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まずは「SLIMの月面着陸成功おめでとうございます」と言いたい

本日未明の SLIM 月着陸のライブ配信。どきどきしながら見つめていました。

私たちが何かを初めて行う時、私たちはその試みが成功したのか、失敗したのか、また何パーセント目的を達成したのか、多くの場合「サクセスクライテリア (成功基準)」を設けて判断します。

私がいた石油開発のプロジェクトにおいても、試掘でも、新しい技術の適用でも、データの収集でも、実験でも、テストでも、私たちは必ずサクセスクライテリアを事前に設定・合意して評価を行っていました。

2022年3月15日にJAXAから発表された小型月着陸実証機 (SLIM) プロジェクトの概要(https://www.jaxa.jp/projects/files/youtube/sas/20220315_slim_lev_document02.pdf) によると、SLIM ミッションの目的として次の大きな2点を掲げています。

≪目的A≫ 月への高精度着陸技術の実証を目指す
・従来の月着陸精度は数km~10数km
・SLIMでは100mオーダーを目指す
・キーとなる技術は、「画像航法」および「自律的な航法誘導制御」
≪目的B≫ 軽量な月惑星探査機システムを実現し、月惑星探査の高頻度化に貢献する

そして、ミッションの成功基準として以下のクライテリアを定めていました。

[ミニマムサクセス]

  • 小型軽量な探査機による月面着陸を実施する。それによって、以下の2項目を達成する。

    • 高精度着陸に必須の光学照合航法を、実際の月着陸降下を実施することで検証する

    • 軽量探査機システムを開発し、軌道上動作確認を行う

[フルサクセス]

  • 精度100m以内の高精度着陸が達成されること。

  • 具体的には、高精度着陸航法系が正常動作し、誘導則に適切にフィードバックされ、着陸後のデータの解析により着陸達成に至る探査機の正常動作と着陸精度達成が確認されること。

[エクストラサクセス]

  • 高精度着陸に関する技術データ伝送後も、日没までの一定期間、月面における活動を継続し、将来の本格的な月惑星表面探査を見据え、月面で活動するミッションを実施する。

今回は、確立された技術を適用するのではなく、新しい技術を組み合わせて目的が達成できるかどうか、その技術を実証するためのミッションです。ですから、私はこのミッションで最も重要なことは、着陸の成功、目標の精度内での着陸云々よりも、実証しようとした方法、基準、精度で着陸できたのかどうか判断に足るデータがきっちりとれたかどうかが最大のポイントだと思います。

必ず成功するとわかっているなら、実証試験やテストは必要ないわけで、仮に着陸が想定通りに行われなかったとしても、どこがどのように想定通りでなかったのか、今後どうすれば改善できるのか、それらがわかるようなデータをきっちり収集できることが、非常に重要だと思います。コンクルーシブな評価が行えるかどうかが大切なのだと思います。

おそらく着陸には成功したということで、まずはその難しいミッション自体を成し遂げたということを心から賞賛したいと思います。そして、上記のような意味で、今後できるだけ必要なデータを回収・分析して今後に活かしていってほしいと思います。

着陸し、さらにそこから地球に情報を送り続ける機械を月に送り届けたというだけでも本当にワクワクするような出来事だったと思います。関係者の皆様、お疲れさまでした。


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