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炭酸塩岩油層の難しさ

貯留岩の性状を示す重要なパラメータとして、油を貯めることができる岩石中の隙間の割合 (孔隙率) と、貯留岩の中の流体の流れやすさ (浸透率) があります。

孔隙率は岩石サンプルから直接測定するほかに、物理検層 (音波、中性子、密度など) からもある程度の精度で測定することができます。一方、浸透率は孔隙率よりも測定が難しく、実際に岩石サンプルにガスや液体を流して測定したり、井戸から流体を生産してみて推定する以外、精度よく測定する方法がありません。したがって、油層モデルのパラメータの中でも浸透率の推定とモデル化は重要な課題です。

浸透率は孔隙の量とも関係がありますが、孔隙の形状や連続性とも大きく関係があります。大きな孔隙がお互いに太いパイプのようにつながっていれば流体はその中を流れやすくなります。大きな孔隙があってもそれらが細いくびれでつながっていると、そのくびれで流体の動きは制限され、流体は流れにくくなります。
孔隙がお互いにつながらずに独立して存在していれば、その孔隙は油の生産には寄与しません。

堆積岩の中でも砂の粒子が集まってできた砂岩からな油層は粒子のサイズや、孔隙率からかなり正確に浸透率が予測できる場合があります。砂粒自体に孔隙がなければ、岩石の孔隙は砂粒の間の孔隙と考えられ、その孔隙の量やサイズは砂粒の大きさや、形状、粒子サイズの揃い方 (ソーティング) に大きく依存するからです。
例えば岩石がサイズのそろったきれいな球形の粒子 (砂粒) からできていれば、孔隙率は砂粒のサイズに依存するし、浸透率も孔隙率とかなりの相関を持つことが予想されます。

一方、炭酸塩岩は主に生物起源の粒子からなり、堆積場の波や水流のエネルギーだけではなく、粒子の起源となる生物の種類などによっても粒子のサイズや形状は大きく変化し複雑化します。生物起源の粒子自体初生的に孔隙を持つことも多く、海底にたまった粒子は藻類などの生物活動でさらに細かい炭酸塩粒子に分解 (ミクライト化) されることもあります。
また、炭酸塩鉱物は地下への埋没過程で起こる続成作用の影響を受けやすく、溶けたり沈殿したりを繰り返し、孔隙の形状や連続性はさらに複雑化していきます。したがって、一般に炭酸塩岩油層では、砕屑性の砂岩油層などに比べて、孔隙率と浸透率の関係性は薄く、孔隙率から浸透率を予測することが難しくなります。

炭酸塩岩の油層モデルを作る際には、浸透率を規制している主な地質学的要因を見つけだし、地質コンセプトに従って分布モデルをつくることが重要になります。

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