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原発における設備の保全に関する知見はどこまで成熟しているのだろうか?

原子力規制員会は13日夜臨時会合を開き、原発の事実上の「60年超運転」容認に向けた原子炉等規制法(炉規法)の改正方針を決定、法案を了承しました。

[共同通信社 2023年02月13日22時06分]

そもそも、新しい原発であっても日本のような地震が多発する国土で施設の安全性が確保できるのか専門家の間でも議論が続いている中で、また、使用済核燃料や核廃棄物の処理についても国内では安全かつ社会的に受容された方法が確立されていない現状で、私は原発を推進することの是非についてもっと真剣に議論されるべきだと思っています。

しかし、そこは置いといたとしても、「60年超運転」に対しては少なくとも下記の記事で経産省幹部も「否定的な意見が多くを占めた」と認めているように国民の理解や合意は得られていないのではないでしょうか?

[共同通信社 2023年02月10日20時36分]

そのような中で、原発の「60年超運転」を事実上容認するような原子力規制員会の今回の決定は、安全性の確保を主眼として科学的な判断に基づいて行われているのか心配になります。

昨年10月5日には原子力規制委員会は経済産業省の担当者から経済産業省の審議会で行われている原発運転期間の延長の検討状況について説明を求めています。なぜこのタイミングで説明を受ける必要があるのかと思いましたが、私の勘繰りすぎでしょうか?

[NHK 2022年10月5日 19時09分]

また、原子力規制委員会の事務局となる原子力規制庁と経済産業省資源エネルギー庁の職員が記録を残さない非公開の事前面談を7回行っていた問題と、その資料の一部公開の仕方にも批判の声が上がるのは当然だと思います。

[産経新聞 2023/2/3 18:09]

原子力規制員会の議論は、原発推進・反推進の政策議論とは独立して、安全が確保できるのか科学的・技術的に行われるべきものだと思っています。原子力規制員会の中で一人だけ反対された石渡委員の指摘するように、「科学的、技術的な新知見に基づくものではない」というところも納得しがたいところがあります。

[共同通信社 2023年02月08日19時20分]

原子力規制員会はそのホームページにあるように、組織理念、使命、活動原則に立ち返り、「高い倫理観を持ち、常に世界最高水準の安全を目指」してほしいと思います。

第71回原子力規制委員会の配布資料1には、募集した検討案に対する科学的・技術的意見に対する規制委員会の考え方がまとめられていますが、私の個人的な感想ではあまり誠意ある回答には見えず、組織理念や使命に謳われているものとはかけ離れたものを感じてしまいます。

[第71回原子力規制委員会]

[第71回原子力規制委員会の配布資料1]
https://www.nra.go.jp/data/000420133.pdf

ところで、石油生産施設やパイプラインなどでもそうですが、安定した高い稼働率を維持するばかりではなく、安全を確保するためには設備の保全活動は必須です。

設備保全の考え方には、大きく事後保全、予知保全、予防保全の3つの種類があります。

事後保全は簡単に言うと故障や問題が起きたときに対処する方法です。予知保全とは事象などが起きる予兆を見極めて、予兆が出たら保全する方法です。

故障や問題が発生すると大規模な事故につながる可能性がある施設では事後保全や予兆保全だけで十分なのでしょうか。そもそも私たちは予兆を必ず発見できるのか、故障や問題を発見してから対処するのでも間に合うのか?そう考えると事後保全や予知保全だけでは不十分そうです。

そのようなことから壊れる前に事前に手を入れる、壊れないようにするという予防保全の考え方も重要になってきます。

長い歴史を持つ石油開発業界でも事後保全、予知保全だけでは不十分だと考えられています。これは故障や問題を見つけてからのアクションでは手遅れになる可能性もあること、予兆を100%確実につかむことは技術的に難しいことを考えれば当然のことと言えます。

原子力発電は石油産業に比べて歴史も浅く、また、事故による影響もはるかに大きくなる可能性があります。それを考えると、予防保全、さらに言えば時間による運転期間の制限は今すぐに転換すべきではない気がします。

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