見出し画像

Z世代が聴く名盤 #20 YELLOW MAGIC ORCHESTRA「SOLID STATE SURVIVOR」

ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。

そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。

筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。


作品情報

イエロー・マジック・オーケストラ、2枚目のオリジナルアルバム。まだLPが主流だった時代に日本でミリオンセラーを叩き出した数少ない名盤の一つとしても知られている。

前置き

YMOは中学生から高校生の頃にかけてよく聴いていた。あの頃は確か今以上に色んな物に興味を持っていて、そんな中で「テレビのBGMでたまにかかるあの典型的な80年代の音楽はなんだろう?」と思って調べた末に「RYDEEN」にたどり着いたのがYMOとの出会いだったと記憶している。

気が付けばいつの間にか自分はYMOの虜になっていて、YouTubeに上がった音源を漁っては聴き倒し、サブスクを手に入れてからはそっちで聴き倒し、CDをスマホに取り込む時代錯誤な技術を手に入れてからは既に滅びかかっていたTSUTAYAに足繁く通ってはCDを借りてスマホに入れて聴き倒していた。今思えば、感受性豊かで今より受け入れられないものが少なかったあの頃にYMO(だけでなくビートルズやミスチル、スピッツ、ORIGINAL LOVEなども)のような多彩な音楽に出会えたのは幸運なことだったと思う。

今作はそんな中高生時代の思い出の象徴たるYMOで最初に聴いたアルバムであり、思い入れはこれまで取り上げてきた大部分の作品の比ではない。正直公平な評価は不可能である。いつもの評価の仕方がそもそも不公平とも言う
そういうわけで今回はいつも以上に私情丸出しの感想を書いていく。

感想

今作はシンセサイザーをふんだんに使ったインスト主体の作品で、ボーカルが入っているのは後半4曲だけ。さらに機械を通さず生の声をまんま使ったのは「DAY TRIPPER」「SOLID STATE SURVIVOR」の2曲のみに絞られる。「曲」のことを「歌」と表現する程ボーカルを重視する文化が根付いている日本で、歌が前に出ていないアルバムで天下を取ったというのがもう凄い。

そして今作で全面起用されているシンセサイザーのサウンドは昭和どころか平成も過ぎ去ってしまった今聴き直すとちょっと時代を感じるところがあるものの、テクノポップという一ジャンルの要となったその煌びやかな音色はそれまでの杏里や山下達郎をはじめとするシティポップとは一線を画すもので、80年代という一つの時代を象徴していると思う。

基本的にアルバムは順番に聴かない主義の自分だが、このシリーズを書くにあたって久々に今作をちゃんと曲順通りに聴いてみたら最初の3曲がいつもより輝いて聴こえた。ぶっちゃけ聴きすぎて飽きてたところもあったのに、聴く順番を変えるだけでまだまだ魅力が感じられる。他の作品にも言える事だけど曲順も評価に値する立派な要素の一つであり、一般的なプレイリストとはまた思慮の深さが違う(たぶん)ことが分かる。

そして何よりも今作はメロディが良い曲が多い。っていうか捨て曲がない。代表曲「RYDEEN」やマイケル・ジャクソン、エリック・クラプトンなどの錚々たるメンツにカバーされてきた「BEHIND THE MASK」、ビートルズのカバー(ほぼ原形ないけど)「DAY TRIPPER」あたりは言うまでもないけど、残る5曲も「RYDEEN」と双璧をなす「TECHNOPOLIS」だったり沖縄音楽に接近した「ABSOLUTE EGO DANCE」「INSOMNIA」だったりテクノポップ色が薄く今作の中では異色の「CASTALIA」だったりと、各楽曲にそれぞれキャラクターがあって飽きさせない。これまでも何回か思い入れがある作品を取り上げてはいたものの、結局『一番「…」な曲』欄には何かしら印象が落ちる曲を選んで入れていたのだが、今回ばかりはどの曲も選べなかった

今年に入ってから高橋幸宏氏と坂本龍一氏が立て続けに亡くなってしまい、3人が揃った姿を拝むことはもう出来ない。無念だ。せめて残る細野晴臣氏にはありえないくらい長生きしてもらいたい。

一番好きな曲:BEHIND THE MASK
一番「…」な曲:特になし

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?