恋人はカフェテリア②(さみしさだってご愛嬌)
カフェでの居心地のよさを決定する一つの要因として人、があります。
ひとつの空間に、最大で三種類の人間が集まり、カフェという場所は成り立っているのです。
店員さん。
そこに集まるお客さん。
それから――私。
運命のいたずらに翻弄され、見知らぬ人間どうしがはじめて言葉を交わす。
かと思えばすぐ隣で、おのおの別の過ごしかたを楽しんでいる。
カフェ内の居心地の良さとは、刻々と変化していく生き物のように思えます。
いつからか一人でカフェを訪れるときは、きまって、じっくり人を眺めるようになりました。
もちろん友人と席をともにする場合、相手のおしゃべりをただひたすら聞く、というのが私の通常営業ではあるのですが。
カフェの空気を楽しむには、人間観察は醍醐味のひとつであると思っています。
先日行ったカフェの店員さんは、接客のときに笑顔が出ないタイプでした。
たばこは吸わないです、という旨を伝えると、カウンターではなく奥の部屋へと案内されました。
どうやら、カウンターの近くでは喫煙がゆるされるようですね。
でも、困りました。
席が空きすぎていて、どこに座ってよいのか全く分からなかったのです。
しかし彼女はそそくさと部屋から出て行ってしまい、私は砂漠の中ひとり、ぽつんと取り残された気分になりました。
仕方なく、少し戸惑いながら自分で席を選び座ります。
注文を取りにきた時も、心なしか伏し目がちな彼女。
そんな時、どうしたんだろう?と想像をめぐらさずにはいられません。
注文を終えると、また逃げるように踵をかえし、カウンターの奥へと消えていきます。
あらら、私があまりにもじ~っと見るので、変な人だと思ったんでしょうか。
それとも、『ダージリンティーと本日のケーキ』という注文内容と私の人相があまりにもかけ離れていたので、笑いがこらえ切れなかったとか。
一通り考えたあと、私はおもむろに紅茶をポットからつぎ、深呼吸をし、今度は感覚の海へと身体をゆだねることにしました。
目を閉じて、カップからこぼれるあたたかな香りを鼻孔の奥へと吸い込みながら。
すると意外や意外、耳から入ってくるのは、店員さんたちの陽気な笑い声でした。
もちろん、接客してくださった店員さんのものも。
どうやら、すくなくとも私は変な人では無かったようですね。
ホッと胸をなで下ろしたのも束の間、なんだかさみしくなってきました。
部屋の外からもれてくる声の体温。
反対にこっちの部屋は薄暗く、何故か私のところにだけスポットライトが当たったようになっていて、非常に恥ずかしかったですよ(笑)。
帰りぎわ、接客をしてくれた店員さんが、真剣な眼差しで先輩から伝票の整理の仕方を学んでいました。
やっと謎が解けました。
彼女、新人さんだったのですね。
春――新生活。
ときに初々しさとぎこちなさが、さみしさを産みだすこともある。
そういうカフェでの一幕も、タイミングによってはご愛嬌なのかもしれませんね。
私はいま全国でヒーリングの旅をしようと、画策しています。もしも、サポートいただけたら、それは旅の資金にしようとしていますので、私の作品に少しでも感銘を受けてくださいましたら、ぜひ、サポートよろしくお願いします。旅のレポートが書けるのを楽しみにしています。今からワクワクです☆☆☆