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Z世代が聴く名盤 #7 inu「メシ喰うな!」

ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。

そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。

筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。


作品情報

日本のパンクロックバンド・inuのメジャーデビューアルバム。今作を最後に解散したので現役時代最初で最後のアルバムであり、解散後に出たセカンドアルバムはライブアルバムなので唯一のスタジオ録音作品でもある。

前置き

今作の存在は長いこと知らなかった。見た感じ最近になって取り上げられるようになったという訳でもなさそうだし、前々から名盤として扱われてきたものと思われるが、割とその手の名盤ガイドを調べるのが好きだったはずの自分は今作が取り上げられているところを一切見かけず、最近になって今作の存在を知った。なので自分にとって本作は目の前に急に現れたはずなのになぜか界隈の人達は聴いたことがあって、しかも皆こぞって絶賛している…という不気味な立ち位置の作品となっている。

また、ミドリカワ書房というシンガーソングライターが「メシ喰えよ!」なる明らかに今作を意識したであろうタイトルの曲を発表しており(曲調は今作とは似ても似つかないスローバラード)そちらを先に知っていた自分はこのアルバムの存在を知って、元ネタはこれだったのか!と思った記憶がある。

長らくこういうライブ映えするパンクなバンドの良さは分からなかったので避けていたんだけど、大学に受かって軽音サークルに入ってライブにも参加するようになってからこの手の音楽にようやく良さを見出せるようになり、今ならきっと魅力も分かるだろうと考え、今作をSpotifyで聴いてみた。

感想

基本的には評論家のレビューで読んだ通り、粗削りなパンク・ロック路線で統一されており、曲調の面で予想を大きく逸脱することはなかった。しかしその曲に乗るボーカルがとんでもないクセ強ボイスで、楽曲を完全に喰ってしまっている。
異様にしゃがれたこの独特すぎる歌唱スタイルには実は洋楽方面に元ネタがちゃんとあるらしいけど、そういったルーツを知らない状態でいきなり聴くと、かなり強烈なインパクトであり、正直一回聴いただけだと覚えている曲もなく横一線な印象なんだけど、この声は一発で強く心に残る

歌詞もパンクなだけあってなかなか凄まじく、聴くだけでは何を言ってるのか聞き取れない箇所もあるんだけど、大体は周りに対する不満をぶちまけたような内容で、正しく元気に怒れる若者の姿が残っているといえるだろう。当時19歳、つまり今の自分とほぼ同い年(なんならちょっと年下)なのが恐ろしい。こんなのがサークルの後輩にいたら絶対近寄れないだろうな…

とはいえ大半の曲が3分もなく、11曲35分というコンパクトさなので歌詞に着目せずに音だけ聴いててもそれなりに勢いで聴けてしまうかくいう自分も分かってる風に書いてるけど歌詞は正直あんまりピンと来てない。パンクというジャンルならではの強みだ。あと、曲単位では覚えきれなかったけど各曲ともそれぞれ覚えやすいフレーズがどこかで入ってくるので、もう一回聴き返したときにそれをとっかかりにして思い出せる曲が意外と多い。この辺も今作が名盤たる理由の一つとして挙げられるであろう。

好みの作風かといわれるとそうでもないのが本音だけどとてつもないパワーを持っているのは確かだし、発売から40年以上経っても尚カルト的な人気を集めているのもなんとなく頷ける。時代的にもパンクが今よりもポピュラーでしっかりした土壌があり、それを担える若者がいっぱいいたこの頃じゃないと絶対生まれなかった名盤という希少価値もあるし。

一番好きな曲:フェイド アウト
一番「…」な曲:特にないけど強いて挙げるならメリーゴーラウンド

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