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どうしてお給料が上がらないんだろう

この冬、観光地で英語のアルバイトをしています。海外からのお客さんの対応をしたり、観光情報を英語で発信しています。

まさか日本の山奥に住んで、こんなに英語を使うことになるとは思ってもみませんでした。フランス語が生活の中心だったパリに比べ、日本に帰って来てからの方が断然、英語を使う機会が多くなりました。何がどこで役に立つか分からないものですね。

地方でも観光地には驚くほどたくさんの外国人が訪れます。しかし英語を話せる人は少ないのが現状です。英語を話せる人が求められています。いや、求められているのは英語を話せる人だけではありません。


宿泊施設も交通機関も飲食店も、人手不足です。観光客の数はコロナ以前の水準に戻って来ているようですが、とにかく、どこもかしこも人が足りず、縮小営業を余儀なくされているところがたくさんあります。お客さんは来ているのにもったいない。

しかしどうしてこんなに人が足りていないんでしょう。きっと賃金が安いからじゃないか、そう思って近隣の求人情報をみてみました。

予約でいっぱいの飲食店。人手が足りないため提供に時間がかかるので、あらかじめご了承くださいとのこと。とても流行っているとの噂を聞きます。だけどアルバイトの時給は1000円。研修中はそれ以下です。


バスの運転手の月給は17万円から。
凍結した山道を安全に走る技術と責任を求められる仕事なのにです。
長野県ではバスの運転手不足が深刻だといいます。廃線になったり、日曜日のバスが廃止になったり、バスの本数が少なくなっているとニュースになっていました。ニュースの中で関係者が「バスの運転手は労働環境が悪いというイメージがある。イメージを変えていきたい」と語っていたけれど、変えるべきなのは"イメージ"ではなくて給与や労働環境の実態でしょう。


たとえば宿泊施設も飲食店も交通機関も、時給を2000円にしたら、応募が殺到するんじゃないでしょうか?月給が50万円だったらどうだろう。
そんなの無理に決まってる、と思われるかもしれません。でもそう思う前に本当に無理なのか、どうして無理なのかを考えたいです。


ここにいると地元の経営者にたくさん会います。みんな口を揃えて大変だ大変だ、儲からない儲からないと言っています。インバウンドの経済効果がすごい、なんて聞くのに、その儲けは一体どこにいっているのでしょうか。経営者には、私には分からない苦労があるのでしょう。ですが私は低賃金で働く人たちの苦労の方に痛みを感じます。

世の中にもっとお金が循環する方法はないのでしょうか?

みんながお金を使うから利益が生まれるのに、そもそも使うお金がなければ停滞する一方です。
日本は貧しく感じます。でもこの国では超富裕層の人数が年々増えているそうです。
末端にもお金を行き渡らせることはできないのでしょうか?

この25年間、物価は上がるのに給料は上がっていないと聞きます。どうして給料が上がらないのでしょうか?


アルバイトの面接のとき、提示された時給が低いなと思いました。面接中にどうしようかなあと考えて、面接の終わる前に「あと100円あげてもらえないか?」と交渉しました。お金の話は難しいです。たった100円を要求するのに、勇気が必要でした。

賃上げを求めるためには、まずは自分の価値を自分で認めてあげなくてはいけません。謙遜が美徳とされる環境ではなかなか難しいことに感じます。


フランスでフォトアシスタントの仕事をしていたときは、報酬や残業代、交通手段と交通費、移動日の手当などを毎回、撮影の前に交渉していました。

アシスタントの仕事を始めたときに先輩から、自分の報酬は自分できちんと交渉することが大切だと教わったからです。自分の報酬に責任が持てない人はプロではない、それでは相手からもリスペクトされないと言われました。


フランスには交渉するのが当然という空気があったのだなと、今になって気がつきます。その”空気”に、私は励まされていたのです。


彼の地では自分の報酬の話をすることは当然のことで、そのせいで強欲だとか浅ましいとかケチだとか思われるようなことはありませんでした。その代わり遠慮したり謙遜すれば相手の都合の良いように扱われ、痛い目に合います。自分の権利をきちんと主張できる人が、人として尊敬されました。

それに、誰かが安い案件を受けることは、アシスタント全体の報酬を下げることに繋がっているのです。一人ひとりが報酬を上げようと交渉することで、みんなの報酬も上がっていく。個人事業主であるフォトアシスタント達の間には、そういう目には見えない連帯感がありました。


ところが日本に帰って来て日本人として日本で生活していると、100円要求するだけで、なんだか悪いことをしてるみたいに緊張してしまうのです。良くないことだなと思います。


どうして給料が上がらないのか、ネットでいろんな記事を読んでみました。だけど、どうもピンと来ません。私にはまだまだ知らないことがたくさんあります。

給料を上げるためには、社会の仕組みを変える必要があるでしょう。みんなでもっと話し合って問題意識を共有するのも良いかもしれません。


お金の交渉をするのはやましいことじゃない、当然のこと。自分の賃金や労働環境をより良くしたいと望むのは当たり前の権利。
せめて自分のことについては責任をもって主張できるようにしたいです。そうすることが少しづつ世の中に波及して、新しい空気になっていってほしいです。


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