短編小説「点描の唄」

ヒラノ研究者が舞台に立つ。
すると何か不思議に思ったのか、他の研究者に「皆さんはお腹空かないんですか?」と聞いた。しかしただざわめくか、早く始めろと言われるだけなので一息ついてモニターをつけた。

この国ではあるブームが巻き起こっていた。
それは人を点々にするのだ。
そうまるで点描で描いたかのように。
真弓と莉穂は高校生だ。
二人とも中学からの幼なじみでどんな時も一緒だった。
真弓は好奇心旺盛で自分も点になって見たかった。
1人で点になるのは嫌だから、親友の莉穂も誘ったという事だ。
二人は病院に着いた。
点にしてもらうには専門機関が必要なのだ。
真弓「先生!私達も、点になりたいんです!なれますか?」
医者はまじまじと二人を見る
しかし真弓の事は一目見たがすぐに莉穂の方に目が行ってしまった。
そう、真弓は点になれない人だったらしい。
点になるには向き不向きがあるのだ。
真弓は悲しかった。
この顔は生まれつきなのだからしょうがない。
莉穂だけでも点にしてあげよう。
先生は莉穂の方を向いて「莉穂さん。手術の準備が出来ましたよ。」と言われていた。
真弓は何故か帰らされた。
その時は何も変な事はなかった。
次の日、学校に行くとクラスの中心に人だかりが出来ていた。
行って見ると莉穂の形した点の塊だった。
莉穂は私を見て「おはよう」と点がたくさん揺れていた。
おそらく手を振っているのだろう。
そんな時、携帯に緊急ニュースを知らせるアラームがなった。
しかし目を通そうとした時、教室の中心から悲鳴が聞こえた。
ふと見ると莉穂形をした点が暴れていた。
すると手の形をした点が1人の女子生徒に触れるとその子は苦しみだしじわじわと点になってしまったのだ。
それを見た他のクラスメイト達は逃げるしかなかった。
真弓はトイレの個室に隠れる事にした。
そして、先ほどの緊急ニュースに目を通す。
その内容は『点になった人は副作用で点が暴走を始め他の人々を無差別に点にしていく。治し方は現在不明。』と言う事らしい。
読み終わった頃には少しの悲鳴が聞こえるだけで他は静かになっていた。
そっとトイレから出て廊下を歩いていると、後ろからクラスメイトの美月たちが走って来て「逃げて!」と言っていたので私も後を追い、逃げる事にした。
まだ4、5人残っている。
真弓のクラスは30人いたから結構の人が点になってしまったのだろう。
逃げてる時、少し後ろが気になり振り向いて見た。
真弓の見た光景は点になった人が追いかけて来ているのだが、点がちらちら動くので脳みそや内臓が微かに見えていたのだ。
真弓は気持ち悪くなり前を向いて走る事にした。
すると美月が転んだ。
真弓はその光景から目を離す事が出来なかった。
追いかけてた点は美月の頭の横を持ち押さえた。
すると美月は幸せと苦しみが混じった声で「もー。血を吸うの止めてよー。」と言っていた。
美月はどんどん点になっていく。
美月が好きだった音楽の楽譜だって点になっていった。
真弓は逃げなくてはと言う使命感に襲われ逃げた。
しかし、何故か不思議な事がある。
真弓は美月の後ろを走っていた。
なのに何故、真弓を最初に点にしなかったのか。
真弓は通りすがりに全体を写す鏡を見つけ自分と目を合わせようとしたが無理だった。
何故なら真弓はすでに点だったのだから。

ピッと言う無機質な音とともにモニターは止まる。
「これが私の研究です。真弓と言う女子生徒が研究の対象です。質問がある方はどうぞ。」とヒラノ博士が言うと、ある別の博士が手を上げて発言した。
「食事はどうするんです?血はないからと言って内臓はあるのだから食欲はあるでしょう?」と。
するとヒラノ博士はにっこりと微笑んで言った。
「だから最初に言ったでしょう。『皆さんはお腹は空かないんですか?』って。」


補足
こちらの作品は『点点点点』という作品名でpixivの方にも上げています。他の小説も気になった方は是非pixivの方に見に行って見てくださいね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?