飢える大陸 アフリカ ロジャー・サロー、スコット・キルマン著
人生には何冊か、忘れられない本というものがある。運命的な出会いともいえるのだろうか。本書はまさにその一冊になる予感がする。
題名の通り、アフリカの飢餓に関する本である。世界の飢餓人口は減少するどころか、年々増え続けている。2018年時点で8億2100万人が食糧を得られない状態にいるのだ。
おかしくないか。
僕が住む日本のような先進国では、科学技術は進歩し続け、飢餓に苦しむ人は見たことがない。むしろ肥満を心配する声をよく聞く。他の先進国でもそうだ。
世界は大戦を経て科学技術が目まぐるしく発達し、ますます人にとって住みよい場所になっている、とそう思い込んでいた。
全くもって違っていた。
なぜこんなに差があるのか。なぜ、十分過ぎるほど贅沢な暮らしをしながらさらなる豊かさを求める国がある一方で、人間が生きる最低条件である食糧の確保すらできない国があるのか。
何もアフリカでは全く食糧を生産できないというわけではない。エチオピアでは1980年代からの10年ほどで穀物の生産量は倍増しているし、倉庫には山ほど余剰作物が積まれている。
ではなぜ?
筆者によればこれは人災である。
ひとつに私たちが先進国が良かれと思って送っている大量の食糧支援、これが害になっているという。もちろん食糧支援によって助かった命は数え切れない。しかしこれらは穀物の価格を大幅に下落させる。その結果、農家は作れば作るほど赤字になる。よって作付けを減らす。そこに干ばつがやってきて大飢饉をもたらす。そしてまた食糧支援に頼る、という悪循環に陥っているのだ。
原因はこれだけではないが、要はアフリカに自立した農業のシステムを作らせないような支援になってしまっているということだ。それは先進国に利益が出るようになっている、欺瞞に満ちた「支援」である。
もちろんアフリカ内部にも責任は多々ある。各地で頻発する紛争を終わらせないといけないし、インフラや農業に対する補助金などの整備も必要だ。
しかし、アフリカがそれに取り組む以前に先進国が足を引っ張っていてはいけない。アフリカへの支援はアフリカファーストでなければならない。
南アフリカ元大統領のネルソン・マンデラの夫人だったグラサ・マシェルの言葉がある。
「子供達に食糧を与えない限り、国がより高い目標を掲げることはできない。子供に食糧を与えないほど恥ずかしいことはない」
先進国の人間はこの状況を変える支援をしなければならない。そして私はその1人だ。
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