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北海道蘭越町湯里地区の掘削現場で蒸気噴出 続報

三井石油開発株式会社は北海道磯谷郡蘭越町湯里の地熱発電資源量調査のための掘削現場で発生した蒸気噴出について7月10日19時より住民説明会を行いました。

その時の資料が下記リンクに掲載されています。

蒸気を噴出した坑井の坑内状況がより具体的に説明されています。

200mほど掘削したところで掘削中に掘くずを地表に運び出したり、坑内の圧力と地層流体の圧職をバランスさせるために循環させている泥水の全量逸泥が発生したようです。おそらくフラクチャー (地層の亀裂) を掘り抜いたと考えられているようです。

逸泥の後、泥水の循環を止めても蒸気などの噴出はなかったようなので、その時点では蒸気のソースにはつながっていなかったようです。

全量逸泥の元となったフラクチャーをセメントで埋めようとしたようですが、その作業中か作業後に蒸気の噴出が始まったようです。

三井石油開発 (株) では地下深部から続く亀裂から高温流体が継続的に流入し、噴気継続している状況だと予想しています。そうだとすると逸泥を起こした後、しばらくして何かしらの影響で深部の高温流体のソースとなる岩体と亀裂でつながったか、もともとあった亀裂が開いたと考えられそうです。

残念ながら坑内のセメンチング作業ではフラクチャーを埋めることができなかったか、むしろセメンチング作業の際に亀裂を伸ばしたり拡げたりしてしまったのかもしれません。

高圧層や低圧層が複雑に存在すると、掘削中に地層流体と井戸内の泥水の圧力をバランスさせて逸泥も噴出もさせずに掘削を続けることは難しくなることがあります。またフラクチャーなどによる予想外の地層間のコミュニケーションが発生するとなおさら坑井コントロールが難しくなります。

したがって、このような噴出が起こったことが問題というよりも、このような噴出を想定してどのような対策を考えておくかが掘削に際しては重要になります。また、どのような流体が噴出するかも想定しておく必要があります。とくに今回のように人体に影響のある硫化水素や砒素などが噴出する可能性をどこまで想定していたか、ぜひ検証して今後このような流出事故に、より適切に対応できるようにしてほしいと思います。

今回の会社側の説明資料で気になったのは、12ページに噴出蒸気硫化水素が150ppm以上と記載のあることです。150ppmというと嗅覚麻痺を起こすレベルで、200ppm以上だと1時間ほどで急性中毒になるレベルです。もちろん井戸もとにいなければ直接蒸気を吸引することはないかも知れませんが、硫化水素は空気よりも重いので、地形、風速、風向によっては硫化水素が停滞、濃集する恐れもあります。私の感覚では、当初から硫化水素に関しての説明、注意喚起があっても良かったのではないかとあらためて思います。

砒素については凝集剤を入れて汚泥として沈殿させるということです。これ以上流出させて広く拡散させないためにも必要な措置だと思います。今後はこの汚泥の安全な処理などについても検討していただきたいと思います。

地熱は国内で供給できる大切なエネルギー源の一つだと考えられます。この噴出に学び、地域と共生できるような開発手法、対策を考えていって欲しいと思います。

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