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勝手に1日1推し 193日目 「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」

「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」パナソニック汐留美術館     芸術

フランク・ロイド・ライト。
アーツ・アンド・クラフツ運動関連で知ったのが出会いです。椅子や扉のガラスなど美しいなって。生活に溶けこむ芸術。
それって正にライトの建築姿勢そのものだったんですね。
代表作「落水荘」なんて、景観、建物をまるっとをひっくるめた彼の「有機的建築」という概念を誰の目にも分かり易く決定づけています。&依頼主エドガー・カウフマン氏の「滝があったらいいな(だっけ?)」と言うとんでもない要望(と言うより難題?)を実際に暮らす(生活する)人に寄り添う要素として取り入れ、現実のものとしたんですもん。本当に素敵です!本展示では歌川広重の浮世絵と共に(写真が)展示されておりましたが、なるほど!と膝を打ちました。
広重の回顧展を自ら開催するほど、広重(浮世絵)に入れ込んでいたんですね~。
ヨーロッパのジャポニズムブーム、リアリズムからの脱却の流れと同脈と言えるのかもしれません。
でもでも驚くのは、平面的で装飾的な浮世絵や日本美術を参考に、3次元の現実世界に取り入れたということです!決して親和性の高くない世界の融合。シビレル!
「ユニティ・テンプル」は、歌川豊国の「歌舞伎芝居之図」をまんま取り入れていて、衝撃!すげ!

建築に明るくないので、平面図を見てもその凄さをいまいち分かりきれないのが残念なのですが、透視図は芸術的でその緻密さ、美しさにマジでうっとりしちゃいました。鮮やかな彩色が施されれば、浮世絵と見紛うほど?!
ほんと浮世絵が好きなんだなあって思いますし、彼のスタイルを作り上げるにあたって、浮世絵の景観+建物の大胆なフィクション性が創造の源になったんだろうなっていうのが容易に想像出来ます。
自ら手掛けたデザイン本に描いた掛け軸サイズの植物の絵も美しかったです。

ちなみに、本展覧会の開催と同時に1週間限定で公開されていたケン・タダシ・オオシマ氏(ワシントン大学教授)による解説をyoutubeで見たのでここまで理解が深まったと言えると思っています。

そこで3章で扱われていた「進歩主義教育の環境をつくる」についても印象的でしたので、ここで解説と合わせ展示の感想をおひとつ・・・。

当時、教育を通じて、社会とより良い生活を実現しようっていう活動家たちの世界的な動きがあったようです。
更にライトの叔母がスクールを開いており、そこでの進歩的な自由教育について、教育の大切さについて実感しており、アクティブラーニングの実践による自由に学ぶ教育を普及させるべく、幼稚園やプレイハウスの設計に携わったようなんです。
子供たち自身が手掛ける芸術の中での演劇制作もその1つで、それ故の劇場計画があったということです。まあ、実際イギリスではコミュニケーション力アップのために演劇の授業がありますもんね~。
それに引き換え、21世紀にもなって日本の教育とは座学・・・と暗澹たる気持ちになったりしちゃったりしましたが。しょぼん。

という背景から、ライトは多忙極める中、明日館を請け負ったという訳です。自由学園の教授法に共鳴したんですね。

ここにも生活に寄り添う建築、人々と繋がる建築、有機的建築の神髄が生きておりますね。
解説聴いていなかったら絶対理解出来ていなかったと思ったので、記しました。

からの帝国ホテル!!本展はライト館100周年企画ですもんね!
3Dプリンタで全貌が再現してあったのですが、凄かった!研究室のみなさん、ありがとうございます。

「都市の中の都市」というコンセプトに「東京にもう一つの街を作る試み」として作られたそうです。
ライトにとって帝国ホテルは初めての国際的プロジェクトだったので、相当気合入っていたんでしょうね。
「有機的建築」の礎とも言える、素材の面から携わり、自ら選び、耐震性に欠ける石レンガからすだれレンガへ、鉄筋補強のあるスクラッチタイルを開発。しかもこのすだれレンガやタイルのおかげで関東大震災に耐えたっていうんだもん、凄すぎません?

家具やテーブルウェアなどの調度品から、照明などのインテリアまでディレクション、且つ、プロデュース、総合芸術として作り上げたんですね。展示室にて丁度品や模型に囲まれながら完成当時を想像するだけでよだれ案件。
正に開業せんとする日に震災とか、本当に言葉を失います。明治村に行きた過ぎる!!
それと、知らなかったけど、日本初のアーケードホテルだったらしいですよ。

後年は、初期の水平性を重んじたプレーリースタイルから、垂直性、高さに目を向けているのも面白いです。超高層ビルとか、いきなり未来的。
きっと時代に合わせて各地域が都市化したからですよね。
それでも自然を意識した作りで、建物内部に自然を感じさせることに挑み、自然光を取り入れ、人と自然の繋がりをあきらめていない。更には建築を自然と捉えるべく、新たな構造を考えるに至るなんて。
はぁ、その活力、半分、否、10分の1だけでも分けて下さいませんか、って言いたいです。
高層ビル内のオフィスは、「未来世紀ブラジル」や「オースティン・パワーズ」味があってYabai!かっこよ。「ラーキン・ビル」の事務机がかっこよすぎる!!!
デスクにしても椅子にしても、脚の部分の構造が凝っていて美しくて好きです。照明なんかも支えている軸の部分がいいんだよな。

結論、1つところに留まらない、常に次に進む姿勢、アップデートに次ぐアップデートで、その時代と生活する人々に寄り添う建築家だったことを知ることができる展覧会でした。
91歳で亡くなるまで「有機的建築」の在り方を模索し「都市の中の都市」を構想し、生涯現役だったんですね。
グッゲンハイム美術館の完成、見たかっただろうなあ。

アアルトが息子をタリアセン・ウェストで学ばせたがったお便り、笑っちゃった。建築家たちが集ってるの、いいなあって思います。
タリアセン・ウェスト、砂漠との景観の調和が気絶するほど美しいし、室内空間の自然光溢れる解放感に反比例するような複雑な作りが学びの場として活きている気がして、死ぬまでに訪れてみたい場所の一つとなりました!

まあ、まずは、近いところでライトを感じるべく、明日館に足を運ぼうって思います!数年前に行った時の写真、貼っときます。

2Fが喫茶室になっており、くつろぐことができます。
教育施設ではなくなったとしても(たまに近隣の小学生が来るらしいです)、人々のための建築に尽力したライトの想いに答え、様々に活用されていると考えると素敵だなあと思うんです。実際に椅子に座って、ゆったり照明や窓など隅々まで眺め、ライト建築の一部になる自分に浸ることができます!結婚式だって出来るんですよ!
模型やデッサンもあるし、家族を愛し大切に思うロイドの重視する「暖炉」も実際に目にすることができます。冬には実際に焚かれることもあるとか?!見てみたいですね。

喫茶室‐1
喫茶室‐2
暖炉

余談ですが、展示終盤に館が所蔵しているジョルジュ・ルオーの展示室がひっそりと存在していました。
しっかりライトにちなんだ作品を展示してありましたので、お知らせします。迫力ある版画作品も折角ですので是非に。

なお、本展、めちゃ混んでいます。土日は日時指定のご予約をお忘れなく。

ということで、推します。

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