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時代を越えてブランドの価値を守る難しさ

なんぼー:あれ? 東谷さんいつも着てたお気に入りのジャケット変えたんですか?

東谷:ああ、アレ、あまりにも流行りすぎてさ〜。みんな着出しちゃったからやめちゃった。

なんぼー:そういうのありますよね。

東谷:人間って難しいよね。誰も評価してないと不安になるのにさ、みんなが評価しだすと、嫌になっちゃうんだもん。

なんぼー:今は本当に「誰が認めるか?」の時代ですよね。

東谷:誰が認めるか、かあ。みんなが認めていることが可視化されやすくなったからこそかもね。

なんぼー:そうなんですよ。以前は、例えばグルメで言えば、Googleマップや食べログでレビューが沢山ついていて、高い点数が付けられているのが価値でしたけど。

東谷:それはもう、当たり前になりすぎちゃったよね。

なんぼー:それによって現代病というべきか、東谷さんの言う通り「第三者と同意見じゃないと不安」という気持ちも生まれましたよね。

東谷:どういうこと?

なんぼー:例えば、映画を見て「面白い」と思ったんだけど、感想をSNSで書いたり友だちにシェアする前に、他の人の感想を見ちゃう。それで「面白い」と評価されているのを見てやっと、安心して「面白い」とレビューに書けるというか。

東谷:わかるなー!本当は自分が「面白い」と思ったらそれでいいのにね。答え合わせしてるわ。

なんぼー:僕もです。今は、それに加えて「誰に認められるか」もチェックするようになっている気がして。

東谷:それが、みんなが認めていたら嫌ってこと?

なんぼー:そうですね。自分が “イケてない” とか “自分とは違う” と思っている人も含めて、不特定多数が認めていると逆にダサく見えてしまう。

東谷:それはあるね。

なんぼー:それに加えて、「この人が認めているから欲しい」っていうのもある気がして。「あの人と同じモノが着たい」「あの人と同じ店に行きたい」みたいな。

東谷:なるほど。モノも大事だけど、誰に認められるかがとても大事な時代ってことか。

なんぼー:そのとおりです。その影響もあってか、最近はファッションショーもセレブがめちゃくちゃ来るようになっていますよね。それをメディアも取り上げるし。

東谷:あー、そうすると、ここ数年インフルエンサーマーケティングが流行っていたけど、フォロワー数だけ見て依頼するだけじゃダメになっていくってことだね。

なんぼー:そのとおりです。「この人に着てほしくなかった」「この人にアンバサダーになってほしくなかった」「この人がコメントするのは嫌だ」という内容で炎上したこともありますよ。

東谷:へー!恐ろしい時代だね!

なんぼー:認知を間違った方向に広げないことも大事になっていますよね。認知を広げるにしても「誰が広めるのか」、ブランドとの親和性が大事になってきていると思います。

東谷:誰が認めているか大事なブランドといえばさ、「iitala」がこの間リニューアルしたのショックだったな。あれこそ、知る人ぞ知るというか、本当にブランドを大切にしている人が使っているブランドだったからさ。

なんぼー:アレは衝撃的でしたね。商品のイメージもガラッと変わって、ロゴも変わって、インスタグラムの投稿も消しちゃって。

東谷:新しいブランドの雰囲気は、これまでと全く違うから、ブランドのアイデンティティの継承も感じられないし。びっくりしたよ。

なんぼー:iittalaは、ただのブランドでもなく、フィンランドの人のソウルになっているようなブランドでもありますしね。

東谷:フィンランドの人はより一層ショックを受けているだろうね。あのシンプルなデザインとロゴ、派手さは無いけれど、洗練されていて、上品で素晴らしかったのに。

なんぼー:ただ、難しいのが、シンプルでタイムレスな魅力のあるデザインだからこそ、模倣されやすいところなんですよね。東谷さんがおっしゃるとおり、ブランドを愛している人でないとIKEAの商品でいいや、と思っちゃう。

東谷:それもそうだよね。同じ北欧のブランドで、Marimekkoがあるけど、あれは代替不可というか。個性的だからね。iittalaは、洗練されていて、王道で、そこが素晴らしいし、似たような商品がある中でiittalaを選ぶ人も好ましくて大好きなブランドなんだけど、でも……。

なんぼー:生き残っていく上では変革が必要だったんだと思います。

東谷:そのとおりだ。

なんぼー:ノスタルジックな思いとともに沈んでいくのか、大きく変革して生き残るのか、きっとブランド側も苦渋の決断だったと思います。

東谷: 誰もが飛びつくようなキャッチーさで不特定多数に評価されてもブランド毀損につながるし、特定の人だけがスローペースで大事にしてくれていても、生き残っていくのは難しい。ブランドを保ちながら、生きていくことの難しさよ!

なんぼー:ずっとイケてるブランドなんて、ほぼ無いですからね。時代の流れとともに、伝統の継承と革新を大事にしながら、生き残る努力が求められますよね。だからこそ、ずっと愛されるブランドは素晴らしい。

東谷:そのとおりだ。長年生き延びているブランドのアイテム、大事にしようと思ったよ!


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