになる。そのあたりで、自作のキャラの名前や設定を作り始めた。

かなり昔のことなので詳細に覚えていないし、おそらく黒歴史として抹殺したんだと思うが、なんせ読んだことのあるマンガが1種類なので、オマージュどころじゃなくほぼ丸パクリである。例えるなら替え歌レベルだ


それでも、7つの海を司る人魚たちの名前の付け方が好きで、7人がそれぞれ生きているような普段の生活や過去の設定が好きで、双子がいたり男勝りだったりドジっ子だったり冷静だったりといった、本当はよくあるはずのキャラ設定がぜんぶ魅力的で、なんとか自分のものにしようと頭と手を動かしていた。


最終的にキャラ設定が完了したのか、マンガとして描けたのかは記憶に残っていないが、特に名前の付け方にこだわって、きれいな響きと当て字をひたすら考えていたことだけはよく覚えている。




もう一点、このマンガを読んでから始めたこととして、印象に残ったセリフを単語帳に書き写すというのがある。

単語帳というのは、そうです、短冊形の白い紙がリングで100枚くらい綴じられていて、表に英単語、裏に日本語訳を書いたりして覚えるためのやつ。


あれもなぜか祖父に買い与えられて、使っていないものがあったのを思い出したので、その小さい紙にひとことずつ、ちまちまと書き写していった。



印象に残ったセリフ、だけのつもりだったが、クライマックスに向けてどんどん決めゼリフが多くなり、感動的なシーンが増え、しまいには歌部分まで書き写すはめになってしまった。


一番印象に残っているのは、1ページ丸々使った「守るものがあるから強くなる…!」で、たしかこれを見た時に、書き写して残すことを思い付いたんだったと記憶している。

残念ながらアルさんのコマ貼り付けに許可が出ていなかったので引用はできないが、今でもふわっとした構図は思い出せる。それくらいインパクトが強かった。

文字だけだと、大して名言的なことを言っている感じはしないのが残念だが、その前のシーンとつながることで意味があるので…興味があれば読んでみてほしい。





半分以上思い出を語ってしまったら3000字に到達したので、さすがに5つともこの記事で紹介するのは無理そうだ。

ということで、1つずつの紹介になる予定。


ご覧いただきありがとうございました。


5月27日、3000字、2時間

ご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートの使い道はまだ決めておりませんが、大事に使わせていただきます。おやつになるかもしれないしPhotoshopになるかもしれません…