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ベトナム ホーチミン タンソニャット空港での出来事

30年ほど前、ちょうどJリーグが始まったころ、私はベトナムの海上油田で働いていました。

当時、私は4週交代勤務で、4週間ベトナムの洋上掘削リグの上で暮し、リグの上での4週間は休日なしで、深夜0時から昼12時までの12時間勤務でした。そのかわり、4週間リグに乗ると次の4週間はまるまる休暇となりました。

4週リグに乗ったあと休暇に入るときは、緊張から解放され、なんとうれしかったことでしょう。

当時はまだ、日本 – ベトナムの直行便はなく、香港経由などが一般的でした。その頃、兄家族がタイのバンコクに赴任していたので、日本に帰る前にバンコクに立ち寄り、兄の家に一泊させてもらったこともありました。

とにかく4週間働きづめだった洋上リグから、ヘリコプターで1時間半ほどかけてブンタオという海辺の石油基地の街に降り、そこから車でやはり1時間半ほどかけてホーチミン市内に戻り、オフィスで挨拶や事務手続きをして、ホーチミンの国際空港まで、また車で移動するわけです。

空港のごちゃごちゃと人の多いパスポートコントロールをやっと抜けて、これから始まる日本での4週間の休暇を楽しみにしながら、空港の静かな待合室でボーっと飛行機を待つ時間が好きでした。

当時タンソニャット空港の待合室には、テレビモニターで、飛行機の発着時刻とデジタル時計が表示されていました。

時計は秒まで表示されていて、数字が1秒ごとに進んで行くのですが、時計を何の気なしに見つめていると、なんだか時々数字の進みが早くなったり遅くなったりしているように感じました。

「ああ、相当疲れているのだな」と思いながら頭を振ってさらに見つめていると、数字が急にパラパラパラと異常に早く進んで行ったかと思うと、数字が後戻りしたりし始めました。

一瞬、「とうとう幻覚まで見え始めたか」と焦りましたが、もっとモニターに近づいてよくよく観察すると、その時計の秒の動きは非常に不安定で、早くなったり、遅くなったり、後戻りしたりと、確かに人を混乱に陥れる動きをしていていました。自分の時計と見比べてみましたが、私の時計の秒針の動きは正常だったので、待合室のモニターの時計が異常だったようです。

この話に特に「おち」はないのですが、それにしてもあの時は驚きました。小さなタイムスリップでも起こしたのかと思いました。30年前のベトナム空港での懐かしい小さな出来事です。


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