韓国ミュージカル『일라이 イライ』内容まとめ

2023年2月10日から4月30日までリンクアートセンター ペイコホールで上演中の、韓国創作ミュージカル『일라이(イライ)』
気になる俳優さんがたくさん出演してらしたことと、学園物、そしてちょっと裏がありそうなポスターだったので観に行ってきました!

史上最高に時系列がいったりきたりするし、そしてその移動もわかりにくく、混乱する観客が後をたたなそうなイライですが
(韓国語に自信のない私は前情報無しだと理解できる気がしなかったので、話の大筋を頭に入れてから行きました…観劇中の伏線回収を体験できずかなり後悔ですが、おそらく初見ではほとんど分からなかっただろうから之はこれで良かったのかも)
俳優さんの役作りも全然違っていて、見ればみるほど解釈の幅が広がりめちゃめちゃ惹きつけられるのでたまりません。ひどいキャラクターがたくさん出てくるのも事実ですが。

あらすじ

全てのものが備わった者しか入学できない、名門学校 "ブリクストンアカデミー"。親密な友人である優等生イライとリオンは、全学生からの羨望の対象だ。
ある日、ソフィという転校生が突然登場し、騒々しい嘘と誇張で学生たちの日常を嫌に揺り動かしはじめ、学生たちの競争心と嫉妬は、亀裂を生み出す。

一方、校内では内密の事件が起こり、学生達は誰もかも嘘つきはソフィだと指目する。
ソフィは悔しく、あらゆる嘘をさらに重ね もっと大きな騒ぎを作り出し
食い止められず広がっていく噂の渦巻きにイライとリオンは巻き込まれ、打ち砕かれるのだが…

隠されていた学生達の欲望は徐々に現れ、段々と明らかになっていく真実。
しかし、果たして彼らが辿り着いた真実は"本当の真実"だったのだろうか?
いや、"本当の真実"というのは存在するのはしていたのだろうか?

チケットリンク「일라이」作品ページより引用・和訳


※以下、ネタバレを大量に含みますのでご注意ください!

以下、ほとんどネタバレしか含まれていないイライの物語に関しての感想になります。俳優様毎に解釈はかなり違っているので、今回はあくまで物語の整理・おおまかな解釈として、自分用のメモとしてまとめていこうと思います。
イライ、見る人によって解釈がおおきく変わる作品だと思うので、あくまでひとつの解釈としてご覧ください!なお、まだまだ韓国語は勉強中ですので、明らかに間違っている部分がありましたらコメント等で教えて頂けると嬉しいです。


まずは気になる部分をちょこちょこ書いていきます
人に伝えようという気が微塵も感じられない文章ですので、ご了承いただける方のみご覧ください...!

1.イライの激重感情

作中でリオンに対してソフィは「結局、イライは唯一リオンの為だけに嘘をついた。」と語っていました。リオンのために「麻薬は自分のものだ」と嘘をつき、リオンに対して恋心を告白し キスまでされたものの結局リオンに拒絶され、最後には屋上から落ちていくイライ。なんとも不憫なキャラクターです。誰かイライをすくってあげて...

作中ではイライが自らの意思で飛び降りたのか、リオンが手を離したのかはわかりませんが、とりあえずここではイライの意思だと仮定します。
すると気になるのが「なぜイライはリオンの目の前で屋上から飛び降りたのか」です。

①自分はリオンの将来の邪魔になると思ったから
②リオンに拒絶された絶望感から
③(≒①)自分に対しての(リオンの)愛を確信したから
④自分が好きだったリオンとの決別

の4つが考えられるのかなと思っています。

①②だと考えるともう本当にリオンが不憫でたまらないし、あんなにも健気でリオンのことしか考えていないイライをよくも拒絶できるな…と言いたくなる気持ちでいっぱいになるのです。

③は私が観た3月4日18:30公演のノユン×ぺナラさんの組み合わせ回のみに当てはまるのかと。この回では、ぺナライライは飛び降りる前に笑顔を浮かべていたのです。(私が脳内で補完した幻だったのかもしれないですが…)
笑顔をリオンに向けて飛び降りていくイライの姿が、口ではイライの愛を拒絶しているリオンの本心(=イライのことを実は愛しているということ)を理解したうえで、リオンの邪魔にならないように、愛し合っているということはリオンとイライの二人の間の秘密にとどめておいたような印象を受けました。
切ない……号泣 

でもいずれにしても、目の前で飛び降りるというのは、かなりリオンにとって苦しい思い出になるだろうなとも思います。目の前で飛び降りるなんて、リオンの目にはイライの最期が一生焼き付いてしまうわけで。
なかなかに酷な選択肢だとも思うような。

そして④に関してですが、これはなんというか、イライがリオンのことを恨むはずもないのですが、でもこの可能性があったら面白いなという考察です。
ラストシーンで、カードゲームで嘘を見破られ「もうやらない!」というイライに、「なんで?僕たち続けないと」と呟くリオン。それを見つめるイライの表情が(俳優さんによって表情は少し違うものの)失望だったり、裏切られたような表情に見えることがありました。

ここでそもそもイライのリオンに対する感情を改めて整理したいと思います。
イライがリオンに対して友情以上の感情を抱いていると明らかになるのは物語終盤ですが、それ以前にもリオンに対しての友情とは思えない激重感情を吐露しています。そして、僕「だけ」は君のことをちゃんと分かっているという、自分は他とは違うという意識もものすごく強いのです。

・M03「그게 나야」の最後には、リオンのことを
「誰よりも正直だった君(は)
それが君だ そう それが君」と語るように、
イライが好きなリオンは、正直な(=嘘をつかない)リオン。

・M22「My choice」でも、麻薬を所持していたリオンのことを自分のことを顧みずに必死にかばいながら
「そんなはずはない、偶然が重なっただけだ
僕が知る君はそんな人じゃない」
「そんなはずはない、運が悪かったんだ
僕が知っている君は正直だから」
と、「正直な」リオンにすごく固執しているのです。

・また、リオンに思いを打ち明ける場面でイライがリオンに「お前も他の奴と一緒だ!」みたいなことを言われていた気がするのですが、
イライは「僕は違う」と、すごく力を込めて答えます。

本当にリオンを信じているというよりも、リオンを信じている自分を信じているというか、若干思い込みであるように感じてしまうこともあって。
実際リオンは麻薬に手を出してしまうし、将来のためとは言えど嘘もつきまくりで(それがまた切ないのですが)「僕の知っているリオンは正直者だ」というイライのその確信もあっけなく崩れ去るわけで…。

結局リオンも他の人たちと同じ嘘つきで、リオンは「他の人とは違う自分」を見てくれていると思っていたのにそうではなかった。リオンに裏切られたように感じて、自分の好きだったリオンはもういなくなったのだなぁと感じて屋上から飛び降りた…というふうにも考えられる…のかも……


2.模擬法廷

イライで何度も登場する模擬法廷。
学生たちは1大学に入るために成果を残そうと、模擬法廷大会の準備に取り掛かっており、これが物語においてとってもキーポイントになっていました。

まずそれぞれの役割は、
リオン:検事
イライ:被告人
ジャスティン:被告人の弁護人
ユリア:証人1
ソフィ:証人2(精神科医?被害者から相談を受けていた)
エリス:裁判官 

模擬法廷は作中で3回行われていて、超簡単にまとめると

1回目
検事:被告人が被害者を意図的に殺害した計画的殺人事件。
弁護人:被告人は被害者に嘘の噂を流されて精神的に不安に。
被告人:正当防衛だった。被害者のことをよく知らない。
    嘘の噂をながされた。
証人1:被告人は被害者が流した噂のせいで生活に打撃をうけた。
    死にたいとよく言っていた。

2回目
証人2:被害者から、性的指向に関して相談を受けていた。
弁護人:被害者が同性愛者だった。被告人に愛情を拒否され、報復のために 嘘の噂を流した。被告人は最初は我慢していたが、自分を守るために最終的には被害者を攻撃した。
証人2:被害者は、同性である被告人から告白され、自身のアイデンティが揺らいだと感じた。被告人は絶えず被害者を誘惑し、二人は結局交際。
被告人:そうじゃない。
証人2:被告人は心変わりし、被害者は傷ついた。
被告人のせいで混乱したが、被害者はすべてを捨てて愛を選んだ。
検事:被害者は被告人に対し恨みが生じて、被告人はその恨みを不便に感じた。

3回目
被告人:私は決して同性愛者ではない。被害者が嘘の噂を流した。
証人1:被告人は被害者を愛していたけど、
その愛がわずらわしいとよく言っていた。
検事:被害者は被告人のことを深く愛していた。
その愛がわずらわしくなり、被告人は被害者を残酷に殺害。
ここまで被告人が否定していた嘘だと言ったことは明白な偽善。

この法廷はおそらく物語とリンクしていて、
被害者:イライ 被告人:リオン になっています。
法廷では被告がイライなのでここがまたややこしいのですが…。

結局のところ

・リオンは同性愛者ではない。
・イライによって同性愛者に仕立て上げられたため、リオンは精神的にダメージを受けていた。
・自分を守るためにリオンは屋上でしょうがなくイライの手を離し、イライは転落。

のか

・リオンが先にイライに愛情を示し誘惑した。
・リオンは心変わりしたことでイライは困惑したが、イライは最終的には愛を選んだ。
・イライはリオンに対して恨みを感じ、リオンにはそれが煩わしく感じられたので、意図的にイライの手を離した。

意図的にリオンがイライの手を離したならそれってめちゃめちゃ事件じゃんかと書きながら思い始めましたが、この部分こそ俳優様の組み合わせによって大きく変わる部分なのですよね。
俳優様別の感想は違う記事にでも残そうかと思います。




この作品、どういう作品なのか一言で表すのがたいそう難しいのですが、
「真実と嘘」が物語の大きなキーワードになっていました。
おそらくこの作品を観た観客にも、この物語が真実なのか嘘なのかきっとわかりません。悪く言えばもやもや状態で終わる物語。何が真実だったのか、それを自分で考えるところに楽しみを見出した者勝ちとも言えるのかもしれません。

作中に登場するロッカーが描かれた公演ポスターでは、タイトル ELIの「I」の部分だけはロッカーの中身が見えるという使用に。これも「真実が何なのかわかるのは結局は自分(I)だけ」ということを表しているのかとも思います。
そして作中の「イライ(Eli)」の名前の由来は「嘘(Lie)」からきているのでしょうか。この作品がそもそも「嘘」がテーマになっておるのでそこから取っただけなのかもしれません…なにか他にモチーフがあるのでしょうか。



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