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恐怖

 37.5度の熱が出た。
すでに陽性判定されている弟と同居しているので、私も感染したのだろう。
3年振りに家族の前で泣いた。
悔しくて悔しくて、怖くて腹が立って、もう感情が滅茶滅茶だ。
流行りだしてから1年半、私は常にリスクを考えて生きてきた。
怯えながら生きてきた。

 感染者数が過去最多となりました。
20代で基礎疾患を持たない方が重症化しました。
亡くなった方は〇名です。
すべて自分に関わることとして受け止めてきた。
コロナに限らず、私はそういう人間だ。
殺人、虐待、事故、それらの被害者が私の大切な人だったら。
私が呑気に送った1日の裏で、深い悲しみに襲われた人がいる。
そういうストレスに耐えられないので、ニュースはほとんど見なくなった。

 でもコロナウイルスに関しては、知らなければならない。
正確な情報を得て、判断し、行動しなければならない。
自分も周りの命も奪いかねないから。
そうして私は不要不急の外出を控え、県外への移動も外食も、今回で最後になるかもしれないオーケストラコンサートも、我慢してきた。
感染者が減ってもそうしていた。
こんなにも恐ろしいウイルスが蔓延している国で、命の危険を賭けてまで遊ぶ人々が理解できない。
注意して我慢して我慢した結果、無責任な弟から死のリスクを渡された。

 こんなことって。
恐怖と苛立ちでろくに眠れず、体重は減り、両足に黄色い痣のようなものが増えていった。
足をぶつけた記憶はない。
ネットで調べたところによると、体調不良やストレス等により、気付かない程度の負荷でも痣ができやすくなるらしい。
そうでしょう。ストレスまみれの生活をしていますから。
昨日は右足に1つ、今日は左足にも2つ増えていた。
どうしようもない。
このまま苦しむことになるのだろうか。
苦しんだ末、後遺症とともに生きていくことになるのだろうか。
もう大切な人々に会えなくなるのだろうか。
考えても仕方のないことだが、どうしても考えてしまう。
この恐怖から逃れるために、今までたくさんの我慢をしてきたのに。

 とりあえずは明日以降の様子次第だが、弟は高熱から回復したものの、咳と味覚嗅覚障害の症状が出ている。
私もそうなるのかなぁ。
生きていられたらいいな。
来月は大好きで大好きで、7年間応援してきたアニメの劇場版が公開される。
やっとのことで公開まで進んだ矢先、あまりに悲しくやるせないニュースも流れてきた。
あなたは彼・彼女らの創作にかける想いを、私たちよりもっと深く知っていたのでしょう?
行き場のない苛立ちと悲しみばかりが増えていく。

 どうか、無事でいられますように。

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