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かつて苦労した3次元油層モデルの入れ物づくり

現在、一般に3次元油層モデルは、セルまたはグリッドと呼ばれる小さな立体の集まりで表現します。

小さいセルと言っても、セルの数が多くなるほど、シミュレーションなどで流体の動きを計算するのに時間がかかるので、例えばセルを上から見たときの大きさが、縦横、50m x 50mぐらい、セルの厚さが数ft (1ftは約30cm)くらいのサイズのセルの集まりで表現することが多いです。

もちろん、油層モデルの目的や必要とされる精度、油層の不均質性などによって、セルの大きさや厚さは調整されます。

コーナー・ポイント・グリッディングという手法では、一つのセルは8つのコーナー・ポイント (かど) で表現します。そして各コーナー・ポイントは x, y, z の3次元座標で表現されます。周りのセルや上下のセルがずれなく接していれば、一つのコーナー・ポイントを4つのセルが共有することになります。

コーナー・ポイント・グリッディングのしくみ

油層は断層などによってずれている場合があるので、隣り合うセルで共有していたコーナー・ポイントをずらしてあげれば、断層も表現できるわけです。

コーナー・ポイント・グリッディングで表現した断層の例

コーナー・ポイント・グリッディングでは、各セルの各コーナーの3次元的な位置を、x, y, z の座標で表現すればよいので、それらを数字の羅列で表せます。

ただし、一つのセルを8ポイントで表すので、例えば 10km x 10km のモデルを 50m x 50m のグリッドサイズで表現して、厚さ 300ft の油層を厚さ 3ft のセルで表現しようとすると 200 x 200 x 100 = 4,000,000 (4百万) セルとなり、コーナー・ポイントの数は 4百万 x 8 = 3千2百万 にもなります。

テキストファイルにしても結構大きなファイルサイズとなります。

今のソフトウェアはかなり優秀なので、断層も結構思い通りにソフトウェア上でハンドリングできるようになりました。しかしひと昔前は、断層のずれが思うように表現できず、どうしてもコーナー・ポイントの位置を自分で調整しながら、断層がきれいにずれているように表現したくて、自分でコーナー・ポイントのテキストファイルをエディットするという、今考えると気の遠くなるような、無謀なことをしたこともあります。

セルとコーナー・ポイント一つ一つに番号を振り、断層がどのセルのどのコーナーを通っているかを考え、どのコーナー・ポイントと、どのコーナー・ポイントを何 ft ずらせばよいか考えてエディットしていきました。

完成したテキストファイルをソフトウェアに読み込ませて立体的に表現したとき、断層が思った通りきれいに表現されているのを見たときは感動しました。

完成したモデルを見た3次元油層モデルのソフトウェア会社のエンジニアには、「お前にはこのソフトウェアは必要ないじゃないか」と言われてしまいましたが、「いやいや、こんなことしなくても済むように、断層を自由にハンドリングできるソフトウェアを早く開発してください」と必死で頼みました。

コーナー・ポイント・グリッディングを扱う地質モデリングソフトが、世の中に普及し始めたころの懐かしい思い出です。

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