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自分に対して適用されるルールは相手にも適用される

ワールドカップサッカーの日本対スペイン戦。サッカーど素人の私でも大変興奮しました。一生懸命プレーする選手を見ていると本当に心から応援したくなりますね。

そして、両チーム選手が真剣にルールを守ってフェアプレーで戦ってくれたからこそ、勝った時に素直に喜べるし、勝っても負けてもお互いに相手を素直にたたえあうことができるのですね。

日本代表の2点目のゴールには本当に驚きました。三苫選手の最後まであきらめない折り返し、そして味方選手が折り返してくれるのを信じてゴールまで走り込んだ田中選手。素晴らしかったです。

正直、正確なルールを知らない私は、ボールは完全にゴールラインを割ったと思ってしまいました。スローで見たときに、三苫選手が蹴った瞬間ボールの接地点が完全にラインの外側に見えたからです。

しかし、サッカーの競技規則によると、ボールがラインを越える「アウトオブプレー」はフィールド外に完全にボールが出たことが認められなければならないそうですね。ボールが空中でラインを割ることもあるわけですから、考えてみれば、接地点という定義は意味がありませんね。

とにかく、日本の得点は正当であり、すくなくともルールに沿った判定である以上、スペインの選手たちも納得していて、がっかりはしたでしょうが、日本の得点に抗議はしていなかったと思います。

もし仮にスペインが日本と同じように得点しても、日本は相手のゴールを認めたことでしょう。VAR判定が日本に適用されるのであれば、相手の場合にも同じようにVAR判定が認められるのは当然のことですから。

VAR判定が無ければ今回のゴールをインプレーと判断することは難しかったかもしれません。もしかつてのように審判の肉眼による判断が正式判断であり審判がアウトオブプレーと判断すれば、日本はそれに従ったことでしょう。反対にスペインがそのような立場だったとしても同じだと思います。

ルールを認め、ルールの中で生きていくということはこういうことなのだと思います。試合に臨む選手たち当事者は、しっかりその点を理解しているのだと思います。スペインの監督の日本をたたえるコメントを含め、本当に素晴らしい試合でした。

サッカーのルールに基づいた素晴らしい試合のあとで、こんなニュースを見るのは心が痛いのですが、いま、また日本の「反撃能力」保有の議論が高まってきています。

政府・与党は「専守防衛」を建前として、「反撃能力」はあくまでも「ミサイル防衛の補完」と位置付けています。しかし「反撃能力」の発想は、現在のミサイル防衛網では相手からのミサイル攻撃を防ぎきれないというところから端を発していると思います。

ミサイル開発と防衛はいたちごっこで、完全にミサイル防衛ができない以上、今後「反撃能力」の発想が主体となっていくことが予想されます。

政府は「反撃能力」の攻撃対象として4月にまとめた提言では相手の「指揮統制機能」を例示していましたが、12月2日の自民・公明両党協議では攻撃対象として相手の司令部を含む「指揮統制機能」の明示を見送りました。しかし、協議に出席した自民党の熊田裕通氏は「指揮統制機能は含まれないことはない」との見解を記者団に示しています。

[日本経済新聞 2022年12月2日 17:46]

また、政府は11月30日、「反撃能力」行使のタイミングについて「他国が武力攻撃に着手した時点」と与党に説明しています。

[日本経済新聞 2022年12月2日 2022年12月1日 2:00 [有料会員限定] 一部無料閲覧可]

端的に言うと、例えも言葉も悪いですが、「やられたらやりかえす。やられるまえに敵をたたく。相手の選手だけでなく監督もたたく。」ということだと思います。これを日本が国際ルールに乗っ取った妥当な解釈だというのであれば、日本は相手がこのルールに沿って行動することも認めるということでもあります。

この「先制攻撃」と区別が困難な「反撃能力」行使のルールを日本自らが認めると言うことは、そのロジックによる行動を相手にも認めるということで、その計り知れない危険性について、日本政府は整理できているのでしょうか?

そしてイラクと同じように相手国が人間の盾を用いた場合、躊躇なく民間人を巻き添えにするのでしょうか。

最近、ちょっとこの件に関して繰り返して書かせていただいているなと思ってはいるのですが、これは私の杞憂なのでしょうか?


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