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【ゲーム感想】インフィニティストラッシュ ドラゴンクエスト ダイの大冒険を令和アニメ版から入ったにわかファンがプレイした感想

タイトル長くないすか?

それはそれとして、インフィニティストラッシュ。レビュー見る限りかなり大荒れというか、低評価なゲームのようですが。中古で比較的安く手に入ったんでプレーしてみました。アニメから入ったとはいえ、ファンとしてはやっぱりこのゲームはやってみたかった。

さて。で、実際にやってみたところ。

言うほど悪くない。

……という感情と。

もうちょっと何とかならなかったのか!?

という感想を抱きました。

これは一通りプレイした感想になります。
当然ながら作品のネタバレを含みますので、ご注意ください。

1.言うほど悪くないところ

クリアまで一通りプレイして思った。インフィニティストラッシュ(長いので以下インスト)は、言うほどゲームとしては悪くなかった。
インストはアクションゲームです。で、アクションゲームとしていちばん大事なのが操作感だと私は思っています。細々とした改善点は無くもないんですが、インストはアクションゲームとしては及第点なんじゃないかな、と。
動きはスムーズだし、キャラのグラフィックやモーションも良い。難易度はアクションが苦手な人にはやや難しく感じそうだが、難易度が低いモードもある。感触としては『操作がライトなダークソウル』のような感じかもしれない。
好きなキャラを動かせる、という点においては割と良いゲーム、かも。

2.もうちょっと何とかならなかったのか!?

ハイ褒めるとこ終わり。申し訳ないが良い評価は上記だけです。無理に上げるなら声優とかの演技が良いとかはあるけど、それすらもある事情があって評価しがたいところです。

と、いうのも。

このゲームの良くないところ。

アニメ版からの流用があまりに多い。

本編ストーリーは流用です。しかもこの流用、シナリオの流用ではありません。シーンの流用です。
どういうことかというと。
アニメ版から引っ張ってきたカットをそのまま静止画として使っている。
ゲーム独自の3DCGモデルを使ったムービーシーンもありますが、シナリオの9割ぐらいはアニメの静止画です。そして、恐らく音声もアニメ版そのまま(これは聴き比べて検証していないので断言はできませんが……)です。音楽についても、ゲーム用に新録した可能性はありますが、曲自体はだいたいアニメ版にあったものです。
これがどういうことか、というと。
このゲームのオリジナリティというか独自のものは、アクションゲームの部分のみと言って過言ではなく、後はアニメ版の劣化移植なのです。
間違いなく、低評価の大部分はここが原因です。

そもそもこのインスト、アニメ版の最終話が放送されてからおよそ1年後に発売されたゲームです。そして、この手のゲームはどちらかというと、原作なりアニメ版なりを知っている人がプレイする、いわばファンに向けたゲームになるはずです。
もっと言ってしまえば、時期的にこのゲームプレイしてる人のうち、結構な割合が令和アニメ版は視聴済みなんですよ、たぶん。
その層に向けて、一度見たものの切り抜き集を提供するというのは、評価を落とすのもやむを得ない行為だと思います。
恐らくですが、原作の絵を使った静止画+音声をアニメ放映前にやっていればまだ評価はここまで下がらなかったと思います。
しかし、出てきたのはアニメ版のパッチワークです。
しかも、さらに悪いことに、容量の都合か納期の問題か、いくつかのシーンはナレーションで済まされてしまっています。
特に驚かされたのが物語の最序盤で、ヒロインであるレオナ姫と出会って、彼女を窮地から救うため秘められた力である竜の騎士の力を使ったところ。ここが丸々ナレーションで終わってしまいました。アクションゲームであるにもかかわらず、このあたりの戦闘シーンは一切ナシです。
ニセ勇者一行、おおさそり、キラーマシーンとゲームの中では戦えません。

(かと思うと、次の章はかなり戦闘が詰め込まれています。恐らくですが、戦闘の操作キャラとして作られているダイは術技を習得した(アバン流を使える)ダイのみで、何の技も無いダイで戦うことをそもそも考えていなかったのでしょう)

ファンの中には、細かい描写、何気ないセリフでも「これが好きだ!」という人もいるはずです。特に、最序盤のダイとレオナの出会いからのくだりは、竜の騎士の力に目覚める描写も含めてナレ終わりで済ませるべきではなかったと思います。

ちなみに、たまにアニメ版のあまり作画の良くないシーンを引っ張ってきたりもしています。作画が悪いというより、本来引きで映すシーンをアップにするせいで作画が悪く見えてしまうという事態になっています。ゲーム側で用意した3DCGを動かしていれば(全く同じ構図でも)そうはならないと思うので、正直シーン選択が下手というか、手抜きというか……どうしても(アニメ側でなくゲーム側の制作陣に)雑な仕事感が出ているな、と感じてしまいました。

さて、つまりはアニメ版流用に問題点の大半があるのですが、それだけでこここまでレビューの評価が荒れるのか?とも私は思っていました。
ただ、クリアまでプレイしてて、この不評を拭えなかった理由の一つに思い至りました。
ファンサができていない。
恐らく初見ではなく、たとえにわかでもファンに向けたゲームだろうインストというゲーム。ファンの期待に答えられたのは、戦闘シーンのみです
繰り返しますが、グラフィックやモーションの出来はよく、アクションの操作感も良かった。必殺技のカットイン、声優の演技もあって戦闘はダイナミックな面白さがあります。
一方で、他の部分においてはおおよそ何もファンに向けたサービスができなかった。ここが、不評を打ち消せなかった最大の失敗だと思います。
と、いうのも。
このゲーム、本筋しか存在しないんですね。
言い換えれば、サブイベントがない。
更に言うと、原作漫画やアニメ版から情報量が一切増えない。
このゲーム独自のシーンというのがほぼ無いに等しいんですね。
現場の事情を知らないので、あまり作業工程にごちゃごちゃと口出しはしたくないのですが……そもそも映像(画像)や音声の大部分をアニメ版から流用しているのであれば、作業にかかるコストはかなり浮いてるはずなんじゃないかと思うんですよ。あくまで想像ですが。
で、あるならば。現場で仕事量が多いのがアクションゲーム担当の班であるならば、シナリオ担当はもっと動けたんじゃないかと思うんですよね。
もちろん、ダイ大には原作の漫画があります。シナリオについて、ある程度の制限はあるとは思います。ただ、ゲームをプレイしたダイ大にわかファンとしては何か事情があったとしても、制作側に忖度して「しょうがない」とは言えないんですよ。版権の交渉でも何でもやればよかったんですよ。
(そもそもスマホアプリ版『魂の絆』は、ほとんど独自のシナリオやシーンで構成されていたそうで……未プレイなので深くは言及しませんが)
一個人として、忖度無く言うとですよ。
シナリオ班は(存在するなら)仕事をしてくれ。
何かちょっとでも、今までに無いシーンを見せてくれよ。
これに尽きるんですよ。

このゲーム、そもそも記憶をテーマにした(といってもそれが必要性のあるテーマだったのかも微妙ですが)ゲームなんですよ。
ゲームの出だしは、ダイが父親であるバランに記憶を消されるシーンから始まるんです。失われた記憶を取り戻す、だから物語の最初から、ダイの視点で追体験としてゲームをプレイする。
そういう、記憶がテーマのゲームなら、他キャラの記憶を見せてくれたっていいじゃないですか。
サブイベントでいいから、それぞれの過去をちょっとでも見せてくれたら、それだけで評価はもうちょっと持ち直したはずなんですよ。
作中で別行動していたシーンとかあるじゃないですか。
修行に出たマァムとか。鬼岩城を追ったクロコダインとヒュンケルとか。
記憶にこだわるなら、キャラの過去編でもいいんですよ。
アバンに師事してる頃のマァムやポップだとか。
ミストバーンに拾われた後のヒュンケルだとか。
バランに拾われた後のラーハルトだとか。
ロン・ベルクがまだ剣を振り回してた頃のことだとか。
ほんっとうになんぼでもあると思うんですよ。
今連載中のダイの大冒険外伝作品『勇者アバンと獄炎の魔王』との兼ね合いはもちろんあると思いますが。
見たいけど、公式に出てないシーンって山のようにあると思うんですよ。
本筋をアニメ版から流用するなら、せめて別のところでシナリオに力を入れてほしかった。はっきり言って、シナリオ班はほとんど仕事をしていないんですよ、このゲーム。

3.細々としたツッコミどころ

良いところと悪いところをここまでそれぞれ言ってきましたが、他にもちょっとツッコミどころがあって。本当に細かいところなんですけどね?

3-1.記憶というコンセプト
インストのコンセプトとしてあるのが、ダイの記憶をたどる、というもの。
言い換えれば、ゲームのシナリオはダイの視点から見たものになるはずなんですよ。
が、そうはなっていない。
アニメ版のシーンを流用したからでしょうかね。
ダイが見てないシーンもゲームのシナリオに組み込まれている。
このゲームのシナリオシーンって、基本セピア調というか、いかにも記憶の中のことですよ、みたいな加工が施されているんですが。
ダイがいないシーンでも回想っぽい扱いになっている。
(あと、ダイが記憶を取り戻した後もそういう加工は残っている)
プレイしてて「これ途中まで記憶の設定とかナシで制作が進行していたのでは……?」という疑惑すら頭をよぎりました。
取り戻した記憶が力になる(ゲーム的には入手した記憶を装備できる)というコンセプト自体は良かったと思います。ただ、記憶を取り戻すというコンセプトはこの絆の記憶システム以外ではあまり生かされていないように思えます。何故そう思うのかというと、ゲームの終点が記憶を取り戻した地点ではなく、そこから更に先の鬼岩城打倒までになっているから。
悪くは無いんですが、コンセプトって何よ?という感じもあり……。

3-2.シーンの切り替え
ムービーシーン(静止画)と戦闘シーンの切り替えが、あまり上手くいっていないように思えます。シーンのつなぎかたそのものもそうなんですけど、もう一つ、ものすごく気になることがあって。
ムービーシーンで出たセリフを、そのまま戦闘シーンでも繰り返しキャラが喋る。本当に、全く同じセリフを前後のシーンで繰り返すんですよ。これがともかくプレイ中に気になってしょうがなかった。
いや、もうそのセリフは聞いたんよ。
そんなことをわりと思いながら、戦闘やってました。
で、それに付随する話というか。
このゲーム、ボイスの新録ってもしかして少なくね?
これは細かく検証してないんであくまでも疑惑でしかないんですが。
例えば。ボス敵のHPを一定数減らしても、イベントシーンで既に出たセリフを繰り返すんですよね。このボイスが流用なら、戦闘中のボイスも大部分が流用なのでは?という気がしてなりません。

3-3.敵が多いな
そのまんまです。一度に出る敵が多い。これ単体は悪くないんですが、カメラを初期設定にしたままだと画面外にあぶれた敵からしょっちゅう攻撃されるんですよね。あと、カメラ固定(ロックオン機能)はボス敵にのみ設定されてるようで、雑魚敵のロックオンができないというのも難点。
アクション部分はこのゲームの良点ですが、しかし全く不満点が無いわけでもないな、というところ。これは個人の好みの範囲内かな。

3-4.操作キャラクター
重ね重ね言いますが、アクションは良質なゲームです。
だからこそ、操作可能キャラが実質四人というのが悲しい
(実質、というのは四人のうち二人に職業による差分、バージョン違いが存在するため)
操作可能なキャラは主人公のダイとその仲間、ポップ、マァム、ヒュンケルのみ。戦闘するシーンが原作で少ないレオナはしょうがないとしても、クロコダインあたりは操作させてほしかったな、というところ。敵の数が多いからこそタンク役のクロコダインは輝くと思うんですけどね。その役回りは、のけぞり無効と敵注目集中を持ったヒュンケルに持たされました。
ワニのおっさんの役回りがヒュンケルと被ってるとか言うんじゃない。
他に操作したいキャラといえばラーハルトあたりでしょうか。ニセ勇者一行とかバダックとかチウとかもいいキャラなんですが、操作キャラレベルで強いとなると……アクションゲームで動かしてて楽しい、というのに絞るとやっぱり操作キャラは増やしにくいのかもしれませんね。

3-5.メドローア
制作スタッフはポップがメドローア習得するくだりを百回見ろ。
目玉の必殺技だからって雑に習得さしてんじゃねえ。

4.総評

惜しい。
としか言いようがない。いくらでも顧客満足度を上げる要因はあったと思うんですが、恐らくウリをアクション部分にだけ求めたのが問題だったんでしょう。シナリオに力を入れられなかったとも言い変えられます。
そして、そのウリのアクションゲームとしての部分。
このゲームは2023年9月発売ですが、同年にはゼルダの伝説ティアーズ オブ ザ キングダムが、前年にはGOTYを受賞したELDEN RINGが発売されています。アクションゲームとしてこれに太刀打ちするのはかなり厳しい。
本当に、良いところは『ダイ大のキャラ四人を使って戦える』ところにしかなく、その良さだけでは不満点を拭いきれなかったという感じです。


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