エクストリーム7年生(23)

  第四章・暗夜 (8)

 見えない影に恐怖を覚えつつ、三土は走った。スポーツバッグの重さで、ヒビの入ったであろう肋骨のあたりがズキズキとした。しかしその痛みにかまっていられないほどに、三土は慌てていた。

 東門を抜けるとすぐに、大学の最寄り駅がある。夜も遅い時間ということで、人影はほとんどない。三土は入場するとすぐにコンコースの奥に位置取り、改札を見張った。誰も来ない。ほどなく電車到着のアナウンスが流れたので、後ろを気にしつつ階段を下りた。
 終点の多摩センター駅で降り、少し離れた場所にある小田急線に乗り換えるために再び走った。ひと気があるので尾行されているのかどうか分からず、引き続き油断はできなかった。そうして小田急多摩センター駅で多摩線に乗って五月台駅で降りたとき、他に改札を通る者はいなかった。ようやく三土はひと安心した。

 駅から歩いて20分ほどのアパートに着いたとき、三土は疲労困憊だった。連日の卒論執筆による寝不足、暮石から受けた怪我、そして全力疾走。部屋に入ろうと鍵を手にしたがこぼれ落ちてしまい、拾おうと身をかがめたときに意識が不意に遠くなった。

「あ……れ……?」

 ドアの前で、崩れ落ちた。夜中の静寂が、三土を包み込んだ。

   (続く)