エクストリーム7年生 (9)

  第三章・舞台を止めるな (6)

 二階浪の予想に反し、舞台は何事もなく進行した。観客の反応も良い。脚本担当として手応えを感じるとともに、原案を残した草石先輩にも思いをはせた。

 物語の中盤、ワンシーンの端役ではあるが二階浪は上手から登場し……事件はそこで起こった。

 サルの着ぐるみをまとった二人組が、銃器を携えて下手から登場した。明らかにおかしい。二階浪はウサギの着ぐるみの中で事態をつかみかねていた。本来は細い枝を持っているはずだぞ、しかも銃口などの仕様がモデルガンやトイガンとは明らかに異なり……つまるところ本物の9mm機関拳銃(サブマシンガン)ではないか!! 一部の観客は「どうぶつの里」に不釣り合いなオーバーテクノロジーの存在に笑いを見出していたが、演者としては洒落にならなかった。

「お……おサルさん??」

 二階浪は台本どおりのセリフを発したが、素で挙動不審になっていたのが観客の笑いを誘った。
「我々は秀央大学風紀委員会だ、こんな作品を上演するサークルは直ちに粛清してやる!」
「いやメタ発言いらないから!!」
 これはもちろん、二階浪のアドリブである。場面の空気を壊さないための精一杯の抵抗であったが、迫真ゆえ余計に笑いがおこった。
 銃口は二階浪に向けられている。しかし黙ったままでは舞台が破綻してしまう。「本番が始まったら我々は芝居に集中すればいい」という自分の言葉を思い出し、二階浪は台本どおりのセリフを発した。

「誰か……誰か助けて!!」

   (続く)