エクストリーム7年生(18)

  第四章・暗夜 (3)

 12月中旬のある日、三土は学内の図書館で卒論を執筆していた。いつもなら哲学研究室に夜まで籠るところだが、今日は土曜日なので12時で閉室となった。そのため館内のPCを使っていたが、環境や道具の変化は三土の集中力を削いだ。本論での考察もそろそろ終わろうかという段階にきていたが、納得のゆく文章が書けず三土は懊悩していたのである。
 そうこうするうちに21時の閉館が近づき、やむなく三土はスポーツバッグにUSBメモリを入れて表に出た。閉門にはまだ時間があるが、学内で執筆ができないとあっては帰るほかない。卒論の提出期間は来週の月曜日から水曜日までだが、日曜日も使えば十分間に合うだろう。そんなことを考えながら寒風の吹くキャンパスを歩いていると──真後ろから何者かが足早に近づいてきた。三土が急いで振り返り身構えようとしたとき、相手の拳が両脇腹と鳩尾を的確に突いた。

「っ──!!」

 脇腹から来る吐き気と鳩尾の衝撃にともなう呼吸困難で、三土は声をあげることもできず腹を抱えてその場に崩れ落ちた。相手は距離を取って三土の正面に立ってしばらく様子を見ていたが、やがて声をかけた。

「落窪君……この日を待っていたよ」

   (続く)