第三章・舞台を止めるな (9)

　二階浪は、上手側の袖に隠れて様子を窺っていた。観客はいよいよ事態を把握しかねて呆気に取られていたが、それは彼も同じであった。しかしこの常軌を逸した状況にあって、二階浪が一つ確信したことがあった。
　エクストリーム7年生は、強い。

「兄貴ぃ？！」
「なんて奴だ！！」
　銃床から伝わる衝撃を肩で受け止めながら、二人組は撃ち続けた。相手が至近距離にいるので、9mmパラベラム弾は当たり続けている。それなのに、この正体不明の相手は少しずつ間合いを詰めていた。
「えっ！？」
「！！」
　二人組のサブマシンガンが、同時に弾切れを起こした。25発入っていた弾倉が空になったとき……エクストリームは目前に仁王立ちしていた。

「終わりだな」
「ひぃぃ……」
「ば、馬鹿な……！」
　信じられないのも無理はなかった。ほぼ全ての弾丸を受けていながらエクストリームは無傷、血も流れていなければ肉も飛んでいなかった。為すすべを失いへたり込む二人組に、エクストリームは静かに声をかけた。

「では、行くぞ」

　　　（続く）