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Z世代が聴く名盤 #25 フリッパーズ・ギター「ヘッド博士の世界塔 Doctor Head's World Tower」

ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。

そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。

筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。


作品情報

フリッパーズ・ギター、3枚目のオリジナルアルバム。本作を最後にバンドは解散したため、ラストアルバムでもある。
また、前2作は再発及びサブスク解禁が済んでいるが今作はいずれもされていない。本作の収録曲には無許可でサンプリングが行われたものが多数収録されており、権利関係の処理が困難なことが有力な説とみられている。

前置き

このバンドは小沢健二にハマっていた頃、彼がかつて所属していた渋谷系のバンドという触れ込みで知った。もう一人のメンバー・小山田圭吾もYMOのライブでサポートとしてギターを弾いてたので名前は知ってたし、YouTubeのコメント欄で例のいじめ問題に言及したアンチコメが出る動画出る動画に書いてあったので、ギターのプレイがそんなに好みじゃなかったのもあってパラリンピックで問題が再浮上する前から印象は良くなかった笑

シングルになったポップな「グルーヴ・チューブ」が気に入ったので近所のTSUTAYAがレンタル事業を畳む際に投げ売られていた今作を中古でゲットし聴いてみたはいいが最初の「ドルフィン・ソング」がタルいバラードだったので一瞬で熱が冷め、その後聴くようになったのは「グルーヴ・チューブ」と評判の高さに流されて聴き始めた「世界塔よ永遠に」だけでそれ以外の曲はそもそも聴いてもいない

前々回の「勝手にランキング」でやりたいことはやり尽くし、前回の「What's Going On」で原点回帰してみたはいいものの次に取り上げる邦楽の名盤が思い浮かばず、適当にスマホ内に入れているアーティストを流し見していたら今作がCDからスマホに取り込んだっきりそのままなのを発見して今回晴れて記事に取り上げられる事になったという訳である。特に3曲目の「アクアマリン」からラスト手前の「星の彼方へ」は全曲初めて聴くことになるのだが、果たして…

感想

「グルーヴ・チューブ」「世界塔よ永遠に」の曲調からして何となく予想はついていたのだが、全体的にどこかサイケっぽい空気が漂っているサブカル全開な一作。「ぼくらが旅に出る理由」「ラブリー」みたいなあからさまにポップな曲は皆無で、そういうのを求めている人はお断りとでも言うように何だかよく分からんけどなんか凄い感じのするインテリチックな曲が並ぶ。

小沢健二はのちにシンガーソングライターとして大成したことからてっきりこちらでもボーカルを担当しているものと思ってしまうが当時はコーラスに専念していたようで、このバンドにおいては相方の小山田圭吾が全編通してボーカルを担当している。この歌声が非常に不安定で、初めて彼らの楽曲を聴いた時はボーカルのあまりの拙さにずっこけたのを覚えているし、改めて聴き返してもやっぱり気になる。

無許可サンプリングについては原曲を知らないのでどの曲のどの部分で何の曲が使われているのかさっぱりだったが、特に「スリープ・マシーン」や「世界塔よ永遠に」で顕著なように原曲をザックリ切り取って大胆に使っているパターンが多いようで何かしらをサンプリングしているという事だけはちゃんと伝わってくるため文化的な作品だなという印象は原曲の知識の有無にかかわらず残ると思う。

フリッパーズ・ギターはこれまで爽やかなギターポップ、いわゆる渋谷系のサウンドで人気を博していたが今作でその路線をほぼ捨て去り、最終的には今作をひっさげたライブを途中で放棄して解散してしまった。解散後、小沢健二はシンガーソングライターとして、小山田圭吾はCorneliusというソロのユニットを結成してそれぞれ活躍しはじめたのは周知の事実だが、小沢健二はアルバムごとに作風をコロコロ変えるようになり、結局再び今作のようなサウンドを展開することはなかった。コーネリアスは聴いたことがないのでもしかしたらそっちで展開してたのかもしれないけど、コーネリアスの曲に今作との類似性を指摘しているようなレビューは見たことがないし、今作にオンリーワンの魅力があったのは確かだと思う。個人的にも名盤!とまでは思わなかったけど「アクアマリン」「ゴーイング・ゼロ」など独特のクセがあってハマってしまう曲が多数あって、良い作品には違いないと思った。

一番好きな曲:世界塔よ永遠に
一番「…」な曲:ウィニー・ザ・プー・マグカップ・コレクション

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